第15回国際交流会議「アジアの未来」

平成21年5月21日、麻生総理は都内のホテルで、新聞社主催の第15回国際交流会議「アジアの未来」の晩餐会で「経済危機を超え、再び飛躍するアジアへ」と題して演説しました。


国際交流会議「アジアの未来」晩餐会で講演

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2592.html


真実の報道-24


 平成21年5月21日、麻生総理は都内のホテルで、新聞社主催の第15回国際交流会議「アジアの未来」の晩餐会で「経済危機を超え、再び飛躍するアジアへ」と題して講演を行いました。

 演説では、アジアの潜在力を引き出し繁栄を確かなものとするためには、大きく分けて次の3つの分野で取組を進めていく必要があるとし、第一は、適切なマクロ経済政策と金融市場対策による経済・金融危機への対応、第二は、中・長期的な視点からの経済成長構想の実施、第三は、人々が安全に安心して活動出来るよう、環境、保健・衛生、テロ・海賊、安全保障など、国境を超える問題への対応等について具体的に述べました。

 そして結びに、「私は『経済的繁栄と民主主義を希求する先に平和と人々の幸福がある』、『Peace and Happiness through Economic Prosperity and Democracy』という考え方を政治的な信念としております。個々人に『選択の自由』を提供し、社会の安定と繁栄を一層強固なものとする。アジアでも、そのような道を歩む国では確実に国民の幸福は高まっていると思います。同じ道を歩み、努力する友人を日本は応援していきます。」と述べました。


第15回国際交流会議「アジアの未来」
麻生内閣総理大臣講演
「経済危機を超え、再び飛躍するアジアへ」



それでは、シンガポールのリー・クァンユー内閣顧問、マレーシアのマハティール元首相、森元内閣総理大臣、ラオスのブアソーン首相、ベトナムのズン首相、韓国のハン・スンス国務総理、そして日本経済新聞社の杉田会長、並びにこの会場に御列席いただきました皆様、3年前に私は外務大臣として、この会議に参加しました。その際、「開かれたアジアのコミュニティづくりに向けて、楽観的に歩んでいきたい」と申し上げたと記憶します。
 当時とは、今、世界の状況、なかんずく経済状況は一変をしており、大きく変わりました。我々は今、「100年に一度」と言われるような、経済・金融危機のさなかにあります。アジアも残念ながらその例外ではありません。過去5年間でアジアの経済は8%の平均経済成長率を誇ってきましたが、今年は大幅に落ち込むと予想されております。
 しかし、私は本日改めて、私のアジアに対する楽観的な見方は、依然として変わりはないということを申し上げに参りました。そして、アジアが現在の困難を乗り越えて、成長し、人々が暮らしへの希望を取り戻すために、今、日本が、そしてアジアがなすべきことを、私なりの考えをお話ししたいと思います。
 
 アジアは、「21世紀の開かれた世界の経済成長センター」と言われております。東アジアだけで、世界人口の約半分、32億人が住んでおります。この4年間で1億3,000万人、日本1国分の人口が増えております。過去10年間、ASEAN、インド、中国の名目GDPの合計は、実に3倍に増えております。このようなアジアの潜在力を引き出し、繁栄をより確かなものとするために、私は大きく分けて、次の3つの分野でその取組みを進めていく必要があると考えております。
 
 第1は、適切なマクロ経済政策と金融市場対策による経済・金融危機への対応。
 第2は、中長期的な視点からの経済成長構想の実施。
 第3は、人々が安全に安心して活動できるよう、環境、保健・衛生、テロ・海賊、安全保障など、国境を越える問題への対応などであります。
 順次、お話しをしたいと存じます。
 

[現在の経済・金融危機への対応]
 
 まず第1に、何と言っても、直面する経済・金融危機を乗り越えるための施策についてであります。
 
 各国が内需拡大に足並みを揃えることが、今、極めて大切であります。
 日本は90年代のバブル崩壊後、名目金利が0%であっても、資金の借り手がいない、設備投資が伸びないという経験をしました。今回の危機では、その教訓から、財政出動をこれまで約1,200億ドル行っております。さらに、新たに約1,500億ドルを実施に移そうといたしております。経済の異常な事態には、異例な対応も必要との考えで手を打ったところです。アジアの各国も、国内の景気刺激策を実施中であり、大変心強く思っております。
 
 次に、アジア金融市場の安定・発展は、地域にとってのみならず、世界経済の安定にとり、必要不可欠なものだと存じます。
 1997年のアジア通貨危機以降、資金の流動性の融通の仕組みであります「チェンマイ・イニシアティブ」を始め、東アジアにおける地域金融協力は、より強固なものに進化をしてきました。先日のチェンマイ・イニシアティブを、今年末までに、多国間の約束、マルチのものとして、より安定的なものとすることが合意をされております。この規模はこれまでの800億ドルから1,200億ドルに拡充をされ、日本としても約400億ドルの貢献を行います。これは将来へ向けての大きな一歩です。
 1997年のアジアの通貨危機以降、約10年間、アジア地域は主として欧米への輸出を加速させることによって、グローバルな経済活動の中で重要な位置を占めることとなりました。反面、アジア経済が欧米などの経済動向に大きな影響を受けることになったのも、また事実であります。実際、グローバルな経済活動の混乱がアジア地域からの貿易、投資フローの減少となって現れております。
 したがって、重要なことは、第1に、アジア地域における、域内の貿易・資本取引を一層促進していくことであります。次に、今後、域内金融協力を更に進化させていくためには、域内での貿易・資本取引における域内通貨の活用を進める必要があります。更に、グローバルな世の中にあって、あくまでもアジア域内の地域協力は、世界に「開かれた地域協力」であることが必要だと思っております。
 日本としても、こうした取組みに積極的に参加をしていく覚悟です。例えば投資先、資本調達先としての日本市場の魅力を高めていくことも、その一つであります。
 また、危機の際に、各国に円の融通ができるようにするなど、地域協力の選択肢を広げ、厚みのあるものにしていくことが、将来に向けて新たな可能性を広げることになると考えております。
 
 また、日本はこれまでさまざまな機会に、アジア開発銀行の資本規模を現在の3倍、すなわち550億ドルから1,650億ドル規模へと増資する必要性を訴えてきました。先般、加盟国間で合意ができたことは、危機への効果的な対処を一層可能とするものだと思っております。
 
 同時に、決して忘れてはならないのは、1929年の世界恐慌に学ぶことだと思っております。ワシントンやロンドンでのG20サミットにおいて、保護主義に断固として対抗していくことを首脳間で確認いたしております。これを徹底していく必要があると思います。


[アジアの成長構想]
 
 第2に、経済危機への対応の次に、アジアの成長力そのものを中長期的視点から強化し、その潜在力を引き出す政策を実施していくことが必要だと考えております。
 先月、アジアの経済規模が2020年に現在より倍増することを目指して、「成長構想を」発表しました。これは広域開発や消費拡大を促して、これまで「輸出主導型」であったアジアの経済を、「内需主導型」へと変革させていこうというものであります。
 ここで、具体的に2つ申し上げます。
 
 まず、広域開発の推進です。広域インフラストラクチャーの整備、産業開発、通関の改善などを一体的に進め、ヒト・モノ・カネの流れをスムーズにし、地域全体の幅広い産業分野で飛躍的な発展を図ることです。
 例えば現在、ベトナムのホーチミンからインドのチェンナイまで、マラッカ海峡を経由して、海路で約2週間かかります。これをホーチミンから、アンダマン海側まで陸路を整備して、その先を海路で結べば10日。更に、いわゆるワンストップ・サービスといった日本の技術を活用し、通関などの手続き時間を短縮すれば、8日で結ぶことができるようになります。
 こうした構想を具体化するためには、官民の連携を視野に入れた「アジア総合開発計画」を策定することが必要です。このため、東アジア・アセアン経済研究センター、いわゆるERIAと、アジア開発銀行(ADB)、またアセアン事務局が関係各国と協力して策定することを提案しております。
 
