サッカー・J1リーグのサガン鳥栖が、この8月揺れている

 

1日のFC東京戦で、F東京の長谷川健太監督から「鳥栖に発熱者がいるのでは」という指摘があり、その後、11日に金明輝(キム・ミョンキ)監督からコロナウィルスの陽性が確認された。そしてその後もクラブ内でいわゆる集団感染「クラスター」が起こってしまい、挙句は昨日12日に広島で行われる予定だったサンフレッチェ広島とのルヴァンカップ予選リーグ最終戦(当初は6節の予定が、コロナによる日程調整のため3節に短縮)も中止されてしまった。この試合では他会場の結果によっては2位の内輪で最上位のクラブに対してベスト8出場の可能性もあったが、結果的には両チームともベスト8の可能性がなくなったため、仮に行われたとしても直接ベスト8に進めるか否かには関係のない消化試合にしかすぎなくなってしまった。

 

トップチームは今回のコロナ感染拡大を受けて、当面の間活動を全面停止する方針を固め、少なくとも今月中のリーグ戦出場は見送られる見通しとなりそうだが、一番の原因を作ったのはJリーグの日程面であると思う。

 

今季のリーグ戦は、2月にJ1・J2・ルヴァンカップの第1節をそれぞれ終えたところで、コロナの感染のためという理由で、約5か月も主催公式戦がストップしてしまい、今後も国際Aマッチや東京五輪の中止・延期などもあって、なるべくその空いた日程に週2試合程度のペースで公式戦を当てはめた。半年間でJ1は最低でも35試合(リーグ33:ルヴァン2)をこなさねばならず、J2の場合でも41試合をこなすということになると、毎週2試合をこなさないと年内完結にならない。加えてリーグ戦を成立させるには、「全体の75%以上、かつ各クラブ主催の半数以上を消化すること」という厳しい条件を突きつけたことによって、過去にないタイトな日程を強いられている。

 

僕は以前、過密日程を避けるためと、2022年のワールドカップカタール大会が11月開催であることに目をつけて、また女子の新リーグ「WEリーグ」の開幕目標としている2021年から秋~春制を導入する動きがあるとしている中で、Jリーグも試験的に秋~春制を取り入れるべきであると訴えたことがある。すなわち、今季の後半戦の日程はそのまま生かし、今年の前半戦で中止になった第2節以後の試合(J1・J3は17節、J2は21節まで)を、そっくり来年の同じ時期に当てはめて、それで東京五輪後の2021年秋から、22年春にかけて、次回シーズンを行うということで帳尻を合わせ、それでクラブやサポーターの意見を聞いたうえで、2022-23年以降、秋~春に移行するか、あるいは従来の春~秋のままにするかの意見を取りまとめるべきだと述べた。

 

しかし、Jリーグはあくまでも春~秋の暦年制にこだわり続けたことで、このような過密すぎる日程を組み込まざるを得ないという事態を招くことになったので、これはJリーグとしても、過密日程によるコロナのリスクをいかに計算していないかが浮き彫りになってしまった。

 

リーグ不成立を避けるために、少なくとも8月の日程は当初のままでいじらないことにして、9月以後はその時々の状況を総合的に判断して、「リモートマッチ(無観客試合)」、ないしは「5000人以下ルール」のどちらかを維持し、週1試合づつのペースをこなすことを考えるべきだろう。天皇杯も1月1日の決勝にこだわる必要はなく、年末年始は都道府県代表の試合まで行って、J1・J2・J3のそれぞれの上位クラブを対象とした決勝トーナメントに関しては、5月の大型連休に持ち越したほうがいいと思う。

 

