夜話) 3years love (前) | オトナになっても

オトナになっても

□■□ 「起承転結」こちらで完結することにしました・長編は「書架の背表紙」(目次)からどうぞ □■□

 「ほら、また見てる」


 握った拳の裏側で、軽くコツンとされる。


 「そんなに似てた?」

 「いや・・・えと・・・ごめ・・・ん・・・」


 すくめた肩に、呆れた、を表現されるのは何度めだろう。


 「ま、もう慣れたけど」

 「ごめん」


 糾(キュウ)があたしの傍に居るようになって、もう3年。

 永いような、あっという間のような・・・。

 すぐには無理でも、いずれ忘れて ―― 思い出さないようになっていくのだろうと、あたしも思っていた。

 なのに、あたしは糾の前の彼を、ちっとも忘れていない。

 今でも彼に似た人とすれ違う度に、いつまでも目で追ってしまう。

 そしてその度に糾にため息をつかせてしまう。

 別れた前彼よりも、糾の方が、あたしには合っている。

 前彼と糾の両方を知る人はそう言い、あたしもそう思うようになった。

 今となっては、糾の居ない生活は考えられない。



 糾の検査入院の打ち合わせの帰りのことだった。

 病院からの帰り、あたしはまたやってしまったのだ。

 向こうから来る、彼に似た人。

 あっ、と小さい声を出してしまったのはわかっていた。

 彼ではない他の誰かが、すれ違い、去っていくのを見送った。

 慣れたと言うわりに、糾の口調も仕草も乱暴になったのを感じて、あたしは手遅れの反省をした。


 納得しての別れではないことは、糾も充分理解していた。

 あたしと彼が別れなければ、自分があたしの隣に居る現在はなかったということも。

 だからといってあたしは、糾を2番目扱いしてきたつもりはない。

 あたしに尽くしてくれる糾を、あたしなりに大切にしている。

 なのに、あたしのその想いを、前彼の記憶が無にしてしまう。


 いつもだったら、その日はそれ以降糾が無口になって、翌朝なにもなかったかのようにあたしに接してくれて、それで終わりになる。

 今日に限って珍しく、糾は口を閉じなかった。


 「ヤツが特別だったってことはよくわかってる。俺にとってのカヤと同じだから」

 「う、うん」

 「でもそろそろ、俺のことだけ考えてくれてもいいだろ?」

 「うん・・・ごめん」

 「謝らせたいんじゃない。口先だけで約束してほしいわけでもない。俺がカヤを想う気持ちの、十分の一でも、カヤが俺を想ってくれてるなら・・・」

 「わかってる、わかってる。あたしだって糾のこと大切に思ってるってば」

 「・・・ヤツの次に、だろ」


 そう言うと、糾はぷいっと横を向いてしまった。