主人公:マリ…思ったことが顔に出る普通のOL
占い師:愛子…マリの師匠的な存在。男好き。
「そうよ、詳しく聞いてみたら過去の記憶に遡れるらしいの。過去っていっても生まれる前からよ」
私は唖然としてしまった。
何でそんな怪しいものを信じて飲もうと思ったのか。
薬を飲んで生まれる前の世界を知ることができるなんて普通はありえない。
しかしその反面、どうなったかを知りたい好奇心もあった。
まあ愛子さんが実際今生きているのだから問題ない薬なのだろうと想像はできる。
それにしても…。
「その薬を飲むと一瞬にして記憶を失ったの。でも気が付くと知らない世界にいたわ。フワフワっとした自分がいたの。そこは心地よく、いるだけで楽しい世界だったわ」
「天国ですか?」
あり得ない話と思っていながらも、何故か聞いてしまっていた。
「わからないわ。でも形はなくフワフワと心地いい世界は間違いないの。生まれる前の自分だなとは何となくわかったわ。でもしばらくすると、私を呼んでいる声が聞こえてきてたの。そしてあるものを渡されたの」
「あるもの?」
「それには、『定禅寺 愛子の一生』と書かれていたの」
愛子さんの一生のマニュアルなのかな、でもそうであれば人間の一生って決まっているものなのか、などが頭によぎった。
「よくわからなかったけど、それは自分の名前なんだろうなと思ったの。そしてどこかに行くのだろうと。愛子だけど、まだ愛子ではなかったの。何も定まっていない自分がいたの。」
不思議だけど、何となくその状況が浮かんできた。
「私は自分の一生を記憶して、正確には心に刻み込んだっていうのかしら。そして自然の流れのごとく私はある入口に入っていったの。おそらく母親の子宮に通じる道だと思うのだけど。でもそこからが大変だったわ」
「大変だったんですか?」
「そうよ、人間として生まれてくるってこんなに大変なんだと。何もかも自由な世界から、縛りがある世界へ移ってきたわけだから、すべてが大変。でも面白い世界へ来たってこともわかったの。この世の仕組みがわかるとこの世界は面白いわよ」
何かすごい知りたい話であり、自分の生まれてきた理由がわかるかもしれないと思った。
でも半分本当なのかという疑問も同時にあった。
愛子さんは私の心をさとったのか
「どお?私の話信じてる、興味ある?もしくは疑わしいかい、興味ないかい?」
すぐに返事をしないイコール信じてないと思われたのか
「まあ、すぐには信じないよね。でも興味はあるよね」
「…きょ、興味はあります。ハッキリ言いまして自分のモヤモヤを取りたいと思っていますし、おそらくですが、愛子さんの話を信じればそのモヤモヤが取れるとなんとなくわかるのです。でも…」
「まあ、マリの反応が普通だと思うよ。私は半分自棄だったからすぐに行動に出てしまったけどさ」
しばらく沈黙が続いた。
こんなに音のない世界があるのかと思うくらい静寂が。
「マリ、あんたもう一度メガネかけてみな」
言われるがままにもう1度メガネをかけてみた。
そのには同じように何もない世界が映し出された。
辺りをキョロキョロしていると、
「マリ、こっち向いてごらん」
愛子さんのほうを向くと何かフワフワっとしたものが映っていた。
それは白いフワフワっとしたものが空中に浮いている。
わたあめまでハッキリしているものではなく、
雲に近いものだろうか。
まわりには何も映っていないが、
このフワフワしたものだけが目の前に映っている。
「えっ!なに?これ…」
「フフフ、これが私だよ」
このフワフワっとしたものが、愛子さんなのか。
「それに、何か気づかないかい?」
何か愛子さんと喋っているようで喋っていないような。
言葉を喋ろうとするのではなく心で通じ合っているというか。
でも言葉は通じ合っているのはわかる。
「これが本当の私の姿。別に私だけがこういう姿ってわけじゃないよ。そのまま外に出ればわかるけど、人間本来はこういうフワフワっとしたものなの。そしてもう1つ、私たち喋ってないでしょ。でも通じ合っているでしょ。本来は言葉ではなく心で通じ合っているものなの」
何が何だかわからず、メガネを外してみるとそこには愛子さんがいた。
もう1度メガネをかけてみると愛子さんがいたところにはフワフワっとしたものがいる。
同じ行動を何回も繰り返していると、さすがに愛子さんも我慢できずに
「もういいだろ、一旦メガネを外しなさい」
ハッと我に返ると、そこには愛子さんがいた。
「どうだい、信じる信じないではなく現実だってことを受け入れなさい」
受け入れろって言われてもね。
でも目の前では間違いなく起こっていることだし。
夢じゃないよね…。
ベタなことだけど頬っぺたをつねってみた。
うん、痛い。
ということは…、やっぱり現実!?
続きは第5話で!
それではまた次のブログでお会いしましょう。
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