昨日J1リーグから開幕した今年のJリーグ。今年のJリーグで大きな話題となっているのは、ネット配信のコンテンツ会社・イギリスのパフォームグループが展開する「DAZN(ダゾーン)」による有料媒体独占配信が開始されたことにある。

 

Jリーグ中継は創設当初はNHKのBSを中心として、Jリーグと各放送局が放送カードを決めるという体裁で、2002年からはこれにTBSテレビが加わり、事実上はこの2つが主導権を握っていた。2007年からJリーグの放映権はスカパー!が中心となって、NHKとTBSはスカパーからサブライセンスを受ける形で放送を続け(2012年からはこれに朝日放送が加わり、関連会社・スカイAを通して中継していた)、全国の各民間放送に製作を委託する形で、スカパーやケーブルテレビ向けに配信していた。

 

2016年夏、パフォームグループがJリーグと10年間で2100億円(1年単価でいえば210億円)の大型放映権を獲得、それの利益をJリーグの強化理念費用に充てることになり、優勝賞金は今年から3億円(昨年度のチャンピオンシップで優勝した時の賞金が1億円だから3倍)、さらに各クラブの均等分配金が3億5000万円、さらに向こう3年間にわたって、若手選手を中心とした育成のための理念強化費15億円を含め、優勝すると21億円と、パフォームグループの1年単価の放映権の10分の1に相当するおカネが入ってくるため、各クラブは目の色を変えて戦ってくることになる。

 

ところが、スカパー!との放映権は開幕当初の時点では交渉決裂ということでいったん叶わなくなった。今後10年間、Jリーグの有料テレビ放映権はパフォームグループを通して行われる(地デジ・BSはこれとは別にNHKやTBSと交渉を進めているものと思われる)ため、パフォームグループを通してスカパー!や各チャンネル、ケーブルテレビ局に販売することになるが、スカパー!との交渉が、放映権料の高騰というネックが引っ掛かり決裂し、スカパー!とそこへ番組を供給するJ SPORTS、TBSチャンネル、スカイA、スカチャン(PPV)での放送もできなくなってしまった。(一応DAZNに入っていない人でも、Jリーグの公式YouTubeでダイジェストは配信されているが)

 

ただ、これはリーグ戦に限ったことであり、現段階では一般のテレビで見るにはNHK BS1とBS-TBS、まれに地デジのNHK1chでやる程度で、1節2-3試合しか見れなくなってしまうのだが、ルヴァンカップと天皇杯については、引き続きスカパー!との一定の放映権を締結しており、スカパー!のスカサカとフジテレビCS放送での中継は引き続き行われることになっているので、Jリーグが全く見れないというわけではない。

 

テレビの媒体も、1984年の衛星放送の開始以後、選択肢が広がって、今はケーブルテレビこそ全部ではないが、スカパーを入れると200以上のチャンネルが放送されている。これにネットの動画配信が加わり、有料サービス(DAZN以外では、NHKオンデマンド、TBSオンデマンド、FOD、hulu、Net Flix、amazonプライムビデオ、スポナビライブなど)も増えたため、既存テレビでは見ることができない独自のコンテンツのほか、見逃し配信を提供するチャンネルも増えてきており、家ではスカパー!を含む普通のテレビで、外出先ではスマホの動画配信でという形での選択肢もより広がった。

 

今回のJリーグ中継のDAZNでの配信も、外出先やスタジアムなどでの試合観戦の場を広げ、いつでもどこでもスタジアムというヴァーチャル感を提供する機会を増やすという狙いがあるが、昨日の開幕戦で、早速トラブルがあった。Jリーグはスタジアムの大型ビジョンと連動して、Wi-Fi環境を整えて、試合のリプレーをリアルタイムで楽しめるようにしようとしたが、まだ回線が整備されていないことなどもあって、中継が数十分も中断してしまうなど、不満も相次いだという。

 

またスカパーJSATが先ごろ発表したところでは、Jリーグ中継の撤退に伴い、スカパー!を解約した視聴者が3%ほどいたという。引き続きサッカーコンテンツは強化するもののJリーグ中継というキラーコンテンツが廃止されたため、Jリーグを対象としたセットが廃止になったことも影響しているらしい。


スカパー!やケーブルテレビもスマホ・タブレット向けの配信サービスを強化しているので、そういった既存テレビとの連携をもう一度考え直してもいいのではないか。スカパー!がサッカー専門チャンネルのコンテンツ「スカサカ」を提供しているのだし、バスケットのBリーグも、今季からソフトバンクの動画サイト「スポナビライブ」を通してのネット中継だけでなく、スカパー!にも販売して、CSのJ SPORTS、GAORA、スカイA、日テレジータス、日テレニュース24などで生中継をするなどして積極的なメディア戦略をしているのを参考として、JリーグもDAZNを窓口にするか、あるいはもう一度Jリーグとスカパー!とで直接交渉し、交渉が成立したあかつきには、スカパー!とDAZNとの連携によって、スカパー!やケーブルテレビでも全試合とはいかなくとも、その週の注目される何試合かをピックアップして分担中継してもいいのではないか。

特にケーブルテレビは地元密着型メディアなので、スカパー!などでの生放送がない試合は、コミュニティーチャンネルを使ってDAZN・スカパー!が提供する公式映像を配信して、例えば大阪の北摂ならガンバ、大阪市内と泉州はセレッソ、東京なら23区内であればFC東京、多摩地区は東京ヴェルディと町田ゼルビアというようにホームタウンエリアに特化して生中継して、地域理念・コミュニティー創生につなげるのも手ではないだろうか。