正月のテレビというと、大晦日のNHK「紅白歌合戦」と、フジテレビ「新春スターかくし芸大会」が思い浮かぶ。

 

紅白は元々ラジオしかなかった1951年から3年間は正月特番だったが、1953年からテレビが開局したため、今のような大晦日の定番となった。1969年からは、TBSテレビの「日本レコード大賞」とリレーする形をとり、一流歌手にとってはレコ大から紅白の会場への移動が果たして間に合うかという点も見どころであったが、1990年以後紅白の開始時間が19時台の後半となったことで視聴率の取り合いになってはいけないということと、歌手の移動負担を減らすという観点から、レコ大は2005年以後12月30日に行われている。

 

紅白は、その年1年をにぎわした名歌手が勢ぞろいしての歌い収めの儀式ということで、1年の締めくくりは本業の歌の世界で真剣勝負を繰り広げ、紅白のすべてのステージを終えた瞬間、ラグビーのノーサイドよろしく、お互いの健闘を称えあって、1年の労をねぎらうというのが紅白である。

 

年が明けて、その紅白の歌手も含めた多くの芸能人が仕事始めの舞台として挙げるのが、「新春スターかくし芸大会」であった。元々からゴールデンタイムでやっていたというわけではなく、第1回・1964年のそれは、夕方に放送されていたという。しかも当時から3-4時間というわけではなく、1時間ちょっとにしかすぎず、半分は余興といった趣にしかならなかったというのは意外だった。第2回からゴールデンタイムとなったが、当時は深夜に近い時間だった。今のようなファミリータイムになったのは1970年代から。

 

年度により2日間連続放送となった時もあったが、かくし芸というと、先ほども述べた「余興」という印象で、いわば芸能人の新年会という印象を覚える方もおられるだろうが、実際かくし芸大会を毎年見ていたら、堺正章氏のテーブルクロス抜きであったり、若手歌手・女優さんらのチアリーディング(アクロバティックな演技が見れるもの)、中堅クラスともなると、外国語のドラマなど、もちろん新年・松の内ならではの普段は演じる機会がない妙技に真剣になって取り組んでいるさまが、人々の感動を与えた。

 

そのかくし芸大会が終了したのが2010年のお正月である。理由は視聴率の低迷によるマンネリ化とスポンサー離れというのが大きく、芸能人を長期間拘束する形でネタ作りに励むというのも相当な苦労があったようである。だが、それが廃止になったことで、その芸能人の妙技・名演、いや、迷演を見ることができたのも一つの楽しみだっただけに、正月の楽しみが減ったというのは寂しいという意見もある。

 

現在はこれに代わるものとして、年2回程度(新春と夏場)に「TEPPEN」という、芸能人の特技、例えばピアノや書道、剣道などスポーツ・文化の得意技を審査するコンテストが行われている。ピアノの場合、元AKB48で、現在はソロのピアニスト・タレントとして活躍する松井咲子さんやかつみ♡さゆりのさゆりさんらが名勝負を繰り広げていることでも知られている。

 

でも、そろそろかくし芸大会を本格的に復活してもいいのではないか。近年、芸能界はご当地アイドルから全国区にのし上がったAKBグループを中心に、老若男女を問わず、幅広いメンバーがそろいつつある。例えば、普段は「秋元康氏プロデュースの公式ライバル」といわれるAKB系列と、乃木坂46、欅坂46の選抜メンバーが、ユニットの垣根を越えて新体操やチアリーディングを繰り広げるとか、プロ野球やJリーガーの選抜メンバーによる「マッスルミュージカル」なんていうのもありだと思うし、超ご長寿の加藤一二三氏(ひふみん)や野村克也氏らがムード歌謡でコーラスをするというのも面白いかもしれない。

 

正月の独島の雰囲気が醸し出されるかくし芸大会、芸能人の素顔も垣間見える機会でもあり、また真剣勝負を繰り広げる場でもあるので、ぜひ再開していただきたいものである。