 次に、アジアの内需拡大です。そのためには、アジアの中間層が安心して消費を拡大するよう、各国で社会保障などのセーフティーネットを整備する必要があると存じます。また、教育の充実によって、中間所得層を増やしていく必要があります。
 
 以上、申し上げた取組みは、資金面を含め、アジア各国が協力して実施していく必要があります。日本は先頭を切って、これらの取組みをリードしていきたいと考えます。
 具体的には、経済・金融危機への対応を含め、(1)ODAを最大200億ドル相当、(2)インフラ整備のための貿易保険枠を同じく200億ドル相当、(3)JBICの環境投資支援イニシアティブを2年間で50億ドル相当、(4)貿易信用の補完のための追加的な貿易金融支援を2年間で220億ドル相当などを用意しました。
 日本は、あらゆる施策を動員して、アジア各国の取組を後押しします。アジアの成長と関連して、地域内の協力として、私は本日、特に今から申し上げます点に触れたいと思います。
 
 まず日本は、ASEANの統合と発展を重視しています。更にASEANが推進役となり進展をしております「東アジア・サミット」や「ASEAN+3」の枠組みは、将来の東アジア共同体の実現にもつながる大きなチャンスを提供していると存じます。
 ASEAN域内には、依然として大きな経済格差が存在しています。1人当たりのGDPが3万ドルを超える国から、数百ドル台の国まであります。
 特にメコン地域の遅れている開発をどう進めていくか。また同地域の東西の物流をいかに強化するか。これを議論するため、本年中に、カンボジア、タイ、ベトナム、ミャンマー、ラオスの首脳を日本にお招きし、初めての「日本・メコン首脳会議」を開催し、協力を加速していきたいと考えております。
 
 次に「日中韓」、3か国の協力の推進であります。昨年12月に福岡で開催した初の「日中韓サミット」は、世界の注目を集めました。日中韓を合わせた経済規模は、世界経済の15.9%に当たります。すなわち「英仏独」の3か国の合計よりも大きいのであります。この3か国が首脳の直接のリーダーシップの下、経済分野を含む協力を推進していくことになりました。本年、中国で行われる3か国のサミットを是非成功させたいと考えております。
 
 更に、東アジアの経済発展を考える際、「東シベリア・極東」の開発に力を入れ、アジア太平洋への統合を目指しておりますロシアとの関係の重要性についても、この際、指摘しておきたいと存じます。私はこの2月、サハリンを訪問し、「サハリン2プロジェクト」のLNGプラントの稼働をメドヴェージェフ大統領とともに祝福をしたところです。また先日、訪問されたプーチン首相とも、「東シベリア・極東」の開発について話をしております。ロシアは2012 年に、ウラジオストクでAPECを開催します。地域の安定と繁栄を築く上で、ロシアも重要なパートナーとなり得ると、私は考えています。そのためにも北方領土問題という、日露間の障害を取り除くため、全力を尽くす決意であります。


[国境を越える諸問題]
 
 さて、皆さん、第三に、国境を越える諸問題についてであります。
 アジアが持続的に成長を続けるためには、人々が安全に安心して活動できる環境が必要です。
 具体的には、保健・衛生、環境分野、更にテロ・海賊といった一国では対処できない、国境を越える問題への対応、更には朝鮮
 半島情勢など地域の安全保障問題に協力して対処する必要があります。
 本日は時間の関係もあり、(1)感染症、特に新型インフルエンザ対策、(2)地球の温暖化、(3)北朝鮮の問題、この3つについて、簡単に触れたいと存じます。
 
 先月、メキシコで発生した「H1N1」タイプの新型インフルエンザは、またたく間に世界中に広がりつつあります。現在、日本国内においても感染者が増えてきており、日本政府も全力で対応を行っているところです。
 日本は、新型インフルエンザに対するアジア諸国への協力として、初動で感染を食い止めるために、150万人分の抗ウイルス薬、120万人分の防護用品の備蓄支援を進めております。日本は、今回のメキシコに始まったインフルエンザのケースを教訓として活用しつつ、アジア全体での対応についても、今後、更に力を入れていきたいと考えております。
 
 次に、地球温暖化は、自然界災害の頻発や大規模化、あるいは国土の減少など、放置すれば必ず人類全体にはね返る深刻な問題であります。例えば太平洋では、ツバルなどの島国が海面上昇により国土水没の危機にさらされております。地球温暖化は、現に国家の存亡に関わる切迫した問題となっております。
 明日から北海道のトマムで、太平洋の13の国・地域の首脳の参加を得て、「太平洋・島サミット」が開かれますが、温暖化問題はその主要な議題であります。
 日本は、アジア、そして世界のために、「低炭素革命」もリードしたいと考えています。私は、日本で、太陽光発電、電気自動車、省エネ家電の普及のための大規模プロジェクトを開始をいたしております。
 「京都議定書」の弱点は、世界全体の排出量の30%しかカバーしていないという点です。この年末にデンマークのコペンハーゲンで開かれます「COP15」で、「ポスト京都」の枠組みが合意されますよう、現在、懸命な努力が世界中で続けられております。
 先日、私は、開催国デンマークのヘデゴー気候・エネルギー大臣にお会いしたときにも指摘をしましたが、新たな枠組みは、(1)すべての主要排出国が参加し、問題解決への十分高い野心を有すること、(2)経済成長やエネルギー安全保障とのバランスを取る必要であります。アジアの皆様と共に、この問題に全力を尽くしていきたいと思っております。
 
 地域の安全という視点から、北東アジアの安全保障環境は、御存じのように、残念ながら厳しさを増してきています。北朝鮮は、国際社会の声を無視して、核・ミサイルの開発を進めております。拉致問題の解決に取り組む姿勢も見せておりません。
 これらの問題を包括的に解決し、不幸な過去を清算し、「日朝国交正常化」を実現する、こうした我が国の考え方は変わっておりません。北朝鮮が国際社会の声に耳を傾け、真摯に対応することを願ってやまないものであります。六者会合は北朝鮮問題の現実的な解決の場であり、日本はその早期再開に向け、冷静に、米国、韓国、中国、ロシアと緊密に連携をしていきます。
 アジア各国の声も大きな力を持ちます。引き続きの御協力をお願いを申し上げる次第です。


[結語:安定し、反映したアジアを共に築く]
 
 さて、皆さん、私は「経済的繁栄と民主主義を希求する先に、平和と人々の幸せがある」、「Peace and Happiness through Economic Prosperity and Democracy」という考え方を政治的な信念としております。これは日本が戦後60年、平和国家として歩んできた道でもあります。
 個々人に「選択の自由」を提供し、社会の安定と繁栄を一層強固なものとする。アジアでも、そのような道を歩む国では、確実に国民の幸福は高まっていると思います。同じ道を歩み、努力する友人を、日本は応援していきます。
 
 「光は東方より」、「Light comes from the East.」。
 これは古代ローマの人々がオリエント文明を指して語った言葉です。この「東方」は、今日、世界の経済成長センターでありますアジアと置き換えられてもよろしいのではないでしょうか。「Light comes from Asia」、アジアがまず元気を取り戻し、そして、世界に広げていく。
 この言葉で、私の話を締めくくらせていただきたいと存じます。

 御清聴、誠にありがとうございました。


新型インフルエンザ対策本部-平成21年5月18日

http://www.kantei.go.jp/jp/kikikanri/flu/swineflu/index.html

真実の報道-23

平成21年5月18日、新型インフルエンザの国内における初めての感染が16日に確認され、その後も感染者が増大していることを受け、麻生総理は総理大臣官邸において、新型インフルエンザ対策本部会合(第3回)を開催しました。

 本日の会合では、新型インフルエンザの感染の現状と感染拡大防止対策の状況について共通認識を持つとともに、今後の対策について確認を行いました。

 会合で麻生総理は「国民の皆さんの冷静な行動をお願いを申し上げたいと思います。(閣僚の)皆さんには、国民が警戒を怠りなくかつ冷静な行動ができるよう、引き続き迅速かつ適切な情報の提供を行って国民の安心安全の確保に全力を尽くして頂きたい。」と述べました。



