久しぶりに小さい女友達からメールが届いた。彼女は再びドラムの練習をはじめたみたいで喜ばしい。昔、彼女の木琴の推進力はぼくたちを高く高く揚げてくれた。

久しぶりに小さいおっさんと廊下で出会った。彼は最近家庭問題で疲れ果てているようで、ひとしきり眼をしばたいて「焼けてますねー」と言った。

久しぶりに昔愛した人に話しかけた。彼女はあい変わらずぼくに悪態をついてけらけら笑った。そのとき天使が上を通った。

久しぶりにポール・オースターの新作を読んだ。ぼくのお話と彼のお話が入れ子になって進んで行くし、そもそも彼の話が入れ子になっているので少し混乱してきた。

久しぶりに映画を見た。それは眼鏡をかけて見るので、満席の金正日みたいだった。模型のような飛行機が好ましかった。斧が飛んできたので避けた。

久しぶり、という言葉でメロディを考えた。たいした旋律が浮かばなかったのでやめた。シュプレヒシュティンメにしてみようか。眼で飲むワイン。

愚者との生活、ぼくが愚者で、ぼくはぼくと暮らしているのだった。
「私は神聖な愚者を探し始めた。しかし、何か赤っぽい光が邪魔したり、愚者の身体的な多様性が気に入らなかったり、ついには蒸し暑さで頭が混乱して、いずれにしても、どこにも私のマレーイ・マレーヴィチはいなかった」
アルフレート・シュニトケのオペラ、ロストロポーヴィチのやさしい力強い音楽
in heaven, everything is fine.-idiot
生まれてよかった、と思えるように、暖かい家族の絆を取り戻すために、
夫婦別姓や外国人参政権に反対して参ります、
ていうのは、

眠たい電車たちがこの風呂に、
咲いていてよかった、と思えるように、きらきらとしたねじの垂直を見るために、
釜飯とチキンのカルパッチョに反対して参ります、
みたいなもんか。

立て餓えたる者よ

$in heaven, everything is fine.-daiku-jinter
今夜はブラウニーが来てくれそうな気がして、でも待ち構えているようなそぶりを感じ取られるとブラウニーは意地悪になってすぐに帰ってしまうし、そのときぼくの大事にしている物や人や記憶まで持っていってしまうことがあるので、注意深く、できるだけ普通に過ごし普通の時間にベッドに入る。
部屋の隅にさりげなくたばこを置いておく。用事を済ませたブラウニーはゆっくり四方を見回し、好物を見つけると低い声で「Yaap!」みたいなことを言い、それはそれはおいしそうに、しゃがんで喫煙する。のだと思う、ぼくはすっかり眠っていてそんなところは決して見ていないのだから。それからブラウニーはすっかりきれいに片付いたキッチンやクローゼットを指呼確認してから「mmn」みたいに低い声で言い、「hopp!」みたいに言いながら郵便受けの隙間やエアコンのホース、鍵穴など信じられないようなところに入り込み暗闇へ去って行く。のだと思う。そのあとには小さな灰皿がひっくり返してあったり、ギターがうつぶせに倒れていたりするのだが、ぼくはそのひそかな破壊的行動というか諧謔的主張というか要はいたずら、が大好きだった。すっかり気分を良くしたぼくはそれからの数日間せっせと洗い物をし、シャツを洗濯する。やがてヴィデオゲームやテレヴィショッピングなどに生活の大半を費やすようになってきたとき、ぼくはブラウニーを待つ。というか勝手にブラウニーが来る。願っても無理なことはたくさんあるけれど、そのために努力をすることと何もしないことにはたいした違いはない。願うことと無理なことのあいだには直接の関係はない。
broad,bright,gentle and airy なこのトランペットを鳴らしっぱなしにして眠ろう、
$in heaven, everything is fine.-brownie-str