あたしはほっとしたけど、お義母さんがものすごい勢いで反応した。
「ちょっと・・・! あんたまさかそこにつけこんだんじゃないでしょうねっ?!」
「・・・何?」
「だってそうでもなきゃ・・・あんたにこんなにかわいいお嫁さん、来てくれるわけないもの」
「やだお義兄さん、それはよくないわ。人生の伴侶は自分の魅力で獲得しなきゃ」
「・・・あのな。俺にそんなことできるはずないし、魅力なんてそもそもそんなもんがあるならとっくに嫁さんが居るはずだろう」
「わかんないわよ。実はあんた、そういうことだけ小器用だったり・・・ああ、もしそんなんだったりしたら、あたしはお父さんに顔向けできないわ。なんてことするのよ、あんたって子は」
「それじゃお義父さんもがっかりしますよー。お義兄さんがそういう人だなんて、あたし思いもしなかった」
「・・・それで、えらい間接的に甲斐性無しをバラされて、せっかく来てくれた嫁さんに逃げられでもしたらどっちが責任とってくれるんだ?」
「あら、そんなのは自分の甲斐性でなんとかしなさいよ」
お義母さんが涼しい表情でお茶に口をつけた。
そんなことないんですって言わなくちゃいけなかったのに、全然割り込めないまま、あたしはオロオロするだけだった。
どうしよう。
やっぱりあたしはそんなふうに思われちゃうくらい、ケイには似合わないんだ。
違うのに。
そんなんじゃなくて、ケイは逆にあたしに居場所をくれたのに。
「ち・・・が・・・あ、あの・・・ちが、違うんです」
今日初めて顔を合わせたのに、いきなり逆らうようなことを言うのは・・・いろいろマズいかもしれないけど、でもやっぱりそこはきちんとわかってもらわなきゃいけないと思う。
それでもどうしても遠慮する気持ちの方が大きくて、あたしの声は小さくなった。
「あの・・・そうじゃなくて・・・あたしの方こそ・・・ケイの、ケイゴさんのお嫁さんにもらってもらえるような・・・んじゃないのに・・・なのに、ご挨拶に来る前に結婚するって決めてしまって・・・ごめんなさい・・・本当に・・・」
「・・・初対面の人間を驚かせるようなことは言うもんじゃないってわかったろ、ふたりとも。ああほらコト、いいんだ。そんなふうに言わなくて。このふたりは、たまにしかここに来ない俺のことをいじめて喜んでるだけだから」
「まー! あんた、なんてこと言うのっ」
「やだ、お義兄さんをいじめるなんて、そんなことしませんよ。お嫁さんを心配したんですよねー、お義母さん」
「そうよねえ、みのりちゃん。大体敬護、あんたに意地悪言ったり嫌味言ったりしていじめたって、あんた気付かないに決まってるもの。そんなつまんないことするもんですか。ねえ、甲斐性無しで取り得無しのトウの立った長男のところへせっかく来てくれたお嫁さんだけど、やっぱりやめますって言うなら今よ、琴音ちゃん」
「・・・言うか」
「あなたの人を見る目を疑うわけじゃないけど、琴音ちゃん、ほんとにいいの? こんなぼーっとしたおっさんで。あなたみたいに若くてかわいい子なら、他にもっと若くて素敵な男の人がお嫁さんにもらってくれるんじゃない?」
「・・・コト、冗談言われてるんだからな。真に受けるんじゃないぞ」
お客さん用じゃなくてケイのものらしい湯呑みに口をつけたケイは、さっきのお義母さんと同じ表情をしていた。
ああ、ほんとに親子なんだなと、あたしは場違いにそんなことを考えていた。