グローバルな課題を克服する日欧のパートナーシップ

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2574.html


カイテル・ドイツ産業連盟会長、
ナーゲル学長代行、
ボッセ・ベルリン日独センター事務総長、
ドイツ連邦議会議員の皆様、
ご列席の皆様、

 このフンボルト大学には、150年前に日本の指導者となるべき若者が、多く留学をいたしております。日本が、近代化の歩みを始めた時代の頃です。
 この由緒ある大学は、中欧の中心ベルリンにあって、そして時代の変遷を見つめてきております。戦争と平和、そして欧州の分断と統合。「壁」は、ちょうど20年前に、崩壊をしております。
 東西冷戦終結後、グローバル化した世界は、今、「百年に一度」とも言われる金融・経済危機を始め、大変難しい挑戦を受けております。歴史の荒波の次にあるものを見つめ続けた、この場所でお話する機会をいただきましたことは、大変光栄であって、これを設営していただきました皆様方に心から厚く感謝御礼を申し上げます。

 さて私は、今、世界では少なくとも、四つの大きな挑戦を受けていると思っております。(1)金融・経済危機、(2)気候変動、(3)テロとの闘い、そして、(4)核軍縮と大量破壊兵器の不拡散です。日本人に訊きましても、欧州の方々に伺っても、まず間違いなく、今申し上げたような四つの問題を、最重要の課題とお答えになると存じます。
 偶然ではありません。ユーラシア大陸の東端に立つ日本と、西の端に立っております欧州、人々は、同じグローバルな波にさらされているということだと存じます。日本と欧州は、グローバルな問題に取り組む、「能力と責任感」というものを有していると存じます。この荒波を乗り越えていくためには、日本と欧州のパートナーシップというものが、是非必要なんだと思っております。本日は、その挑戦に立ち向かう日・ヨーロッパの取組に触れて、本来これから未来に向けたパートナーシップの拡がりを、描いてみたいと思います。

(金融・経済危機) 
 まず第一の挑戦、現下の金融・経済危機の話であります。
 今回この危機の対応として、
 (1)まず、金融市場対策として、銀行システム、金融決済システムの維持のために、流動性の供給確保、そして金融機関への資本の注入、そして不良債権処理などを行うことが第一、
 (2)二つ目、それが終わりました次は、大規模な財政出動を通じて、景気を刺激すること、
 (3) そして先ほど会長がふれられましたように、1929年に起こりました世界の大恐慌の経験を踏まえ、決して保護主義に陥らない、保護主義に対抗すること、
 この三つが、ワシントン、ロンドンのG20サミットにおけます一致した意見であろうと存じます。
 90年代、正確には1992年以降、日本は名目金利は0%であっても、民間企業は市場で資金を借りない、簡単に言えば、市中に資金の借り手がいないという状況を経験しました。企業は、簡単に言えば、投資をして利益を増やすより、借金の返済、債務を最小化して企業の財務内容を良くする事を優先したため、投資はまったく増えませんでした金利がゼロでも企業は金を借りて設備投資をしないという状況が出現したわけです。銀行には巨大な返済資金がたまりました。そのため、政府が債務の形で資金を調達し、大規模な財政出動をすること以外、景気回復の処方箋はありませんでした。
 その間日本では土地を含めて、資産価格が80~85%暴落をしたのですが、政府の財政出動のおかげで日本のGDP約5兆ドル(500兆円)がそのまま維持されたのが日本の歴史です。日本はその教訓を活かして、今回の危機に対応するにあたって、財政の持続可能性というものに配慮しつつ、これまでに総額約1,200億ドルの財政出動を行っております。さらに、新たに約1,500億ドルの財政出動をいま実施に移そうといたしております。この新しい対策だけでGDP比約3%になります。一方、欧州も、経済回復プランを発動しておられます。今後とも、日欧は、意思疎通を蜜にして、適切なマクロ経済政策の運営をしていく必要があろうと思います。
 また世界的には、途上国や新興国といった中小国の、より脆弱な経済への支援が必要となってきていると思います。私は、昨年11月のワシントン D.C.でのG20サミットにおいて、IMFへの最大1,000億ドルの融資を表明し、各国にも同様の貢献を訴えました。EUは、これに呼応して、4月のロンドン・サミット直前に、1,000億ドルの融資を表明しておられます。日欧双方の努力が、IMFの資金基盤強化の道筋をつけ、これがひいては中小・新興国への経済、なかんずく資金の流動性支援になると思っております。

(「自由と繁栄の弧」と欧州) 
 私は、二年前、外務大臣しておりました時に、日本の外交方針として打ち出したことがあります。それは市場経済や、自由とか民主主義といった基本的な価値観を志向する、ユーラシアの国々を支援していく、「自由と繁栄の弧」という構想です。「経済的繁栄と民主主義を希求する先に、人々の平和と幸福がある」というのが、その基本的な概念です。Peace and Happiness through Economic Prosperity and Democracy. この構想に基づいて、日本は、改革に取り組む国々に協力と支援を行っているところです。
 例えばこのヨーロッパでは、グルジア、ウクライナ、アゼルバイジャン、モルドバから成ります、いわゆる「GUAM」と言う国々とは、投資、観光、そして貿易の促進を通じた、社会と経済の底上げというものを支援しております。また、スロバキア、チェコ、ポーランド、ハンガリー、「V4」(ヴィシェグラード・フォー)言われる国々に対しては、開発援助国としての役割を果たそうといたしております。日本は、これらの国々と、これまでの援助国としての、知見というものをの共有しております。経済的に苦しい時期にある今こそ、私はこのような協力、支援を強化していかなければならないと考えております。

(気候変動) 
 さて次に、気候変動に話を移させていただきます。
 京都議定書」というものの弱点は、はっきりしております。世界全体の排出量の30%しかカバーしていないという点です。ポスト京都の枠組みに、すべての排出国、なかんずく主要排出国を取り込むことが、日欧の共通の大目標だろうと存じます。現下の経済危機の中でも、気候変動問題への取組を緩めてはならないと考えております。過去1年間、エネルギー需給の逼迫があり、更に経済危機が訪れております。我々が得た教訓というものは、「環境対応」「経済成長」「エネルギー安全保障」の三つをうまくバランスさせなければならない、ということだと思います。
 新たな枠組みは、気候変動問題に資する、十分な高い野心というものを有するとともに、経済成長、エネルギーの安全保障とバランスの取れたものでならなければならない、そして、各国の責任と能力に相応しい、公平な目標を掲げたものでなければならないとも考えております。各国は、単に野心の高さを競い合うような「美人コンテスト」みたいなものに陥るのでなくて、野心の高さとバランス、そして目標の公平さの接点を探る真剣な話し合いを、日本とヨーロッパでリードしていきたいと思っております。
 私は、適切な政策が講じられれば、間違いなく環境への配慮が経済成長の足かせになるとは思っておりません。厳しい経済情勢の中、良い環境というものの追求は、むしろ経済成長への好機になり得ると思っております。日本は1973年石油危機と言われたとき、1バレル2ドルだった石油が1年間で6ドル、3倍に跳ね上がった時に、その石油資源のほとんどを輸入に頼っております日本は、経済的には終わるはずだったのですが、我々は省エネ技術を開発して経済競争の中で生き残る事に成功しております。鍵は、技術革新と思っています。今回も同様だろうと思っております。日本は、技術と創意で人々の生活を一変させる「低炭素革命」をリードする覚悟です。「クールアース・パートナーシップ」に基づいて、排出削減と経済成長の両立を目指す途上国に対して、日本の環境技術などを活用して支援をしていかなければならないと思っております。共に環境を柱として、成長を世界に拡げる低炭素社会というものを実行でき得る力と技術力、そういった意欲を持っているドイツというものに、我々は大いに期待をしているところでもあります。

