トランペット(金管楽器)演奏における舌の役割・その2 | 喇叭吹奏業(トランペット奏者)竹浦泰次朗のブログ
2022-06-06 05:22:01

トランペット(金管楽器)演奏における舌の役割・その2

テーマ:金管奏法

前回は、

 

舌の働きがなければ音の高低を変えることができないかもしれない
 

ということについて触れました。


そして、

 

我々がトランペット(金管楽器)を練習して上達しようとする際、
 

この舌の動きをいかにして習得するのかが

 

重要なポイントの一つになるかもしれないことに
 

気が付くことができました。



今回は、

 

その働きを踏まえさらに根本的な要素について

 

考えていきたいと思います。



確かに舌は音を上げ下げするために重要な働きをしていますが、舌の動きそのものが直接的に音になっているわけではありません。

舌は、音の燃料である息に対して調節するための働きをしているということに気が付かなければなりません。


言いかえれば、

 

舌の動きを上達させるのではなく、
 

舌を使って息を調節することを上達させなければならない

 

ということなのです。



ここで、まず重要になってくるのは、(息を調節する動作の基準となるべき)舌の位置です。


音を出す直前(あるいは音が出ていない時)、舌先は下の歯の後ろに位置し、舌の前半分の表面と上顎が軽く接触した状態になっているということを確認してください。

(普通に黙って口を閉じている時の舌の位置とほぼ同じです。)

この舌と上顎の間の狭いスペースを通して息を唇に当てることにより、音を出しているわけです。


このスペースを通過して送られた息を上手くコントロールして唇に当てることができれば、適度に圧力のかかった息で効率よく鳴る状態で演奏することができることになります。

逆に、

 

舌が手前に引っ込んで(下の歯の後ろから離れて)しまったり、口の中が広くなって息の通り道が必要以上に大きくなり過ぎたりすると音は適度な圧力を失いぼんやりとしたものになってしまいます。


したがって舌先は、必ず常に下の歯の後ろに位置しなければなりません。


そして、

 

舌と上顎のスペースを通過する息の圧力を適度な状態に保ち続けなければなりません。

前回でわかった舌の働き(音の高低のコントーロール)、タンギング、アーティキュレーションの数々は、すべてこの状態の中でおこなわれていることなのです。

これから我々は、この状態でおこなわれるすべての技術について順に訓練・習得・熟練しなければならないのです!!



では、

 

まずシングル・タンギングから始めることにいたしましょう!


シングル・タンギングのやり方には、昔からいろいろな説が存在します。

 

※シングル・タンギングに関する事柄については、以下のブログにも紹介しております。

 

 



デルバート・デール著「トランペット・のテクニック」には、以下のような記述があります。


 『アタックの時の舌の役割については、指導者たちのあいだに多くの論争がある。
ある人は、舌の先端が上歯の”先の方”を内側から打つべきであると主張している。
また他の人は、上歯の歯茎にあたる部分、あるいは歯茎の線に近く上あごを打つべきだと主張している。さらに人によっては、舌の先端を上歯の先につけ下歯にも軽くふれる状態にしたまま、舌の前寄り中央で上あごを打つという方法を好む人もいる。
しかしどんな主張にも共通していえることは、第1に舌の運動はすべて舌の前半分、
つまり前舌によってなされるべきであること、第2にごくまれな例外をのぞいては舌が歯の並びに対して直角方向に動くことがないということである。』


私もトランペットを正式に習い始めて大阪芸大に入学してしばらくするまで、上述の最初のやり方(舌の先端が上歯の”先の方”を内側から打つ)でやっていましたが、

大学1年の冬になって、

 

翌年のクラウド・ゴードン国際キャンプに参加することに備えて、“Kタング・モディファイド(アンカー・タンギング)”と呼ばれるシングル・タンギングに変えることになりました。



“Kタング・モディファイド(アンカー・タンギング)”は、

 

デール氏が上で3番目に述べているやり方(舌の先端を上歯の先につけ下歯にも軽くふれる状態にしたまま、舌の前寄り中央で上あごを打つ)で、舌の先端の位置に関する記述が微妙に違う程度でほぼ同じだといえると思います。
 

 

※Kタング・モディファイド(アンカー・タンギング)については、以下のブログにも紹介しております。

 

 

 

まず舌の先端を下の歯の後ろにおき、
 

話しことばで“ティ、ティ、ティ、ティ~”と言ってみてください。
 

“アイスティー”、“レモンティー”、“ミルクティー”の“ティー”と同じです。
 

喫茶店に行ってこれらを注文できる人なら誰でも言えるはずです。


この時、舌の前寄りの中央部分が上顎を打っていることが分かると思います。


続いて、

 

