White Place

目が覚めて
脳とは別に身体が動きだす。
不眠の朝に
私の意思はなく
珈琲を淹れ
煙草を吸う。
ワイドショーのコンテンツが
私の時報。
出勤前の身支度をはじめる。
生きていると
楽しいことも辛いこともあり
平坦な日常は訪れず
寝付きの悪い夜もある。
それでも同じ朝がきて
仕事に行き
ただただ週末の休みをカウント。
生きていてなんぼ。
同じ朝がきてなんぼ。
変化ない退屈な日常こそ
最高の幸せ。
朝6時に起き
自分のために珈琲を淹れる。
胃に沁みたころ
私の1日がはじまる。
夫のために作るお弁当は30分で。
見た目はとにかく美味しそうに。
ギュっと詰めこんだ完成形を眺めるとき
今日も間に合ったって
心がするんとやわらぐの。
たくさん優しくしてもらうと
私もどんどん優しくなる。
何度も守って助けてもらうと
私ももっと支えたくなる。
朝から晩まで
毎日笑う。
優しいことも
守ってくれることも
毎日笑顔でいられることも
そのうち日常になり
当たり前になりませんように。
ありがとうって
しあわせだよって
ずっと思える私でいたい。
小学校6年の頃
いなくなった父親。
なんでなんでと
母親に問いただしたあの頃。
いなくなった理由は知らされないまま
私は大人になった。
その間の母親の頑張りとたくましさは何より絶対で
道に迷うこともなく
夢を描き
どんなことにも果敢に挑戦できる環境をくれた。
あれからどれくらい時間が流れたのか。
姉から父親の今を知らされた。
「あんたに会いたがってるよ。
一度会ってくれない?」
どれだけ時間が経ったと思う?
私の何を知ってるというの?
会いたいならなぜ
一度も連絡をしてこない?
大人になって
思考回路が複雑になった分
当時より遥かに混乱してしまった。
ただ
体調が悪い知らせということもあり
自分自身に後悔が無い様
一度会うべきではないかと思っていた。
その知らせの数週間後
緊急入院したと姉から連絡がきた。
慌てて駆けつけた姉は
万一の際
延命するかどうか聞かれたという。
リアルタイムに送られてくるLINEに
動悸が止まらなくなった。
父親が危ないからではない。
全く私には
他人事に思えてしまった。
母親が入院した時は
仕事を放り出して駆けつけたはず。
その日初めて
自分の心の内が見えた。
父親は
小学校6年以来
私にはいなかった。
子供は
親を選ぶ事ができない。
だから私は
力一杯守ってくれた母親を大切にしよう。
そして父親は
ナナハンであちこち遊びに連れて行ってくれた
当時のカッコいい面影のまま
私の心の奥に
そっとしまっておこう。
髪を切った帰り道
ぽかぽかの日差しにすり抜ける風。
冬の名残り
少しひんやり
くすぐったい。
でもなぜか
とても穏やか足どり軽く。
待ち焦がれた春の足音
もうそこまで。
不思議だね。
こころもからだも
浮かれているよ。
産みの親より育ての親。
よく聞く言葉だけれど
初めて今日
それに近い感覚を抱いた。
本当の親でも
ほとんど思い出される記憶が無いと
いつしか子供は
その存在を忘れてしまう。
いないことに出来る存在。
無かったことに出来るひと。
血の繋がりとは
なんだろう?
されど血縁。
たかが血縁。
要は
どれだけ愛情を注ぎ
どれだけ本気で関わったか。
それが全てだと
心底感じた今日の出来事。
産みの親より育ての親。
この言葉の根底には
きっと同じ意味合いがあるんだろう。
キライ。
ニクイ。
関わりたくない。
不信感でいっぱい。
いなくてイイひと。
むしろ
いないほうがイイひと。
合う合わないというよりは
存在自体が無理なひと。
そこまで強い憎悪を受け入れる。
ときに
そういう気持ちが大切だと痛感させられる。
これほどの勇気って
ほかにあるのだろうか。
それができたなら
そこにあるのは
やさしい気持ち
ただそれだけだと思う…。
海はいい。
おしては引き
おしては引き
寄せる波はエンドレスで
知らぬ間に
私のこころも連れていってくれる。
空はいい。
ゆらりゆらりと流れる雲は
ゴールが無いからひたすら気まま
見上げて追えば
私の意識は
空をかける。
中身はいいね。
自由奔放旅に出る。
そしてむなしく
置き去りにされた苦しみとからだは
いまいる場所で
前に進めず立ち尽くしてしまうんだ。
遠く遠く。
どこか遠くに行きたい。
手をつないで雲にのる。
かたくつないで雲にのる。
空いた片手に誰かをつなげると
雲から片足すべりだす。
伸ばされたときだけつかまえよう。
大切なのは
雲にのった
かたくつないだふたりの手。
電車内で
化粧品を広げてメイクタイム。
おいおい。
もみくちゃになる
凄まじいラッシュの真っ只中
「最近の若い子は…。」
自分の娘をさておき
(やれやれ…)
心のためいきがふと漏れる。
そんな中
オリンピックに沸き返る日常で
10代~20代前半の活躍が
やたら眩しく
私をふるわせる。
その頃の自分は
どんなことを考え
どういう日々を過ごしていたか?
甦る記憶とともに
ガックリうなだれる。
いまの若い子は…。
ひとくくりのカテゴリーが
見事に分離した瞬間。
頑張っている人
努力し続ける人
流される人
逃げる人
ズルい人
威張りくさる大人でも
存在意味が無意味の人間はいる。
オリンピックに魅せられ
大いに未来に期待したいと思った。
歩きだせば
絡まる指先。
隣に座れば
寄り添う頬。
振り返れば
重なる唇。
いつだってそう。
言葉は無くても
自然に織り成されるひとときは
やけに甘くて熱っぽい。
これがふたりの
愛のかたち。

