シカ、ダイブ。 | TROUTER

シカ、ダイブ。

その日は、強すぎない日差しと頬をなでるそよ風が心地よい釣り日和でした。前日まで降り続いた雨の影響か、増水気味の河川に濁りは無く、気になるのは一気に2度下がった水温だけでした。

スプーンや小さめ(9cm程)のミノーをキャストすると、大量に遡上したサクラマスが顔を出します。内水面禁漁のサクラマスは釣っても意味が無いので即リリース。彼らを避ける為と、小さなイトウが釣れて場を荒らさない為に、早い段階で大きめのミノーに切替えました。


水量が落ち着き始めたのは午後1時頃。朝3時30分からそれまで、魚信はゼロでした。「今日もダメか。いや、勝負は夕方だ。」そんな自問自答を繰り返しながら、一人の世界に入り込んでいた時、背後から物凄い勢いでこちらへ走る足音が。


「ザザザ・・・・・・!ドドド・・・・!」


背後は約2メートルの土手。向こうからは僕の姿など見える訳が無い。つまり、知人では無い。いや、恐らく人ではない。



「クマ・・・・」


今年は出没が多いと、直前に行きつけの釣具店店主から電話が来ていた。右の腰にぶら下げた「熊撃退スプレー」に手を掛ける。覚悟を決めて、息を潜める。


「ドバ~ン!!」


大きな動物が僕の上を飛び越えた。というより、僕の存在など鼻から興味の無い彼は、2メートルの土手から川へダイブした。(その下にたまたま僕がいただけ)

直ぐに平静を取り戻した僕は、全くもって驚いた。大きなシカが、水深4メートル程の河川を泳いでいる・・・。その川幅は約80メートル。あっと言う間に渡りきったシカは、今度は対岸の土手をよじ登り、水に濡れた犬の様に体を振るわせた。そして何事も無かったかの様に、対岸の森へ消えて行った。



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PS:

イトウは釣れませんでした。今期初の泊り込みでしたが、粘れば釣れる程、この川は甘く無いのです。釣れないから夢中になれるのです。今回はウグイの自己記録を更新しました。と言うより、初めてウグイにメジャーを当てました。50cmでした。


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