(テロとの闘い) 
 三つめの挑戦は、テロとの闘いです。
 日本も欧州も、アフガニスタンの復興という歴史的な課題に力を注いでおります。私は、ドイツを含め多くの欧州の国々が、尊い犠牲を払いながら部隊の派遣を継続していることに対して、心から敬意を表するものであります。日本は、これまで、(1)アフガニスタンに対し500以上の学校を建築、もしくは修復し、(2)1万人の学校の先生を養成し、(3)そして、30万人の人々の識字教育を行い、(4)そして、のべ4,000万人に対するワクチンの供与等を行ってきました。
 また、8月に予定されている同国(アフガニスタン)の総選挙に向けて治安対策に万全を期すために、警察官8万人の半年分の給料を支給します。軍隊ではありません、警察官の給料の支給をやります。
 アフガニスタンは今、総選挙を迎えてまさに正念場に立っていると思います。アフガニスタンの再生の政治的な道筋は、2001年、このドイツで開かれたボン会合で決定されました。その数か月後、日本は東京で支援国会合を開催し、そこでアフガニスタンへの国際的な経済的支援の枠組みが決定されております。
 この日欧のパートナーシップは、今でも現場で生きていると存じます。アフガニスタンの各地方では、復興と治安改善を回復するためにNATOの地方復興チーム(PRT)が活躍をしておられます。日本は、ドイツをはじめ欧州各国が主導するPRTと協力をしております。日本は、リトアニアが主導する PRTに人を派遣をいたしております。インド洋では、日本の海上自衛隊が油や水の補給支援活動を行い、ドイツ、フランス、イギリスなどの欧州各国の艦船による対テロ海上阻止活動というものを支えております。
 アフガニスタンの問題というものは、アフガニスタンだけで解決するものではないと思います。アフガニスタン、イラン、中央アジアを含むより広範な地域の安定と、切り離して考えることはできないと思っております。イランとの協力は極めて重要と存じます。アフガニスタンと国境を接し、200万人のアフガニスタン避難民がイランに亡命しております。3日前、日本の中曽根外務大臣はイランに訪問し、アフマディネジャード大統領、モッタキ外務大臣と会談して、同国のアフガニスタンの安定に向けた取り組みというものも協議をさせたところです。
 日本はまた、4月17日に、パキスタンのザルダリ大統領を日本に招いて、パキスタンを支援するために国際会議を東京で開きました。パキスタンはアフガニスタンの東側の隣国であります。このパキスタンの安定、治安の回復というものは、これはアフガニスタンの平和回復に極めて密接な関係があります。パキスタンの安定はアフガニスタンの安定につながる、あの地域を考える時にこの観点は忘れられないと思います。幸いにしてザルダリ大統領、爆殺されましたブット元大統領候補の御真意ということになりますが、テロ対策、経済対策へ強い決意を示し、世界全体でこれを支援していくことに決定しております。日本は10億ドル、アメリカも10億ドル、欧州委員会が6億ドル等支援をし、結果として世界中から52億ドルの支援が表明をされておるところです。
 この地域の将来について、ひとつの構想を述べてみたいと思います。例えば、中央アジアからアフガニスタン、そしてパキスタンを経由してアラビア海に出る「南北の物流路」を整備することが重要なのではありませんか。交通状況は極めて悪い、というのが現状です。この地域と世界というものを海でつないで、そして、ともに栄える礎にしたいと考えております。日本は既に、その一部を成します道路と鉄道の建設を支援しております。このような支援にも、ぜひ欧州と一緒に取り組めればと思っております。

(核軍縮と不拡散) 
 四つめの挑戦は、核軍縮と大量破壊兵器などの不拡散の問題です。1か月前、アメリカのオバマ大統領は、チェコのプラハで、核兵器のない世界のために進むべき方向を力強く示しております。アメリカが核軍縮の話を先頭を切って言う、これまでになかった例だと存じます。原爆を初めて使用した国としての、責任の話も触れておられます。アメリカとロシアの首脳は、年内に新たな核軍縮の合意を目指すとしております。欧州でも、英国、フランスが自らの核戦力を引き下げるという努力を、透明性をもって進めようとしておられます。
 日本は、ご存知のように唯一の被爆国として、過去15年間、国連で核廃絶決議を提案し、圧倒的な支持を受けて成立をさせてきたところです。今、核軍縮に向けてかつてない機運が生まれてきていると思われます。
 もっとも、残念ながら、日本もしくは北東アジアを取り巻く安全保障は、逆に厳しさを増しているところがあります。北朝鮮は、国際社会の声を無視して核・ミサイルの開発に進んでおります。加えて、13歳の少女を含む無辜の日本の市民を北朝鮮に連れ去り、未だに帰還させない、拉致問題の解決に取り組む姿勢も今、見せておりません。
 中国の国防費は、20年連続して前年比で二桁の伸びを示し、その内容は透明性を欠いております。また、核軍備の近代化も進めております。
このような状況にあるからこそ、核軍縮を進め、不拡散体制というものを強化することが重要なのだと申し上げております。この点に関しましては一週間ほど前、中国・北京において胡錦濤国家主席、温家宝首相両首脳にそれぞれ、日本としての疑念を率直に申し上げてきたところです。欧州も長年、核戦争の恐怖というものに脅かされてこられております。世界全体の安定を維持しつつ、加えて「核兵器のない世界」を目指すというゴールに歩みを進める。今、開かれた歴史的チャンスというものを、欧州と一緒につかんでいきたいと考えております。

(新しい世界の運営) 
 世界が、困難な新しい挑戦に打ち勝つには、日欧、そして国際社会の力を結集する必要があります。その舞台について触れさせていただきたいと思います。
 国際社会の構造というものは、急速に発展する新興国をはじめ、明らかに変化をしてきております。ドイツは、ご存知のように2年前、G8と新興国との対話のためにハイリゲンダム・プロセスというものを立ち上げておられます。これは、新興国との共同責任を醸成するという重要な機会を提供されました。
 さらに、プロセスに参加するため中国、インド、ブラジル、メキシコ、南アフリカこの5ヶ国を加えた、より幅広い国々との連携を深める枠組みが、今生まれてきつつあります。
 (1)気候変動に関しては、世界の温暖化ガス排出量の80%を占めております「主要経済国フォーラム」(MEF)があります。
(2)また、現下の金融・経済危機に対応しては、昨年11月にワシントンD.C.で開かれました、そして先月はロンドンで開催されました、世界のGDPの約8割を占めております「G20」サミットであります。
 世界が直面する様々な課題については、G8だけでは対処できるわけではない、ということだと存じます。日本は、その責任を果たす意思と能力を有し、そのことを今述べた新たな枠組みを通じて示す国々と、行動を共にしたいと考えております。そうした中で、新しい時代の国際社会というものの運営につきましては、より良い方途を模索するということが重要なんだというように思っております。
 同時に日本は、G8の重要性というものは一層増していると思っております。G8は「民主主義」「市場経済」などの、共通の価値観を有していると思います。そしてあらゆる地球規模の課題の問題解決のために、責任ある貢献をしてきたのだと思います。開発やアフリカの問題などはその好例であろうと考えております。G8が中核になって新興経済国などとの対話を強化し、国際協調というものをさらに進めていく。私は、こういったアプローチが変動する国際社会の力を結集していく具体的かつ現実的な方法なのだと確信しています。日本は、それを具体的に可能にする方途を、欧州を含む国々と検討していきたいと思っております。
 国際社会の変化に対応する改革は、国連安全保障理事会についても実現する必要があろうと存じます。日本は、これまで10回、安保理非常任理事国を務めてきました。日本は、改革された安全保障理事会で、常任理事国として世界の平和と安全に関する問題に恒常的に貢献していくという決意であります。先の第二次大戦後、日本と同じように復興を果たし、そして国際社会で重要な地位を占めるに至っておりますドイツとは、安全保障理事会に向け共に歩みを一緒にいたしております。安保理改革の早期実現に向けて、引き続き欧州各国からも協力が得られることを期待しております。

