alone, together.
その夜は、暑くもなく寒くもなく、星も出ていなかった。まるで初めて出会ったかのようにぼくたちはどちらからともなく手をつなぎ、どちらへともなく歩いた。
「あんた、めんどくさいねー」
「ごめんね」
「まあ、いいけど」
広い道に出る曲がり角で、ぼくは左に、彼女は右に行こうとした。彼女の右肩とぼくの左肩が軽く触れ、そのことがぼくたちだけの秘密の合図のように思えて、素早く抱き合った。その様子をぼくたちは、少し離れたところからコマ送りで眺めても、いた。
「あかんあかん」
「あ、ごめん」
さっきまで一緒に楽しんだ音楽の熱が、彼女の首筋に少し残っていた。ぼくはそこに自分の首筋を重ね、両腕に力を込める。
「ぐるじー」
「あ、ごめん」
彼女の尖った靴の先がぼくのふくらはぎにコツン、と当たる。
いったい、この社会とかいうものとぼくの感情にはどんな関係があるのだろうか。社会の内側にぼくの感情があり、ぼくの感情の内側に社会があるのか。ではこの大気の密度とは、社会なのか感情なのか。ぼくたちがいま、ここで感じている、並んで歩きながら感じているとてつもなく落ち着いた気分。そんな風にして過ぎて行く時間。
「ビール、飲む?」
「飲む」
ぼくは道の向こう側から暗い夜を照らす四角い月のようなコンビニでビールを二つ、買う。乾杯すると、ペコッと音がした。
「おいしいね」
「おいしいね」
くちづけの合間においしいビールを飲み、やがてぼくたちは眠った。朝なんかそのうち来るんだろう。

その夜は、暑くもなく寒くもなく、星も出ていなかった。まるで初めて出会ったかのようにぼくたちはどちらからともなく手をつなぎ、どちらへともなく歩いた。
「あんた、めんどくさいねー」
「ごめんね」
「まあ、いいけど」
広い道に出る曲がり角で、ぼくは左に、彼女は右に行こうとした。彼女の右肩とぼくの左肩が軽く触れ、そのことがぼくたちだけの秘密の合図のように思えて、素早く抱き合った。その様子をぼくたちは、少し離れたところからコマ送りで眺めても、いた。
「あかんあかん」
「あ、ごめん」
さっきまで一緒に楽しんだ音楽の熱が、彼女の首筋に少し残っていた。ぼくはそこに自分の首筋を重ね、両腕に力を込める。
「ぐるじー」
「あ、ごめん」
彼女の尖った靴の先がぼくのふくらはぎにコツン、と当たる。
いったい、この社会とかいうものとぼくの感情にはどんな関係があるのだろうか。社会の内側にぼくの感情があり、ぼくの感情の内側に社会があるのか。ではこの大気の密度とは、社会なのか感情なのか。ぼくたちがいま、ここで感じている、並んで歩きながら感じているとてつもなく落ち着いた気分。そんな風にして過ぎて行く時間。
「ビール、飲む?」
「飲む」
ぼくは道の向こう側から暗い夜を照らす四角い月のようなコンビニでビールを二つ、買う。乾杯すると、ペコッと音がした。
「おいしいね」
「おいしいね」
くちづけの合間においしいビールを飲み、やがてぼくたちは眠った。朝なんかそのうち来るんだろう。


