ちびくろ・さんぼ

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ちびくろ・さんぼ
   文、ヘレン・バンナーバン ,岩波書店

   

 あるところに、かわいい くろんぼの おとこの子が いました。
なまえを ちびくろ・さんぼと いいました。
 おかあさんの なは まんぼ、おとうさんの なは じゃんぼと いいました。
 おかあさんの まんぼは、ちびくろ・さんぼに、あかい きれいな うわぎと、あおい きれいな ずぼんを、つくってくれました。
 おとうさんの じゃんぼは、まちへ でかけて、きれいな みどりいろの かさと、かわいい むらさきいろの くつを、かってきて くれました。
 これだけ そろったら、ちびくろ・さんぼは どんなに りっぱに なるでしょう。

 ちびくろ・さんぼは、あかい うわぎと あおい ずぼんに、むらさきいろの くつを はいて、みどりの かさを さして、じゃんぐるへ さんぽに でかけました。すこし いくと、とらが でてきました。
「ちびくろ・さんぼ! おまえを たべちゃうぞ!」と、とらは いいました。
 そこで、ちびくろ・さんぼは いいました。
「どうぞ、とらさん、ぼくを たべないで ください! ぼくの この きれいな あかい うわぎを あげるから」
 すると、とらは いいました。
「よし、じゃあ、こんどは、たべないで おいてやろう。だけど、その きれいな あかい うわぎを くれなきゃ だめだぞ」
 とらは、かわいそうな ちびくろ・さんぼの
きれいな あかい うわぎを もらって、
「これで、おれさまは じゃんぐるじゅうで いちばん りっぱな とらじゃわい」と いいながら、むこうへ いって しまいました。
 ちびくろ・さんぼが、また、すこし いくと、また べつの とらが でてきました。
「ちびくろ・さんぼ! おまえを たべちゃうぞ!」と、とらは いいました。
 そこで、ちびくろ・さんぼは いいました。
「どうぞ、とらさん、ぼくを たべないで ください! ぼくの この きれいな あおい ずぼんを あげるから」
 すると、とらは いいました。
「よし、じゃあ、こんどは、たべないで おいて やろう。だけど、その きれいな あおい ずぼんを くれなきゃ だめだぞ」
 とらは、かわいそうな ちびくろ・さんぼの あおい ずぼんを もらって、
「これで、おれさまは じゃんぐるじゅうで いちばん りっぱな とらじゃわい」と いいながら、むこうへ いって しまいました。
 それから、さんぼが、また すこし いくと、また べつの とらが でてきました。
「ちびくろ・さんぼ! おまえを たべちゃうぞ!」と、とらは いいました。
 そこで、ちびくろ・さんぼは いいました。
「どうぞ、とらさん、ぼくを たべないで ください! ぼくの この きれいなむらさきいろの くつを あげるから」
 けれども、とらは いいました。
「いやいや、そんな くつを もらったって、なんの やくにも たちゃしない。おまえの あしは 二ほなだが、おれさまの あしは 四ほんだ。くつの かずが たりないぞ」
 そこで、ちびくろ・さんぼは、いいました。
「みみに はけば、いいですよ」
「な、なるほどね」と、とらは いいました。「そいつは いい かんがえだ。それじゃ、こんどは、たべないで おいてやろう」
 とらは、かわいそうな ちびくろ・さんぼの きれいな むらさきいろの くつを もらって、
「これで、おれさまは じゃんぐるじゅうで いちばん りっぱな とらじゃわい」と いいながら、むこうへ いってしまいました。
 それから、さんぼが、また すこし いくと、また べつの とらが でてきました。
 「ちびくろ・さんぼ! おまえを たべちゃうぞ!」と、とらは いいました。
 そこで、ちびくろ・さんぼは いいました。
「どうぞ、とらさん、ぼくを たべないで ください! ぼくの この きれいな みどりいろの かさを あげるから」
 けれども、とらは いいました。
「おれは、あるくのに あしが 四ほん いる。いったい、どうやって かさを させば いいんだ?」
「しっぽに ゆわえつけて、させば いいですよ」と、ちびくろ・さんぼは いいました。
「な、なるほどね」と、とらは いいました。「それなら、かさを こっちへ よこせ。こんどは、たべないで おいてやろう」
 とらは、かわいそうな ちびくろ・さんぼの きれいな みどりいろの かさを もらって、
「これで、おれさまは じゃんぐるじゅうで いちばん りっぱな とらじゃわい」と いいながら、むこうへ いってしまいました。

