誤解を恐れずに言うと、この発表にこれほどまで心が搔き乱されるとは思っておらず、買い物に出かけていたのだが、体から力が抜けてしまい、何もせずに引き返してきてしまったよ。
高畑志帆 退団
ピッチの外ではあまり前に出るタイプの選手ではなかったが、7年という月日の中での様々なシーンが次から次へと思い出され、とても語り尽くすことが出来ない。
ピッチの中からスタジアム全体に響き渡る声。
スッと背筋を伸ばした姿勢から右手で選手やポジションを指し示しながら、「出ろ」「イケ」「戻れ」「変えろ」という激に近いコーチングの声を張り、逆に「ナイスボール」「ナイストライ」という前向きに鼓舞する声もかけることが出来る。
ビルドアップでは落ち着いたボールさばきから時折鋭い縦パスや矢のようなサイドチェンジを送り、守備では球際の激しさ、ギリギリで足を伸ばすタックル、空中戦でガツンと体を当てながら跳ね返すヘディング、そして体全体を投げ出すシュートブロックに何度救われたことか。
それから何といってもセットプレーからのヘディングは大きな武器で、打点の高い豪快なシュート、競り合いでバランスを崩しながらも体幹の強さでねじ込むシュート、低いボールに体ごと飛び込むダイビングヘッドなど、印象に残る素晴らしい得点を挙げ、また雨の中で試合終盤にセットプレーから叩き込んだり、同じく終盤に守る側のセットプレーから高速カウンターでスプリントして豪快なダイビングヘッドを決めたりと、勝負強い得点で歓喜させてくれた。
そして得点後には必ずスタンドに向かってガッツポーズしてくれ、その格好良さに何度も痺れさせてもらった。
2018シーズンは怪我がちでベンチを温めることも多かったが、時にはベンチやウォーミングアップゾーンからでもまるでピッチ内にいるのではと錯覚する様な声が聞こえてくることもあり、味方の得点にベンチから一番最初に飛び出してくるのも高畑だった。
誇張した褒めすぎの表現に感じるかもしれないが、一つ一つのシーンが本当にリアルに、そして鮮明によみがえってくる。
”闘将”という言葉はサッカー選手のプレースタイルを形容する一つの呼び名となっているが、実は男女を問わずその称号を与えられている選手は多くない。
しかし高畑志帆は紛れもなく浦和レッズレディースの闘将であり、これからも歴史に刻まれ続けるだろう。
振り返ると改めて存在感高く、頼りになる選手だったと感じ、来たるべきシーズンに高畑がいないというのが信じられない。
退団のコメントを読むとぐっときて、選手が「誇りに思う」と言ってくれることこそが我々の誇りではないかと涙腺が緩んでしまう。
"死ぬまでサッカーに関わりたい”という夢のためにはいろいろな環境で経験を積むべきで、もし選手としてあと二つ、三つと冒険をするのなら、年齢的にみてもこの旅立ちを後押ししてやらねばと思う。
そして願わくば”死ぬまでサッカー”の道の途中で、また浦和に戻ってきてもらいたい。
7年間もチームを引っ張り、支え、そして我々を熱狂させてくれたことに感謝する。
ありがとう。