高速道路建設にかかった借金の返済計画が、当初設定の二〇五〇年から十～十五年先延ばしされる。政府関係者への取材で五日分かった。担当の国土交通省は想定外の補強費が加わったことを理由にしているが、期限まで三十七年も残しながら、早くも返済をあきらめて、先延ばしすることになる。 （城島建治）
有識者でつくる国交省の「国土幹線道路部会」は七日、借金返済計画の十～十五年先延ばしの検討を求める答申をまとめる。同省は答申に沿い、来年の通常国会にも五〇年完済を明記している道路整備特別措置法の改正案を提出する。成立すれば、借金返済後に予定される高速道路の無料化も先送りされる。
同省は返済を先延ばししなければ補強・改修への税金投入や通行料金の値上げが必要になるとの立場で、高速道路課は「国民の理解は得づらい」と話す。
ただ借金の返済は比較的順調だ。〇五年の道路公団民営化後、平均で年一兆一千億円ほど減っており一二年四月の残高は約三十兆二千億円。
同課は、補強費など約七兆円が新たに加わり、先延ばしが浮上したと説明するが、今のペースなら五〇年完済は不可能ではない。
この時期に十～十五年と幅を持たせて決める明確な根拠や試算はない。安倍政権が防災・減災目的の公共事業を重視している今、既成事実にするのが理解を得やすいとの政府・自民党の判断が働いているとの指摘もある。
＜道路公団民営化＞ 自民党の小泉内閣が２００５年１０月、政府が出資していた日本道路公団など道路４公団を６高速道路会社に民営化した。４公団で計約３８・２兆円に上る借金と道路資産は、独立行政法人日本高速道路保有・債務返済機構が引き継いだ。民営化会社は機構から高速道路を借りて運営。通行料から貸付料を支払い、機構は貸付料を借金の返済に充てる。５０年９月までに借金返済を終え、高速道路を無料化する計画だった。
◆官僚のご都合主義
法政大学法学部の五十嵐敬喜教授（公共事業）の話 民営化で大規模改修費が考慮されなかったのは理解に苦しむ。法改正で債務期限を先延ばししたら、いつ、高速道路が無料化されるのか分からない。根拠が不明確で、官僚のご都合主義としか言えない。