ひどい とらたちに、うわぎも ずぼんも、くつも かさも、みんな とられて、ちびくろ・さんぼは おいおい なきながら、あるいて いきました。
 すると、
「ぐる・る・る」という おそろしい こえが、きこえて きました。
そして、こえは、だんだん おおきく なって きました。
「たいへんだ! たいへんだ!」と、ちびくろ・さんぼは いいました。「とらが みんなで ぼくを たべに やってくる! どうしよう?」
 そこで、ちびくろ・さんぼは おおいそぎで やしの木の かげに かくれて、いったい、どういうことに なるのかしらと おもって、そっと のぞいて みました。
 すると、とらたちが みんなして、
「おれが いちばん りっぱな とらだ、おれが おれが」といって、けんかを しているのでした。しまいに、みんなは かんかんに おこりだして、うわぎも かさも ずぼんも くつも ほうりだして、つめで ひっかいたり、おおきな しろい はで くいついたり、おおげんかに なって しまいました。
そして、とらたちは、ごろん ごろん、どたん ばたんと、ちびくろ・さんぼの かくれている 木の すぐ そばまで やってきました。さんぼは、おおいそぎで かさの うしろへ にげこみました。
 とらたちは、ふうふう いいながら、となりの とらの しっぽに くいついて かけまわりましたので、木の まわりに、とらのわが できて しまいました。
 そこで、ちびくろ・さんぼは かさの かげから かおを だして、どなりました。
「とらさん とらさん、どうして こんな いい かさや きものを すてちゃったの? もう いらないの?」
 けれども、とらは ただ、
 ”ぐる・る・る・る・る・る・るるるるるるるるるるるる”
と、こたえた だけでした。
 そこで、ちびくろ・さんぼは いいました。
「もし いるんなら、そう いって おくれよ。でなきゃ、ぼくが もってっちゃうよ」
 けれども、とらは まだ しっぽを くわえた ままでした。
それで、やっぱり、
”ぐる・る・る・る・る・るるるる”
と、いった きりでした。
 そこで、ちびくろ・さんぼは また、きれいな きものを きて、かさを さして いって しまいました。
 とらたちは、それを みて かんかんに おこりました。それでも まだ、しっぽを はなそうと しませんでした。
 そして、はらたちまぎれに、あいての とらを たべて しまおうと おもって、ぐるぐる 木の まわりを かけまわりました。
 そのうち、あんまり はやく まわったので、あしが ぜんぜん みえなく なって しまいました。 
 それでも まだ やめないで、ぐるぐる まわって いるうちに、とうとう みんな どろどろに とけて ながれて しまいました。

 ちょうど そのとき、おとうさんの じゃんぼが、おおきな つぼを もって、しごとから かえって きました。そして、とけた とらたちを みて、おおよろこびで いいました。
「こいつは、すてきな ばたーじゃわい! うちへ もって かえって、まんぼに おいしい ごちそうを つくってもらおう」
 そこで、じゃんぼは おおきな つぼに いっぱい、とけた ばたーを いれて、うちへ もって かえりました。
 うちでは まんぼが、おおよろこびでした。
「さっそく、ほっと・けーきを こしらえて、みんなで たべましょう!」
 そこで まんぼは、こなと たまごと みるくと、おさとうを まぜて、とても おいしそうな ほっと・けーきを おさらに いっぱい つくりました。
 それから、それを とらの ばたーで 揚げると、ほっと・けーきは、ちょうど、とらのような きいろい こんがりした いろに なりました。
 それから、みんんなで たべました。
 おかあさんの まんぼは、その おいしい ほっと・けーきを、二十と 七つも たべました。
 そして、おとうさんの じゃんぼは 五十五も たべました。
 けれども ちびくろ・さんぼは、なんと 百九十六も たべました。とても とても おなかが へって いましたのでね。


