昨日行われたJリーグ実行委員会で、2026年のワールドカップ北米大陸大会終了後の同年8月から、念願の秋~春制移行とすることが正式決定した。ただ、日本海側など積雪の多い地域のクラブへの配慮面から、今後秋~春制移行へ向けた課題については随時検討して、スムーズに秋~春制移行が実現できるようにしていくという。

 

Jリーグ秋~春制を頑なに反対し続けていたのはアルビレックス新潟だ。アルビレックスはその日本海側で初のJ1クラブ(2004年初昇格)となったが、過去に2014年の最終節・柏レイソル戦の主管試合を豪雪の影響でデンカビッグスワンが使用できなくなり、鹿島アントラーズの協力でカシマスタジアムで代替え開催した例があるなど、大雪対策が難しい北陸の地で秋開幕のシーズンをこなすことには難があるということから、ずっと反対し続けた。

 

実際Jリーグはこれまでも数回にわたり秋~春制については議論されたが、最初は新潟・モンテディオ山形など、実際雪の中で試合が行われたクラブもあったことから、パフォーマンスの低下や興行面のデメリットなどを考えると時期尚早という意見が多く、実現には至らなかった。2017年に日本サッカー協会は秋~春制を推進した田嶋氏が会長に就任したものの、Jリーグ側の意見としては引き続き春~秋制を維持し、今後向こう10年間はこの議論は見送るということを決めていた。

 

しかし、全体的な潮流が変わったのはアジアチャンピオンズリーグの秋~春制への移行である。元々ACLも春~秋制で、優勝したクラブは年末に行われるクラブワールドカップに進む権利が与えられていたが、コロナのあおりで、2022年大会が東地区と西地区で時差が発生し、西地区のラウンド16以後が今年(2023年)になってからという事情などから、ヨーロッパのチャンピオンズリーグなどに歩調を合わせて秋~春制移行という流れに傾き、それがJリーグにも秋~春制移行を促す結果にもなっていった。

 

また、日本人選手が大量にヨーロッパを中心に世界各国のリーグ戦に参加するようになったのも秋~春制へ向かわせるきっかけにもなった。春~秋制だと、特にシーズンの後半戦でJリーグからヨーロッパのリーグに主力選手が移籍・流出することで、選手編成が全く変わり、いわゆる「谷間の曲線」で、順位変化が著しくなってしまうという点とも向き合わざるを得なかったが、これをヨーロッパと同じにすることで、シーズン開幕当初からほぼシーズン終盤まで均等な戦力(もちろん新卒学生選手の加入の課題は残るが)で戦える「山型の曲線」で歩調を合わせたいとする考え方に持っていきたい、そして多少日本代表やヨーロッパのリーグ戦への戦力面での課題は残るものの、移籍市場と戦力の均一化で、Jリーグと世界のリーグとの差を縮めたいという思惑も挙げられる。

 

今回の実行委での決議の前に、Jリーグは正加盟60クラブ(今季はJ1:18、J2:22、J3:20だが、来季からはすべてのクラスとも20でそろえる)に対するアンケートで、全体の約8割強に当たる52のクラブが秋~春制の移行に賛成し、残り8クラブのうち7クラブは「現時点で具体的な移行時期は決めないが、移行を前提とした議論を重ねて課題解決に持っていく」とした。しかし新潟だけは「移行に反対し、議論にも加わらない」として頑なに反対を貫いたが、結果的に全会一致、賛成多数で秋~春制移行が正式決定した。

 

以前のブログでも、Jリーグの秋~春制移行は、プロ野球と歩調を合わせた春~秋制だと、優勝争いで集客面・興行面のばらつきや関心度の問題があることから、あまり好ましくなく、むしろ野球シーズンを終えた秋から始めたほうが、他のスポーツリーグ(スケート・スキーなどのウィンタースポーツはもちろん、基から秋~春制を敷くラグビー・リーグワン、バスケットのBリーグ・Wリーグ、バレーボールのVリーグ、女子サッカー・.weリーグなど)の、野球のオフシーズンの見たいスポーツの選択肢を増やすきっかけにもなると述べたが、それとともに、様々なスポーツクラブ・リーグとの日程調整で、例えば今週はVリーグ、来週はリーグワン、その次はJリーグとホームゲームで週替わりで好みの試合を地元で見る習慣をつけることができやすくなるなどのメリットや、Jリーグが主導権を握って取り組んでいる「百年構想」による、異業種ならぬ異競技交流の促進のプラス材料にもつなげていけると思える。

 

アメリカの場合も4大国技のうち、野球は夏場のスポーツと位置付けて春~秋制、アメフト・バスケットボール・アイスホッケーは逆に秋~春制である。ただ、近年力をつけてきたサッカーに関しては現状はJリーグやMLBと同じ春~秋制であり、これは今後Jリーグの秋~春制移行の結果を踏まえれば(NFLとの兼ね合いもあるが)、秋~春制の議論がMLSでも出てくる可能性もないとは言えない。

 

Jリーグの秋~春制、新潟など一部のクラブが反対、或いはすぐの移行ではなくもう少し時間をかけるべきという意見を表したのは、特に本州日本海側と北海道・東北の極寒地域の気候の問題を挙げていた。今年は猛暑・暖冬という言われ方をしているが、それでもここ最近は真冬並みの寒さなので暖冬とは言えがたいし、北日本(北海道・東北・北信越)の多くは、日中でも氷点下、ないしはそれに近い一けた台の寒さという日は茶飯事であるので、それが故に太平洋側と比べるのはいかがなものかという意見も少なくはない。

 

特にJリーグ発足後は、それまで全国的なリーグ戦に参加する機会が少なかった北日本や日本海側のチームが増えたことで、その冬場の練習対策やスタジアムの確保という点ではかなり太平洋側から見れば後れを取っていたという事情もあって、それで早期の秋~春制に反対、ないしは慎重論を出していたのかもしれないが、実際現行の春~秋制でも、シーズンの開幕が日本代表強化や夏場の暑い季節の試合を減らすことを目的に2月中~下旬になり、シーズンの最終戦も原則的には12月に入ってからという点を考えると、さほど変わるわけでもなく、むしろ、リーグの開幕とクライマックスが半年間ずれたのと同じと考えたほうがいいと思う。

 

Jリーグは特にこの北日本や日本海側のクラブに対しての、練習場(エアドームを含む全天候型人工芝グラウンド)の整備や、やむなく1か月近くアウェーでのロードをこなさざるを得なくなるクラブへの遠征助成をする方向で調整していくと話している。特に秋田、盛岡、山形、甲府は新スタジアムの建設構想が予定されているし、鳥取も自前のYAJINスタジアムをJリーグで常時公式戦開催ができるようにするための環境整備の課題も残っている。新設、或いは大規模改修をするにあたっても、その厳冬期の対策、特にピッチの融雪を減らすためのアンダーヒーターの設置や、客席の空調対策など、札幌ドームのような完全密閉式(芝生を育てる屋外アリーナを設ける必要はある)でなくても、屋外でも快適な環境で試合や観戦ができるようにするなどのホスピタリティー面などとも向き合いながら、これからの成長戦略のために必要な施策を順次考えながら、円滑な移行に努めていただきたい。