(日欧の協力) 
 さて、世界はかつてない厳しい挑戦に直面しており、我々は歴史の分岐点に立っているのだと思っております。しかも、我々への挑戦は、最近のメキシコに端を発する新型インフルエンザのように、ある日突然に突きつけられるということもあります。
 未来を予測することは困難です。例えば、1979年、アフガニスタンにソ連が侵攻した時、誰が10年後ベルリンの「壁」が崩壊するということを予測した人がいるでしょうか。1941年、日本が第二次世界大戦にアメリカに対して突入した時、10年後日本とアメリカは日米安全保障条約を結ぶということを予想した人もいません。10年後20年後のことは何人も予測しえない、20世紀が人類に教えてくれた教訓の一つであろうと存じます。
 しかし私は、いかなる困難が、いかなる挑戦が我々を襲うことがあっても国際社会が、特に日本と欧州が結束して事に臨めば、「挑戦」という「壁」は打ち崩すことができると確信しております。なぜなら、日本と欧州の親和力というものはそれだけ大きいからだと思っております。
 日本と欧州は、ユーラシア大陸の西と東端に位置して遠く離れておりますが、様々な困難を乗り越えて来たという、長い歴史を持っていると確信しています。そして何よりも、双方は、同じ頂きを目指している、そう思っております。すなわち、(1)日欧共に個人の能力というものを開花させて、その努力が報われる自由な社会、(2)そして、歴史や文化、伝統というものに根付く、豊かな多様性というものを尊重しあう社会、(3)そして、競争と規制のバランスが取られて、個人が安心して生きられる社会といったものの形成だろうと思います。
本日お話ししましたように、日本と欧州との対話の絆というものは、様々な挑戦において、かつてないほど深まっていると私自身は思っております。
 歴史は、日本と欧州のパートナーシップの必然性を示していると思います。日本と欧州というものは、共に同じ頂きに向かって、共に歩んで進んでいく、この決意を表明し、私の話の締めくくりにさせていただきたいと存じます。

 長時間のご清聴誠にありがとうございました。


欧州諸国訪問-平成21年5月3日~6日

平成21年5月3日~6日、麻生総理は欧州諸国を訪問し、現下の困難な課題、特に経済危機、気候変動、喫緊の地域問題等を中心に意見交換を行いました。

http://nettv.gov-online.go.jp/prg/prg2531.html

真実の報道-20


平成21年5月3日、欧州諸国を訪問するため政府専用機で羽田を出発した麻生総理は、同日午後(現地時間)、チェコ共和国の首都プラハに到着しました。

 チェコ首相府において歓迎式典に出席した後、ミレク・トポラーネク首相と会談を行いました。両首脳は、チェコ、ポーランド、ハンガリー及びスロバキアからなるヴィシェグラード・グループ(V4)と日本との対話及び協力(V4+1)を一層進めることで一致し、5月末にベトナム・ハノイにて開催されるASEM外相会合の際に、「V4+1」外相会合を開催できるよう調整を進めることで合意しました。
 その他、気候変動、北朝鮮情勢、新型インフルエンザ等の世界的諸課題に連携して取り組むことで一致しました。
 会談後には共同記者会見を行いました。

【トポラーネク首相冒頭発言】

 麻生総理の訪問を歓迎。今次訪問を通じ、日・EU期首脳協議とともに、二国間の協議を行うことができうれしく思う。ロンドンで開催されたG20 サミットは、世界経済危機について協議することができた。本日もこの点につき議論した。現在日系企業の進出は247社で、その内訳は150社がサービス業、88社が製造業、3社が開発・技術分野。両国の貿易収支は不均衡であり、日本からの輸出がチェコからの輸出を大幅に上っている。理由は4つあり、第1にチェコの企業の水準が低く、高品質を求める日本での進出が困難であること。第2にチェコと日本の為替レートも関係。第3に非関税障壁も外すことのできない要素である。第4に第三国からの下請けも問題がある。それぞれの問題について議論した。
 先般、排出量について4000万トンの合意がなされたが、技術的な面での協力を進めたい。環境は我々にとって危機ではなく、ビジネスチャンスである。
 北朝鮮、アフガニスタン、中国については夕食会で話をしたいと考えている。
 

【麻生総理冒頭発言】
 
 ただ今、トポラーネク首相と、大変有意義な会談を行った。チェコがEU議長国として指導力を発揮されていることに、敬意を表した。その上で、今後、両国が、二国間関係、日・EU関係の双方で、幅広い協力をすすめていくことを確認した。
 会談の具体的な成果としては、まず経済面がある。現在の経済危機の中、多くの日本企業がチェコにおいて操業を続け、約4万人の雇用を創出していることを申し上げた。これは、両国間にとり、喜ぶべきことだと思う。
 また、日本のIMFの1000億ドルの融資が中・東欧地域の危機克服に役立つと期待する旨を表明。さらに、近々発行予定の日・チェコ社会保障協定により、両国の経済関係が一層発展することへの期待を表明。
 第二に、科学技術交流。両国の研究開発機関や大学関係者の参加により、過去4回開催されたシンポジウムである、「日・チェコ科学の日」の成果を踏まえ、両国の科学技術交流をさらに進展させていくことを確認した。
 第三に、チェコ、ハンガリー、スロバキア、ポーランドからなる「ヴィシェグラード4カ国」と日本との対話・協力を推進していくことについても一致した。「V4+1協力」は、自分が外務大臣の時に始めたものだが、日本と「ヴィシェグラード4」の外相会合を今月末にハノイで開催予定の「ASEM外相会合」の際に開催する方向で調整を進めたい。
 このほか、北朝鮮問題、新型インフルエンザ問題、気候変動などについて、緊密な協力を行うことを確認した。特に、気候については、今後、日本の優れた「省エネ・環境保全技術」がチェコで活用されることを期待している。


【質疑応答】
(問)
 北朝鮮問題に関し、両首脳に伺いたい。北朝鮮は、6者会合への不参加等反発を強めているが、両首脳の受け止め及び今後の両国の対応は如何。

(トポラーネク首相)
 北朝鮮については、もちろん日本と同様の考えである。距離的な点では日本の方が北朝鮮の核開発はより深刻な脅威となっている。我々は北朝鮮が国際的約束を果たすかを注視しているが、3月23日に平壌にてEU・北朝鮮の会合が開催された際には、6者会合の現状について懸念をEU側から強く伝えた。先般のミサイル発射の日にはちょうどオバマ大統領がチェコを訪問していたので、米とともに共同声明を発出した。北朝鮮については、日本にとっては二国間の問題としても考える必要もあろう。日本の拉致問題やいわゆる過去の清算も未解決である。結論としては、北朝鮮の核兵器プログラムは世界に対する脅威である。

(麻生総理)
 北朝鮮をめぐる問題の解決のためには、国際社会が一致して対応することが重要。これまで、チェコを含むEU諸国は、核・ミサイル問題や拉致問題を含む人権問題について、一貫して共同歩調をとって頂いており、評価。先日のミサイル発射への対応に際しては、チェコが、EU議長国としてEU諸国の連携に尽力して頂いた結果、あのように素早い対応となったと理解しており、深く感謝する。北朝鮮が、先日の国連安保理議長声明を重く受け止め、国連安保理決議を守り、国際社会の平和と安定を損なう行動を慎むことを、改めて求めたい。また、6者会合は、北朝鮮をめぐる問題を解決する上で、最も現実的な枠組みであると考える。以上は、国際社会全体の考えでもあり、日本としては、EUを初めとする関係国と緊密に連携して、問題の解決に取り組んでいきたい。

(問)
 麻生総理には、世界金融危機に対し、どのような経済対策を考えているか伺いたい。また、トポラーネク首相には、先程非関税障壁につき言及があったが、どのような経済対策を考えているのか伺いたい。

(麻生総理)
 90年代の金融危機後、日本は名目金利をゼロとしても、市中に借り手がいないという状況であった。企業は投資より債務の最小化をまず優先したため、投資は全く増えなかった。そのため、政府が債務の形で資金を調達し、景気の回復を図ることしか方法がなかった。これは日本だけが経験したことであり、 15年たった今、全世界が経験している。不況は60数年間の間、何回もあったが、日本はデフレーション下での危機を経験した戦後唯一の国である。
 このような90年代の経験を踏まえれば、現下の状況で必要なことは、基本的には不良資産処理と財政措置の2つ。日本は不良債権の処理が終わっているので、先月10日、1500億ドルの財政出動を決めたが、これはGDP3%の財政支出をやったということ。
 大事なことは、1929年の大恐慌の教訓から学ぶということである。1つは、自国の通貨を切り下げないことで、次に関税障壁を高くする等保護主義にならないこと、そして、ブロック経済に固まらないことである。

