■几帳面な性格が「仇」
ホテヘルでのバイトを認めた女性教諭に対し、府教委は自宅謹慎を命じた上、事実関係を把握するために顛末(てんまつ)書を提出するよう求め、さらに数回、事情聴取を重ねた。
几帳面(きちょうめん)な性格の女性教諭はバイトに出た日付と収入を詳細に控えており、事実関係の調査は思いのほかスムーズに進んだという。違法性の有無についても、バイト先が大阪府警に営業を届け出ていることを確認し、女性教諭から「売春防止法に触れる違法行為はなかった」という証言も取った。
だが、府教委の裏付け調査が十分だったとは言い難い。処分事実は女性教諭の説明を基に記述。府教委はバイト先の店とは一度も連絡を取らず、勤務実態を確認することもしなかった。
警察関係者によると、ホテヘル嬢は通常1日で2~3万円の収入があるといい、「女性教諭は自己申告額の160万円より多くを稼いでいたはずで、借金も実際には数百万円あったのではないか」と指摘する。
■背景は闇の中
事実確認が進むと、今度は懲戒処分の“量刑”が議論された。
副業が発覚した場合の処分基準は戒告や減給処分とされているが、府教委は今回、再び教壇に立つことは許されないと判断し、退職を前提に話を進めた。
ただ懲戒免職は、基準より極めて重い処分となるため、違法ではない性風俗店で働く人に対する職業的差別につながることが懸念されたという。
解決策として府教委が導き出した答えが、事実上の退職勧奨を行って女性教諭が自ら依願退職を求めるよう仕向けることだった。
「で、どうすんねん?」
語気を強めて今後の身の振り方を尋ねる府教委幹部に対し、女性教諭が「辞めます」と答えたことで、依願退職を前提に「停職6カ月」の処分が決まったという。
別の幹部は「服や化粧品を買うために風俗バイトするなんて問題外だ」と怒りをぶちまけるが、なぜ女性教諭がカードローンを組んでまで大量の衣服や化粧品を買い続け、借金苦に陥ったのか、という根本的な理由は、府教委の調査では明らかになっていない。
いわゆる「買い物依存症」だったのか、職場の人間関係で悩みやストレスを抱えていのか。そもそもクレジットカードの利用の仕方がまずかったのか…。高校教諭による前代未聞の不祥事は原因不明のまま、幕引きされた。