“ティ、ティ、ティ、ティ”を話しながら“タ、タ、タ、タ”へ移行します。
 

“タ、タ、タ、タ”になっても舌先の位置は変わらず(下の歯の後ろ)、上顎を打っている場所(舌自体の高さは違うけれど)がほぼ同じだと確認できるはずです。



今度は、

 

上の方で述べた普通に黙って口を閉じている状態から口内に侵入したスイカの種を吹き飛ばす要領で、声を出さないで“プッ、プッ、プッ、プッ”(圧力のある息が弾けるような感じで)のようにやってみてください。

 

 

舌の動きが、さっきの話しことばの時とほぼ同じであることがわかります。


大雑把にいえば、このタンギングの動作が“Kタング・モディファイド(アンカー・タンギング)”です。



先に述べました通り、確かにシングル・タンギングには、いろいろな説があります。


しかしながら、

吐き出す息の圧力を保持し続けなければという観点から私は、舌先が下の歯の後ろに位置するこの“Kタング・モディファイド(アンカー・タンギング)”というやり方が最も自然の摂理にかなっていると考えています。



“Kタング・モディファイド(アンカー・タンギング)”を実践するうえでの注意事項は以下のとおりです:

●舌先は、下の歯の後ろにおかなければならない。
●発音は、“Ta(タ)”または“Ti(ティ)”にすること。決して“Tu(トゥ)”にはしないように(*)。

(*)“Tu(トゥ)”の発音は、英語圏の人であっても舌先で上の歯の後ろを突く発音になり、特に日本語を母国語にしている人の場合、母音が主体のため、上の歯を突いた後に舌が手前に引っ込んでしまいやすくなり、(喉や舌の根元に力が入ってしまうような)悪癖の元となります。ご注意ください!


それではちょっと“Kタング・モディファイド(アンカー・タンギング)”をやってみましょう!

(四分音符=80の速さで十六分音符)

 

 



私は、

 

この“Tu(トゥ)”の発音に関してクラウド・ゴードンが大変興味深いことを語っていたことを今でも鮮明に覚えております。

 

今(2022年)からおよそ39年程昔のことですが・・・。


『タンギングの発音に関して、そもそもの誤解の始まりはArban(アーバン)の教本がフランス版から英語版(カール・フィッシャー版)に編集された時なのだ。丁寧な英語の解説や注釈などが載り、素晴らしい教本に仕上がったのだが、楽譜に表示されている発音の表記は“Tu”をそのまま書き移されただけの状態になってしまった。このように“Tu”と書かれたものを英語圏の人が発音すると舌先で突くような発音になってしまうのだが、この状態で上手に演奏できるための試行錯誤が繰り返され、今現在世の中にあるいろいろな説が生まれたに違いない。ただ、おもしろいことにフランス語圏の人がこの“Tu”と書かれたものを普通に発音すると、舌の先の方で“Tyu(ティュ)”
というふうな発音になるらしく、これこそまさに“Kタング・モディファイド”なのだよ。』


これに付け加えると、

 

この英語版(カール・フィッシャー版)アーバンをさらに日本語訳したものが我々がよく知っている黄色のアーバン金管教本(全音楽譜出版)だ!
 

やはり、

 

楽譜に表示されている発音はそのままになっている。気を付けたいものである。


最近、

 

日本語版アーバンも表紙が白い改訂版になったようだが、発音表記はどうなっているのだろうか?



最後に、

 

シングル・タンギングなのに、なぜ“Kタング・モディファイド”なんだろう?

そう思った方は結構いるんじゃないかと思います。



“Kタング”については、後日くわしく説明させていただくこととして・・・



先に述べたとおりシングル・タンギングにはいろいろな説がありますが、
 

“Kタング”のポジションは、舌先が必ず下の歯の後ろに位置していて、たとえシングル・タンギングでは別々の異なる説を実践していると言っている人同士であっても、
“Kタング”ではほぼ同じで違いはなく、一通りであると考えることができます。



したがって、

 

シングル・タンギング諸説の論争に嫌気がさしたクラウド・ゴードンが
 

「Kタングのポジションで出来るシングル・タンギング」の方が合理的であるという意味で
 

つまり、

 

“Kタング・モディファイド(もどき、あるいは改良型)”というふうに呼んでいたのではないかと私は推測しています

 

(あくまでも推測です、責任は取りません)。




では、今回は、ここまで。

(ご質問などございましたらご遠慮なく申しつけください)
 

 

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あくまでも一般的な状態を想定したものとなります。

実際は、かなり感覚的な個人差がある場合があると思われます。

 

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