(トポラーネク首相)
 我々の政権が馬鹿馬鹿しい経済対策をおこなったとの批判は許さない。多くの国が経済危機への対策を考えている途中で、我々はすでに措置をとり、結果が現れている。経済対策委員会は、チェコにおける失業率が変わらないとのデータを分析した。両国は異なる経済状況のもとにあるが、同じ対応をとっていると期待。日本とチェコ双方が参加する形で、非関税障壁に関する会合を年2回開催しており、企業がスムーズに活動を行える環境ができるように協議しているが、かなり時間がかかっている。日・EU定期首脳協議において、同問題が解決されることを期待。チェコ企業の日本進出については、効率的に行えるよう分析が必要。チェコ企業の競争力の低さがその一因であるということもあるが、言葉、文化、取引の費用等両国の間には非関税障壁があり、合理的にどのように解決できるのかはテーマの一つである、具体的問題に一つずつ向かい合って第二のステップに進まなければならない。

欧州諸国訪問2日目(欧州連合(EU))


真実の報道-21


平成21年5月4日(現地時間)、チェコ共和国を訪問中の麻生総理は、大統領府(プラハ城)において、第18回日・EU定期首脳協議に臨みました。EU側からはチェコ共和国(EU議長国)ヴァーツラフ・クラウス大統領及び欧州委員会ジョゼ・マヌエル・ドゥラン・バローゾ委員長が参加しました。

 協議では、日・EU関係やグローバルな課題、地域情勢などについて議論されました。
 日・EU関係では、世界が多くの困難に直面する中、日・EUが共同でリーダーシップを発揮していくことで一致しました。また、「日・EU協力のための行動計画」が2011年に終了するのを受け、次の新文書の策定に向け検討を開始することで合意しました。さらに、新たな日・EU経済関係強化の方向性を打ち出せるよう、今後1年間かけて検討していくこととなりました。
 グローバルな課題では、世界経済・金融危機に関し、ロンドン・サミットのコミットメントを再確認しました。気候変動については、米中等全ての主要排出国の参加を確保した次期枠組み合意形成に向け協力していくことを議論しました。新型インフルエンザ対策に向け国際社会の一致した取組が重要であり、EUとも必要に応じ情報交換等の協力を行っていくこととなりました。
 地域情勢では、中国・北朝鮮、アフガニスタン・パキスタン、イラン、中東和平、海賊等、主要な地域情勢につき幅広く意見交換を行い、北朝鮮の核・ミサイル問題解決への協力、中国に対してより責任ある建設的役割を求めていくこと、イランに対する粘り強い働きかけの必要性等、幅広い問題で一致しました。
 午後には日・EU共同記者会見を行うとともに、共同プレス声明を発出しました。

 その後、ヒルトン・プラハ・ホテルで「エネルギーと環境分野の包括的協力に関する日・チェコシンポジウム」に出席された後、第一次世界大戦戦勝記念碑を訪問し、献花しました。

 夜、プラハを出発した麻生総理は、次の目的地であるドイツ連邦共和国の首都ベルリンに到着しました。


【クラウス・チェコ(EU議長国)大統領冒頭発言】
 チェコ政府を代表し、「トロイカ首脳協議」を日本と開催できたことを嬉しく思う。EU議長国を代表し、麻生総理の来訪を歓迎。
 日・EUの定期首脳協議は、今回18回目となる。昨年4月の前回協議を基盤とし、また4月のロンドン・サミットの議論の上に立って、議論した。
 我々は、現在、世界史の中の重要な時にある。政治的、経済的な変化がある。日本との間で双方についての重要な議論ができた。
 日本は、EUにとり、最重要のパートナーの一つ。今回の協議を通じ、これを示すことができたのをうれしく思う。
 麻生総理が述べられたとおり日・EUのGDPの計は、世界の4割を占める。いかに我々首脳間の協力が重要か、が分かる。
 日・EUは、政策対話を推進。EUの外交活動、開発援助、貿易自由化交渉等の幅広い分野で、日本との協力は存在。
 双方は、互いの立場を理解し、様々な課題で同じような立場をとっており、さらに未来に向けて協力を進めていくことに双方が関心を示している。

【麻生総理冒頭発言】
 本日、クラウス大統領、バローゾ委員長との間で、大変有意義な協議を行った。本日の、大変広い範囲に及んだ協議の成果について申し上げる。
 まず、新型インフルエンザ発生に対しては、国際社会の一致した取り組みが必要。EUとしてもその取組を懸命に進めているとのことであり、日・EU間で連絡を緊密にとっていくことで、一致した。
 経済・金融危機への対応については、先般のロンドン・サミットでの合意を迅速かつ着実に実施すべきということで国際社会が協調して対応する必要性を改めて確認した。
 私からは、1,500億ドルの財政出動を含む日本の新たな経済対策を説明した。その上で、引き続き日本とEUが、緊密に協力していくことを、確認した。
 気候変動については、COP15において、米国、中国などのすべての主要排出国、経済国の責任ある形での参加を確保することが重要。公平、かつ実効的な「次期枠組み」合意を形成するべく、日本とEUの間で、引き続き協力していくことを議論した。
 また、北朝鮮を含むアジア情勢、アフガニスタン・パキスタン、中東和平、イラン、海賊対策、といった主要な地域情勢についても、意見交換を行った。
 北朝鮮情勢については、ミサイル発射を非難し、今後とも、核、ミサイル、拉致問題を含む人権問題、といった諸懸案の解決に向け、双方が協力していくことで一致した。
 アフガニスタン・パキスタン問題については、私より、先般日本で開催した「パキスタン・フレンズ会合」及び「支援国会合」の成果を説明した。その上で、日・EUが、地域を一体として捉え、アフガニスタンとパキスタンを積極的に支援していくことで一致した。
 これらの成果は、今回発表する「共同プレス声明」に盛り込まれており、EUとともに、このような成果を発表できることをうれしく思う。
 日本とEUは、ご承知のように基本的価値観を共有し、幅広い分野でいろいろ協力を進めていくことができる戦略的パートナーであると考える。
 今回の協議の成果を踏まえ、日本としては、EUと、国際社会が直面する主要課題の解決に向け、緊密に連携し、その問題の解決に貢献していきたいと考える。

【バローゾ欧州委員長冒頭発言】
 本日の協議が成功裡に行われたことについて、麻生総理、クラウス大統領に感謝。質が高く、オープンな形で議論を行うことができた。日本は、EUにとり、戦略的パートナーの一つであり、重要な価値、原則を共有している。
 日本とは、グローバルな関与を行い、共に、世界においてリーダーシップを果たす役割を持ち、そうする責任を有している。国際社会における二つのキープレイヤーとして、金融危機、成長回復、世界の経済成長等、引き続き取り組んでいきたい。
 日本とは、G20プロセスでも協力してきた。またG8サミットに向けても協力している。気候変動については、日本は、京都議定書以降、責任ある役割を果たしてきた。我々は、現在の(危機)状況が、取組を緩める言い訳としてはならず、次期枠組みの構築に向けて引き続き取り組んでいく必要がある。EUと日本は、MDGsの達成、WTO、特に開発に優先度を与えること、でも共に役割を負っている。
 EU・日本のバイラテラルの関係では、市民に大きな影響を与える進展があった。研究開発、航空、金融、司法等での具体的成果である。また双方の緊密な経済関係の深化には潜在力があり、すでに整備されている対話の枠組みを活用していきたい。
 国際的な問題も議論ができた。北朝鮮に関しては、最近の挑戦的な行為、決定を再考し、また国連安保理議長声明に従って、行動を再考すべきである。パキスタンについては、東京で行われたパキスタン支援会合等は重要であり、この地域での取組を引き続き進める必要がある、インフルエンザの問題については、リスクを過小評価しているわけでなく、事態は深刻ではあるが、我々は十分な準備ができており、懸念を持ちつつもパニックになってはならない。パートナーとの協力は当然必要である。
 日本は、グローバルな関与を進める友好国であり、引き続き関係を強めていく。

