家庭教師の先生との出会いで私が得たものは
学力だけではありませんでした。
先生との週一回の勉強も数ヶ月が過ぎ、
先生は私にとても普通に接してくれたため、
私もだんだんと打ち解けるようになってきました。
先生は、県内の国立大学に通っていました。
一人暮らしをし、大学へは自分の車で通っていました。
先生との勉強のあとには二人でお茶をする時間が毎回あり、そこで先生はよく大学での生活を話してくれました。
先生が大学でできた友達は、みんな大学から知り合った人たちだと言っていました。
県外から来た人もたくさんいて、とても面白いと。
また、クラスというものはなく、
自分で学びたい授業を選択できることや、
サークル活動が楽しいことなどを話してくれました。
そして、私はそれらの生活に強く強く憧れました。
大学生の知り合いなどいなかった私にとって、
そんな自由な学生生活があることは衝撃でした。
私はその頃、高校へ進みたいとは思っていませんでした。
きっと知り合いがたくさんいて、中学に行けなかった子として見られてしまうのだろうと、勝手に悪い想像をしていたからです。
不安だけれど、もう働くしかないと思っていました。
そして身近な大人である母は、
父と離別してから仕事に必死でいつも大変そうで
(そのように私には見えいて)、
思えば大人になることへの幸せなイメージを持てずにいたような気がします。
でも先生と出会い、
私は「大学生」というものになりたいと強く思うようになりました。
それは引きこもって以降死ぬことばかり考え、
未来を想像することが怖かった私が、
初めて前向きに想像した未来でした。