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ちびくろ・さんぼ 2


 あるとき、ちびくろ・さんぼが、おとうさんに もらった おおきな かなづちで、とんかち とんかち やっていると、おかあさんの よぶこえが しました。
「ちびくろ・さんぼ! ちょっと きてごらんよ!」
 そこで さんぼが とんでいくと、かわいい くろんぼの あかちゃんが ふたり、おおきな かごの なかに ねていました。
「これ、ぼくの おとうと?」
「そうよ、おまえの おとうとよ」
「うれしいな! なんて なまえが いいかな?」と、ちびくろ・さんぼは いいました。
「うん、そうだ! ちびくろ・うーふと ちびくろ・むーふっていうのが、いいや!」
 ちびくろ・うーふと ちびくろ・むーふは、一にちごとに おおきくなって いきました。
 ちびくろ・さんぼは、かわいい おとうとたちの てを ひいて、さんぽに つれて いったり、おふろに いれて やったり しました。
 おとうとたちの はじめての 誕生日に、ちびくろ・さんぼは、みるくを いれる おちゃわんを ひとつずつ やりました。
 その ひとつには うーふ
 もう ひとつには むーふ
と かいて ありました。
 二どめの たんじょうびには、ながい きれいな おびを やりました。
 ちびくろ・うーふは あかい おび。
 ちびくろ・むーふは あおい おび。
 これで ふたりは たいへん りっぱに みえました。
 あるひ、さんぼが おとうとたちと あそんで いると、おかあさんの まんぼが よびました。
「ちびくろ・さんぼや、じゃんぐるへ いって、たきぎを すこし とってきて おくれ。ばんの ごちそうに ひつじの にくを やくんだから」
 そこで、さんぼは じゃんぐるへ とんで いきました。
 さて、ちびくろ・さんぼの いえから、あまり とおくない ところに、たかい たかい やしの木の もりが ありました。
そのもりの いちばん たかい木の てっぺんに、二ひきの わるい さるが すんで いました。
 さるたちは、いつも、ちびくろ・うーふと ちびくろ・むーふを みて いました。そして、かわいい ふたりを、じぶんたちの こどもに したい ものだと おもって いました。
 そこで、ちびくろ・さんぼが、たきぎを とりに じゃんぐるへ いって しまうと、そのすきに
 二ひきの わるい さるたちは、そっと やしの木を おりて、ちびくろ・うーふと ちびくろ・むーふが、おちゃわんを もって あそんでいる ところへ やってきました。
 そして、かわいい ふたりを さらって、かぜのように、やしの木の てっぺんへ にげていって しまいました。
 ちびくろ・うーふと ちびくろ・むーふの わあわあ なくこえを きいて、おかあさんが とんで きました。
 けれども、もう そのときは、ふたりは どこにも いませんでした。
 ちびくろ・さんぼが、じゃんぐるから かえって くると、おとうとたちの すがたが みえないので、びっくりして しまいました。
「ちびくろ・うーふ、やーい! ちびくろ・むーふ、やーい!」と、さんぼは よびました。
 すると、おかあさんが とんできて、「ちびくろ・うーふと ちびくろ・むーふは、わるい さるたちが、木の てっぺんへ さらっていって しまったのよ」と、なきなき はなして きかせました。
「たいへんだ! たいへんだ!」
 ちびくろ・さんぼは、たきぎを ほうりだして、おかあさんと いっしょに、やしの木の もりへ かけつけました。
 そして あっちの木や こっちの木を したから すかして ながめましたが、どの木にも、うーふたちの すがたは、みえませんでした。
 そのうち、さんぼは、いちばん たかい 木のしたに、ちいさな おちゃわんが ふたつ、ころがって いるのを みつけました。それは うーふと むーふの おちゃわん でした。
「おかあさん、この木だよ! うーふと むーふは、この木に いるんだよ」と、ちびくろ・さんぼは、おどりあがって いいました。 
 おかあさんも おおよろこびで かけてきました。
 そして、じっと うえを みあげて いると、ぽたりと ひとつ おおきな なみだが、ちびくろ・さんぼの はなの うえに おちてきました。
 それから、もうひとつ、ぽたりと まんぼの はなの うえに、おちてきました。
 それで、ちびくろ・うーふと ちびくろ・むーふが、その木の うえに いるにちがいない、ということが わかりました。
 けれども、いったい どうやって、この たかい木の てっぺんへ のぼれば いいのでしょう?
 ちびくろ・さんぼは、木の ねもとに すわって、じっと かんがえこみました。そして、きゅうに ひざを たたいて、いいました。
「うん、いいことを おもいついた!」
 ちびくろ・さんぼは、おおいそぎで いえに かえって、おとうさんの じゃんぼに もらった、おおきな かなづちと ながい くぎを とって きました。