【質疑応答】
(問)
 経済危機の克服に向けた取組で、日本とEUは、財政出動などへの対応をめぐって、意見の食い違いが指摘された場面もあったが、こうした違いは埋められているか。

(麻生総理)
 日本とEUは、共にロンドン・サミットにおいて、成長を回復するため、必要な規模の継続した財政努力をとっていくことで合意し、本日の協議でも、ロンドンでの合意を互いに迅速に履行することで一致した。日・EU共に、十分な景気刺激と不良債権の処理が、共に重要であるとの点で一致している。従って、双方の間に食い違いがあったとの指摘は当たらない。

(バローゾ委員長)
 麻生総理の発言に完全に同意する。現状についての見方、分析、評価すべてで一致があった。むしろロンドン・サミットに向けては、日本のイニシアティブ、特にIMFへの融資があり、EUも重要な貢献をし、良い協力があった。グローバルな需要を支えることは重要である一方、欧州の各国がおかれた状況も様々である。中長期的には持続可能性ということにも関心を持っており、当面は未曾有の危機であり、需要を支える一方、経済の健全性のため、適切な取組が重要である。

(問)
 クラウス大統領は、気候変動に独特の見方を有しているが、協議でのやり取りいかん。

(クラウス大統領)
 10を超える多くのテーマを取り上げたため、気候変動の議論は一般的なレベルのものであった。この範囲で、自分としては受け入れ可能な議論であった。

(麻生総理)
 日本と欧州は、低炭素社会の構築の重要性を早くから認め、リードしてきた。次期枠組みについては、日本としては、米国、中国、ロシア、インドなどの主要排出国、経済国が参加することが必要と考えている。その上で、日・EUが実効的なものを作っていくことが重要である。COP15では野心的、公平、実効的な枠組みを構築すべく、協調していく必要がある。

(バローゾ委員長)
EUの立場に変わりなく、また、明快である。プレス声明にも記されており、この内容を我々としては歓迎し、満足している。

(クラウス大統領)
 個人的には人為的な気候変動は存在していないとの立場である。他方で、エネルギー効率を高めていくことを支持している。この面で日本がなし得ることは多く、協議の議論は、受け入れ可能なものであった。

(問)
 約1か月前、このプラハの地で米国のオバマ大統領が核兵器のない世界を目指す演説を行った。日本、そしてEUは、どう受け止め、核軍縮に向けて具体的にどのような行動を取っていくのか。

(麻生総理)
 日本は、核兵器がもたらしうる惨禍を、客観的事実をもって伝えていく役割を果たせる唯一の国。15年にわたり、国連で核廃絶決議を主導するなど、核軍縮外交を積極的に推進。もっとも、北朝鮮の核・ミサイル開発、中国による核軍備の近代化など、日本を取り巻く北東アジアの安全保障環境は、厳しさを増している。こうした状況だからこそ、核軍縮の促進、不拡散体制の強化が重要。来年のNPT運用検討会議を成功させることが必要。そのため、日本は、すべての核保有国による核軍縮措置、国際社会全体による軍縮不拡散についての措置、原子力の平和利用のための措置、について、具体的な提案を行ったところ。国際社会の一致した取組を生み出すことが必要であり、来年の早い時期に、「2010年核軍縮会議」を日本にて開催する。世界の安定を維持しつつ、「核兵器のない世界」というゴールに向けて、国際社会の具体的取組を粘り強く後押ししていきたい。

(クラウス大統領)
 オバマ大統領は、ここから100mの距離で当該演説を行った。我々としては、米国のイニシアティブを意味ある形で支えたいと考えている。本日の協議では、北朝鮮、イランの問題に関連してこの問題を扱った。北朝鮮については、日・EUの立場は類似の立場をとっており、現状評価及び今後の方向性についても同様である。イランについても詳細に議論を行った。

(問)
 エネルギー効率の向上のために日・EU間で、日本の技術の活用など、具体的な協力はあるのか。

(バローゾ委員長)
 本日の協議の結論の一つに、日・EC科学技術協力協定の進展がある。これは双方にとって重要なプロジェクトであり、引き続き進めていきたい。麻生総理からは、気候変動、エネルギーに関する議論の中で、日本の技術について説明があった。具体的な協力について、日本の技術の活用の可能性については、基本的には商業ベースの事柄であるが、公的レベルでは、情報交換等を進めていくこととなろう。科学技術協力の分野において、エネルギー関連は、最重要分野のひとつである。

(麻生総理)
 例えば、日本はチェコから4千万トンの排出権を購入し、これと共に、環境協力を行うこととしている。日本の技術が活用され、火力発電所の改修等を通じ、結果として、日本の技術がエネルギー効率の向上に貢献することが期待される。


欧州諸国訪問3日目(ドイツ連邦共和国)

真実の報道-22


 平成21年5月5日(現地時間)、ドイツ連邦共和国を訪問中の麻生総理はベルリン市内のフンボルト大学で、ドイツの政財界関係者を前に、日本と欧州の対話と協力の強化をうたった政策スピーチを行いました。スピーチの中で麻生総理は、世界が「金融・経済危機」、「気候変動」、「テロとの闘い」、「核軍縮と大量破壊兵器の不拡散」の4つの大きな挑戦に直面していると述べました。

 午後にはドイツ首相府において歓迎式典に出席した後、アンゲラ・メルケル首相と会談を行いました。それぞれアジアと欧州において最大の経済規模を占め国際社会に大きな責任を有する日独両国が、世界金融・経済危機、気候変動問題等、国際社会の重要課題における一層の連携を確認する機会となりました。

 世界経済・金融危機では、両国首脳は日独が互いに力を合わせ、ロンドン・サミットの合意を着実に実施し、難局を乗り切っていくことで一致しました。
 気候変動では、両首脳は、我々の世代が責任を持って解決への道筋をつけるべきとの認識で一致。また、麻生総理から、COP15における公平かつ実効的な次期枠組み合意に向け、(1)排出量の多い主要途上国も義務を負う必要があること、(2)日独を含む先進諸国が一致団結して取り組む必要があることを強調しました。
 新型インフルエンザ対策では、国際社会が一致して対応している新型インフルエンザの発生については、国際協調が重要との認識の下、日独でも協力することで一致しました。
 会談後には共同記者会見を行いました。

 その後、麻生総理はホルスト・ケーラー大統領を表敬訪問しました。ケーラー大統領より麻生総理に対し、訪独への感謝・歓迎の辞と併せ、世界第2の経済大国の首脳として、現下の世界金融・経済危機に対する麻生総理の見方及び日本の対応について伺いたい旨述べられました。麻生総理は、今月下旬の独大統領選挙を控えた大事な時期に表敬の機会を得られ感謝する旨述べるとともに、15兆円規模の「経済危機対策」等、これまでの日本の取り組みを紹介するとともに、財政の持続的可能性を確保する必要性等についても触れました。

 夜、3日間の欧州諸国訪問の日程を終えた麻生総理は、ドイツから帰国の途につきました。


【メルケル首相冒頭発言】

 麻生総理の訪問を歓迎する。これまで様々な機会で、最近では世界経済・金融危機に関するロンドン・サミットの際にお目にかかった。本日は二国間関係について意見交換する機会を得た。日独両国の関係は非常に良好であり、様々な分野で緊密な協力が行われている。特に、両国はテクノロジーの分野で優れた技術を有しており、気候保全に資するグリーン・テクノロジーの分野で今後一層協力していけると思う。
 ロンドン・サミットでは、世界金融秩序の再構築について議論が行われたが、本日の会談でも、このような危機を将来いかにして予防すべきかについて意見交換した。このような意見交換を、本年イタリアで行われるG8サミットや、今秋に予定されている第三回世界経済・金融サミットの場で継続していきたい。我々は、経済を再び軌道に乗せるため、あらゆる手段を取るつもりである。その一環として、銀行の不良債権処理の問題や、景気対策パッケージが重要であり、この点で日独の立場は一致している。また、景気対策が効果を発揮するためには、自動安定化装置(オートマティック・スタビライザー)も重要である。
 ドイツの内需は安定している。輸入額は増加傾向にある。ドイツの国内市場が好調なことは、日本を含む諸外国にとっても利益をもたらしている。
 国際情勢では、北朝鮮問題に関し、六者会合を継続していくことが重要との点で一致した。また、国連安保理改革に関し、日独両国は常任理事国入りを目指してこれまで協力してきているが、今後も互いに協力しながら進めていくことで合意した。
 終わりに、本日の会談では、麻生総理との間で有意義かつ具体的な意見交換を実施し、それぞれの国の状況をよく理解することができた。今後も国際場裡において協力していきたい。


