今日決勝戦を迎えるラガーマンの甲子園こと全国高校ラグビー選手権大会。その会場となっているのが2019年ワールドカップの開催地である花園ラグビー場であるが、昨年・2023年からはJ3・FC大阪がここを本拠地として活動するようになった。

 

現在のJリーグは春秋制、リーグワンは秋春制とシーズンが入れ替わっているが、2年半後の2026-27シーズンからJリーグも秋春制に移行するため、芝生の維持管理や試合日程の組み立てなどに課題が残るのではないかという懸念もしばし聞かれる。

 

 

2020年にPark-PFIという指定管理者制度、民間主導で公営の公園や施設を整備・運営するというシステムに応募し、指定管理者となったFC大阪は、この花園ラグビー場メインスタジアムの北後方のゴール裏にある第2グラウンド(旧第3グラウンド)をJ3の開催基準を満たすための工事を計画し、ひとまず2021年末の完成を目指していたが、地盤が緩いうえ、想定以上の費用が掛かるとしてボーリング調査の段階で足踏みが続き、現在も着工はおろか基礎設計すら進んでいない。

 

 

読売新聞によれば、J3加盟に際してはJ1開催基準を満たす2万5000人以上収容のメインスタジアムを本拠地登録させているが、東大阪市側は「第2グラウンドの改築が完了するまでの暫定処置としてメインスタジアムの使用を許可した」と主張している。しかし、第2グラウンドの完成はおろか、着工すらしていない現状を考えると無理に第2グラウンドを改修するのは控えたほうがいいのではないかと思える。加えて、現行の第2グラウンドは1300人程度収容できる座席があるが、老朽化が著しく、座席が落下する恐れを懸念して、100席分は折り畳みの座椅子を撤去したといわれている。

 

現在のグラウンドを見ても、現存するスタンドを作り変えてJ3基準の5000人収容にすることは用地の観点から見てもかなり難しいともいえる。計画ではこれに屋根を敷設し、ナイター設備や大型映像装置など、J3開催にふさわしい設計にすることを盛り込んでいたのだが、今の状況から見て第2グラウンドのJ3基準化をするには課題も残る。J3よりも基準が緩いJFLに在籍していたころは主に第2グラウンドを主会場にしたが、J3昇格の条件の一つに、順位条件(当時4位以内、かつ準加盟で2番目まで。FC大阪は2位以内を確保していた)に加え、1試合平均で2000人以上動員することが2022年まで盛り込まれていたため、J3昇格がかかった2022年JFL最終戦・MIOびわこ滋賀(現・レイラック滋賀)戦は、メインスタジアムに1万2000人以上を動員し、悲願を達成できた。

 

2023年は最終の愛媛FC戦を万博競技場で行った以外、18試合を花園メインスタジアムで主催し、2022年の主催15試合合計が38451人、1試合平均が2563人(花園第2の4試合だけで見れば3265人、平均816人)だったが、2023年は19試合で51447人・平均2707人(うち花園メインの18試合が48248人・平均2680人)であるから、メインスタジアムを使用した効果がいかに絶大かがわかる。2023年度はユース組織の未充足でJ2ライセンスは発給されなかったが、もしJ2ライセンスを発給され、J2昇格ができたならば、第2グラウンドの改築では到底間に合うはずがないから、メインスタジアムを、高校・大学ラグビーや、セミプロのリーグワン・花園近鉄ライナーズとの日程の工面もしながら、芝生の管理などにも細心の注意を払い、使用することが一番良い方向にもなる。

 

現実を考えたら、第2グラウンドはJ3基準化の改築をするよりも、バックスタンド後方にあり、芝生が禿げ上がっている練習用グラウンド(旧第2グラウンド)と一体型で整備し、現在の練習用グラウンドをFC大阪とライナーズの合同のクラブハウスを設置することで、現在の観覧席に代わるものとして、クラブハウスに第2グラウンドの練習を見学できるガラス張りの屋内型見学スペースやトレーニングルーム、雨天・降雪時の練習用の人工芝屋内グラウンド(通常もハーフコートでのフットサル・タグラグビー用のグラウンドとして市民にも開放する)、サポーターとの交流スペースとしてのカフェ・グッズショップを合同で設置したほうがいいかと思う。また、天然芝の養生用スペースも設けた方が良い。Jリーグ秋春制の実施により、芝生の補修作業も頻繁化するので、それに対応した養生用天然芝もストックする必要がある。

 

 

現在の第2グラウンドの座席も、Jリーグ基準を満たすものを作ることは考えずに、練習見学用、かつ各種公式戦(大学や草ラグビー、サッカーのユース年代の試合など)の実施時の観戦用のスタンドとして現在あるスタンドを一旦撤去したのち、ほぼ半世紀は使えるとされる簡易鉄骨型(セミパーマネント方式)の、必要最低限の人数(現在とほぼ同等程度)のスタンドに作り替えることで経費を削減し、先ほど述べたクラブハウスの屋内型観覧スペースとの一体活用をしたほうが一番メリットにもなるだろう。


もちろん花園中央公園の芝生広場や、多目的競技場(ナイター設備の設置が必須だが、試合前提ではないので、いわゆるクレーン車などの仮設型でもよい)の活用、南側立見席(普段は使われていない)には、メインスタジアムを俯瞰できるカフェやパーティースペースの設置も含めてご検討いただきたい。