 そして、それを 一ぽん 一ぽん、たかい やしの木に うちつけ はじめました。
 一ぽん うっては ひとあし のぼり、一ぽん うっては また ひとあし のぼって、ちびくろ・さんぼは、だんだん たかく、のぼって いきました。
 けれども、てっぺんちかく なると、やしの はが いっぱい しげって いて、はりのような さきが ちくちく さして すすめませんでした。
 それで、しかたなく、ちびくろ・さんぼは、また したへ おりて、木の ねもとに しゃがんで、しくしく なきはじめました。
 ちょうど そのとき、一わの おおきな わしが、そら たかく とんで いました。
 とても たかい ところを とんで いましたので、だれにも みえませんでした。けれども、わしは おおきな よく みえる めで、したの せかいを ながめて いました。
 そして、やしの木の したに、ちびくろ・さんぼが いるのを みると、さっと、そらから まいおりて きました。
 けれども、どうやら、さんぼは、ないている ようすです。
 わしは、ちびくろ・さんぼの そばへ よって いきました。
「どうしたんだ、ちびくろ・さんぼ? なにを そんなに ないて いるの?」と、わしは、やさしく ききました。
「この木に すんでいる わるい さるたちが、ぼくの おとうとたちを さらって いって しまったの」と、さんぼは いいました。「ぼくには、どうして とりかえして いいか わからないの!」
「それじゃ、ぼくが つれてきて あげよう」と、わしは いいました。そして、たかい やしの木の てっぺんへ まいあがりました。 
 それを みて、わるい さるたちは、びっくりして にげて いって しまいました。
 ところが、ちびくろ・うーふも ちびくろ・むーふも わしを こわがって、やしの はの あいだに ひっこんで しまいました。それで、わしは しかたなく さんぼを つれに ひきかえしました。
 そして、ちびくろ・さんぼを せなかに のせて、もういちど やしの木の てっぺんへ まいあがりました。
 にいさんの さんぼが きたのを みると うーふも むーふも おおよろこびで、はの なかから でてきました。
 そこで、ちびくろ・さんぼは、ふたりの おびを といて、うーふと むーふを わしの くびに しばりつけました。
 それから、さんぼは わしの ひろい おおきな せなかに のりました。
 うちでは、おとうさんの じゃんぼが、ちょうど しごとから かえった ところでした。そして、まんぼから、わるい さるたちの ことを きいて、どうしたら いいかと しんぱい している ところでした。
 すると、どうでしょう。
「おとうさん! おかあさん!」と、さんぼの よぶ こえが するでは ありませんか。
 じゃんぼと まんぼが、そとへ とびだしてみると、ちびくろ・さんぼたちが、おおきな わしの せなかに のって、そらから おりてくる ところでした。
 それを みて、じゃんぼと まんぼは、どんなに よろこんだでしょう。 
 おとうさんの じゃんぼは、ちびくろ・うーふを だきしめ、おかあさんの まんぼは、ちびくろ・むーふを だきしめました。
 そして さんぼは、みんなに だきつきました。
 おとうさんと おかあさんは、わしに うんと おれいを いいました。
 そして まんぼは、うちから ひつじの あしを もってきて、二ほんとも わしに やりました。
 わしは その おいしそうな ひつじの あしを もって、おおよろこびで いえへ とんで かえって いきました。
 わしの うちでは、かわいい わしの子が、おとうさんの かえりを まっていました。
 そして、おとうさんが おいしそうな ひつじの あしを 二ほんも もって かえったのを みると、はねを ばたばた させて よろこびました。
 さんぼの うちでは、ひつじの にくを みんな わしに やって しまったので、そのばん、おかあさんは、かわりに また、おいしい ほっと・けーきを おさらに いっぱい つくりました。
 わしの うちでも、ちびくろ・さんぼの うちでも おおごちそう でした。
 けれども、わるい さるたち だけは、なんにも ごちそうが ありませんでした。

   おわり

 昭和28年12月10日発行、


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この本は、翻訳文の中に、差別用語があるという判断のため、発行から数十年後に、発売禁止になっていました。
 どこに問題の用語があり、どこの誰の判断で、そのような措置が下されたのかは、わかりませんが、黒人の男の子の呼び方を、べつのものに置き換えれば、物語の内容に問題はないものと思います。


  


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