【麻生総理冒頭発言】

 まず、今回の私のドイツ訪問に際して、メルケル首相をはじめとしたドイツ政府の歓迎と配慮に感謝申し上げる。ただ今、メルケル首相と大変有意義な会談を行った。日独両国は、それぞれアジアと欧州において最大の経済規模を占め、国際社会に大きな責任を有している。会談では、現下の世界的な経済危機、気候変動などへの対応を含め、世界の安定と繁栄に向け、日独の連携を一層強化することで一致した。
 世界経済・金融危機に関しては、日独が引き続き力を合わせ、ロンドン・サミットの合意を着実に実施し、難局を乗り切っていくことで一致した。私からは、現下の状況で必要なことは、不良資産処理と、財政出動を通じた景気刺激策であることを説明した。その上で、今後の対応について率直な意見交換を行った。
 気候変動については、我々の世代が責任を持って解決への道筋をつけるべきとの認識で一致した。また、私から、公平で実効的な2013年以降の国際的な次期枠組みの合意に向け、(1)排出量の多い途上国も義務を負う必要があること。(2)日独を含む先進諸国が団結して取り組む必要があることを強調した。さらに、低炭素社会の実現のため、日独がエネルギー分野で世界を牽引すべきことで一致した。
 現在、国際社会が連携して対応している新型インフルエンザについて、日独でも協力することで合意した。
 国連安保理改革については、メルケル首相からも話があったように、日独両国が改革の早期実現を目指し、引き続き連携して推進していくことを確認した。
 その他、北朝鮮、アフガニスタン・パキスタン等の地域情勢についても有意義な意見交換を行った。
 今回の会談の成果を踏まえ、日独間の連携・協力を一層強化していきたい。


【質疑応答】
(問)
 メルケル首相に伺います。メルケル首相は、国民を抑圧している今の北朝鮮の体制について、その正当性等どう考えるか。

(メルケル首相)
 ドイツの歴史的経験に鑑みても、人間の自由を奪うあらゆる体制は受け入れられるものではなく、状況が改善することを望む。また、北朝鮮と韓国の関係が進展することを望む。ただしその前提となるのは、民主主義という原則に則って、ということである。まずは、国連安保理決議を北朝鮮に遵守させることが重要である。六者会合を継続していくべきであり、独は引き続き六者会合を支援していく。


(問)
 麻生総理に伺います。イランに対する日本の立場を伺いたい。イランとの直接対話実施に同意するか。

(麻生総理)
 イランはアフガニスタンの隣国であり、同国には200万人ものアフガニスタン難民が流入していると承知。アフガニスタン問題解決のためには、隣国であるパキスタン及びイランの協力が不可欠である。これが日本の見方である。イランに関するもう一つの重要なテーマは核開発問題である。イランは国際的孤立を深めているが、日本とイランの間には、これまで築き上げてきた独自の二国間関係がある。先日、モッタキ・イラン外相が、東京で行われたパキスタン支援会合に出席するため訪日し、また、中曽根外務大臣がイランを訪問し、アフマディネジャード大統領等と会談を行った。これらの機会をも通し、日本は国際世論の声を同大統領に届ける努力を続けている。


(問)
 メルケル首相に伺います。麻生総理は、現下の経済危機を乗り越えた後には消費税を引き上げる旨明言しているが、なぜ独は同様の対策を取らないのか。

(メルケル首相)
 現下の危機を乗り越えるために重要なことは、人々が将来に明るい展望を持てるよう勇気づけ、希望を与えることであるが、増税は今後の経済回復達成へのモティベーションを高めるものではない。2005年に大連立政権が成立した当時、独の年金・社会保障システムは多額の赤字を抱えていた。しかし、その後好調な経済に支えられ、雇用が増えたことから、この問題は解決した。現下の世界金融・経済危機を乗り越えた後は、成長を確保し、持続可能な経済基盤を確立することが重要であり、その際には中所得層の負担を軽減する必要がある。累進税率そのものは悪ではないが、中所得層に過重な負担をかける累進税率は見直す必要がある。今回の危機を通じて自分が重視する哲学的方針でありメッセージは、「頑張った人、平均以上に努力した人は、国内にひきとめ、ねぎらうべき」ということである。


(問)
 両首脳に伺います。アフガニスタン・パキスタン問題は、地域という視点から包括的な取り組みが求められていると考えるが、今後日独両国はどのように協力関係を進めていくつもりか。

(麻生総理)
 まず、アフガニスタンについては、8月に大統領選挙が予定されており、これが自由、公正に実施されるよう注視している。日本は、この選挙がうまくいくために、アフガニスタンの全警察官8万人の半年分の給与に相当する支援を行っている。また、ドイツもアフガニスタンの治安能力向上のため、多大な犠牲を払いながらも努力を行っていることを高く評価している。初めてのアフガニスタン支援会合は、2001年にボンで開催されたと承知している。また、中長期的に考えればパキスタンへの支援も重要であり、パキスタンに関し、先日東京で開催した支援国会合では、日本の最大10億ドル、ドイツの1.1億ユーロの支援を含め、予想を上回る約52億ドルの支援表明があった。お金を集めただけでなく、そのお金を使ってきちんと支援を行っていき、この成果をパキスタンの安定につなげて行くべく、日独両国で引き続き緊密に連携していきたい。

(メルケル首相)
 すでに麻生総理が言及されたとおり、アフガニスタン・パキスタン問題に対する日独の立場には共通点が多い。すなわち、復興支援と軍事面の措置を上手く組み合わせることが重要であり、日本の努力を高く評価する。また、同問題解決のためには、地域の視点から考える必要があるという点も共通しており、日本がパキスタン支援会合を主催したことに感謝している。私自身最近もパキスタンとの協力を深めるべくパキスタンの首相と電話で話している。独は2007 年にG8議長国としてアフガニスタン・パキスタンとの協力を強化し、両国が協力するきっかけを作ったが、両国の積極的関与が重要という点では日本の立場も同じである。独はアフガニスタン警察及び軍の訓練に力を入れている。アフガニスタン人が自らの手で治安を守れるよう支援していくことが重要である。カルザイ大統領は11日に再び訪独するので、その機会にアフガニスタンの軍・警察の支援やアフガニスタン自身の自助努力等について詳細に話す予定である。


(問)
 麻生総理に伺います。世界経済危機克服に向けたドイツの努力は十分といえるか。

(麻生総理)
 ドイツは国内で難しい事情がある中で、積極的かつ迅速な経済対策を実施されていると承知している。特に、スピードという点では、我が国よりも早い段階から動いており、高く評価している。


(問)
 麻生総理に伺います。経済危機の影響で自動車産業が打撃を受けている。独の国内ではオペル救済が目下の話題であるが、本問題に日本が今後より関与を強めていくつもりはおありか。

(麻生総理)
 日独両国にはそれぞれ複数の世界的な主要自動車メーカーの本拠地があるが、そのような国は他にあまり例を見ないと思う。オペルの現状については、正直なところ、あまり詳しく承知していない。ただ、日本の自動車メーカーがオペルに積極的に関与しようとか、逆にオペル側から日本の自動車メーカーに対して特別なオファーがあったということも聞いていないので、ご質問にお答えすることはできない。ただ、日本もドイツの例にならい、車の買い替え支援策を4月1日より導入し、エコカーを購入したら10万円、13年以上の古い車を廃車して買い替えたら25万円の支援を行うこととした。これは、自動車産業への支援と、環境・気候変動対策を組み合わせた政策であり、ドイツのアイデアを参考にさせていただいた。