新聞というメディアは、テレビ・ラジオ・ニューメディアの発展が遂げられるまでは重要な基幹メディアの一つだった。しかし、近年は紙媒体の新聞が年々減少する傾向にあり、地方紙はおろか、全国紙も夕刊を廃止した地域が多数存在する。欧米では同じ題号の朝夕刊セット売をしているのはほとんどなく、夕刊専門の新聞というのがあり、それで文化を維持しているようだが、日本ではその夕刊文化がいよいよ廃れる気配になってきつつある。

 

その中でも衝撃的だったのは産経新聞東京版の夕刊廃止である。産経は元々首都圏7都県と関西2府4県(山間部・離島など一部除く)に向けて夕刊を発行していた。しかし、産経の場合、一般紙としての夕刊は、他に夕刊フジと、関西圏のみで元々の産経新聞の原点となった大阪新聞を発行していたため、業務重複が多かったが、夕刊フジは産経本紙とは独自の取材路線を敷き、大阪新聞もまた関西の地域文化に根差した地域密着型紙面(地方紙)という位置づけで、棲み分けをしていたが、ニューメディアの多様化、特にネット社会の充実や衛星放送の普及から、24時間瞬時にニュースを取り出せる時代になったことから、紙媒体としての産経本紙の夕刊を実質的に2002年3月末で休刊し、首都圏では初めての統合版のみを出す新聞となった。ただ、夕刊フジは継続して発行しているため、実質的に産経夕刊は夕刊フジに機能統合されたという解釈の仕方が正しいだろう。

 

対して大阪の産経は夕刊を継続しているが、元々の原点である大阪新聞を統合する形で産経新聞の夕刊は残している。しかし、東京版の産経本紙の夕刊が休刊されてからは、全国ニュース的な内容は事実上夕刊フジに統合され、産経夕刊は大阪新聞の流れから、関西の地域文化の視点でとらえた新聞となっているため、全く性格が違うようになった。とりわけ、昨年夏に大阪日日新聞(朝刊紙に移行していた)が、休刊となったことによって、純粋に大阪・関西という名前が付く新聞自体が皆無になってしまい「地方紙空白域」とされるようになった大阪ではあるが、産経夕刊はそれを継続している形にしている。とはいえ、大阪・関西という文字がくなってしまったのは非常に地方シファンの僕としても残念ではあるが。

 

その産経東京版の夕刊廃止以後も、地方紙の夕刊も続々廃止され、最近では、北海道新聞、中国新聞といった広義のブロック紙や、全国紙でも名古屋では日経新聞以外(産経は発行拠点がない。読売は基から朝刊専売)の夕刊が昨年までに相次いで廃止された。産経以外の東京の全国紙・ブロック紙の東京新聞、大阪の全国紙、名古屋のブロック紙・中日新聞は継続して夕刊を発行しているが、夕刊を直接配達できる地域は都心部に限られている。また現在地方紙・ブロック紙で夕刊を出しているのは、基から専売されているものを含めても県域紙では中日以外では、河北新報、北国新聞、京都新聞、神戸新聞のみとなった(新潟日報も名目上夕刊を出してはいるが、2016年11月から「オトナプラス」と称して朝刊紙とは区別した情報誌という位置づけをなしたため、実質的な朝刊単独となった)。

 

そう考えると、紙媒体の夕刊紙の廃止が今後も増えてこないかという懸念が見えてきそうな感じがする。僕は一応、大阪日日の休刊によってふたたび新聞は定期購読をしなくなったが、産経の販売店従業員という体で働いている。しかし、もしかすると産経大阪夕刊が産経という名前を一旦下ろして、大阪・関西を連想する題号に変更する可能性もあり、事実上「産経夕刊」という名前が完全廃止になる可能性もあるだろうし、また現に産経以外のそれぞれの夕刊も一時期12-16ページもあったのが、8ページ前後に減らされたという印象があるため、今後大都市でも夕刊の文化が廃れる可能性がある。そう考えると時代の趨勢の波にのまれたのかなと思うと残念な気がする。