また、今回のサガン鳥栖の場合も、今年はJ2への降格は基本行われない(ライセンスによってJ2以下になってしまう場合は降格があるが)ことになっているので、なるべく安定した経営ができるようにするのと、選手の健康管理を最優先に考えたうえで、試合が一定通り行われるというのであれば、鳥栖駅前不動産スタジアムでの主催試合は少なくとも年内いっぱいは無観客(サポーターを一切締め出す)という形で行い、やむを得ない事情で試合を中止した場合は、今年のルヴァン杯でB組の松本山雅がリーグの日程の過密化を理由に、浦和・仙台との対戦を不戦敗扱いとしたのと同じように、得失点差0の状態でのサガンの不戦敗の扱いにしたほうがいいかと思う。海外のリーグ戦では予算難で解散したクラブが発生し、シーズン途中で離脱した場合、そのクラブの成績はたとえ勝ち点を奪ったとしても全部無効扱い(出場辞退扱い)とされ、その分を差し引いた残りのチームだけでリーグを成立させた例があるが、そういう事例は避けるべきだ。

 

また、いわゆるフェルナンド・トーレスマネーによる乱脈経営で、クラブは1年で20億円もの大赤字だという。これは大分トリニータの2009年の10億円以上を上回る、歴代最大級の大赤字であり、Jリーグのライセンス基準で、上位ライセンスを取得するに必要な「債務超過の解消」に抵触する可能性が高い。債務超過、ないしは3年連続赤字経営で、改善が見込めない場合、J3のライセンスも発給されず、最悪はJFLに降格せざるを得なくなってしまう。今の状況を考えると、成績でのJ2降格はない今季であっても、ライセンス発給の問題で、3階級降格という可能性は十分目に見えている。仮にJ3ライセンスを発給するとしても、ある程度の条件付きで、新たな大口スポンサー確保や一定収入を得ることなどのいわゆる「解除条件付きJ3ライセンス」となる可能性もある。

 

とりわけ現在は5000人ルール、アウェーの応援団は締め出しの形だが、今後ホームのサポーターを含め、クラブ独自、ないしはJリーグ全体でリモートマッチに戻される可能性は十分にありえ、そうなると収入の大多数を占める入場料での収支が失われ、下位リーグ降格どころか、クラブ消滅も無きにしも非ずだ。サガン鳥栖の前身の鳥栖フューチャーズも1996年に大口スポンサーのPJMジャパンの撤退による「クラブ消滅」があったが、その後サポーターが中心となって、市民クラブとして再スタートした経緯がある。それでも安定したスポンサー収入が得られず、2004-05年ごろにクラブ消滅、よくてもJFL降格(当時J2)の可能性もあり得たという状態が続いていたこともある。そのたびごとに鳥栖市民・佐賀県民はおらが町のチームをなくすわけにいかないと奮起していたが、今回はトーレスマネーはもちろんのこと、コロナにより日程がかなりいじられたことによって選手もサポーターもひん死という状態にある。

 

そういったことを総合的に判断したとき、Jリーグはライセンス発給で何らかの階級でリーグに参加した場合でも、このようなやや乱雑な体制での経営状況を総合的に鑑み、いわゆる罰則減点(海外では最大5試合分、15点減点というところから始まったクラブもある)という形をとったほうがいいかと思う。現在のJリーグのルールでは、公的融資を受けた場合、最大3試合+1引き分け相当の10点減点というルールがあるが、サガンにはもう少し厳しめでもいいだろう。

 

また鳥栖市民・佐賀県民は今回の一大事を対岸の火事とみるのではなく、おらが町のクラブという意識をもう一度再認識させ、クラブ再建のため、クラウドファンディングや、あるいはお子さんの貯金などをはたく、またシーズンシートの払い戻し対象となった試合でも税制優遇が取れるサービスが今回行われていることもあり、それらの寄付金、またかつての広島カープのような「たる募金」という形でクラブ再建に協力すべきと思う。

 

地元をよく知る人物に経営を任せることも考えたほうがいい。先日、自らの芸能事務所「IYグローバル」を将来九州に登記本社を移す予定であると報じられた、地元鳥栖からミスインターナショナル世界グランプリ、そして今はハリウッド女優や社会活動家としても活躍するあの吉松育美さんは佐賀県をよく知っているはずだから、サガン鳥栖再建の救世主として、育美さんの力を与えたほうが一番いいのではないかと思う。育美さんが中心となって地元企業・団体のスポンサードマネジメントを行ってもいいと思う。もちろん個人株主も歓迎である。

 

Jリーグが考える地域密着という理念を考えていくとき、地元の力というのを最優先に考えて再建させるのが一番良い方法である。