そんなわけであたしは、今日も店に居る。
初めてヒカルに逢った夜から数えて、もう一ヶ月。
社会人同士なので、会議やその他の仕事の都合で、遅くなったり会えなかったりということが何度かはあったものの、週の半分はこの店に来ていた。
相変わらず、「じゃあ次は水曜日。7時頃ね」というような約束はしていない。
仕事を終わらせて、この店に寄って、一番奥のあたりに腰を落ち着けて、ヒカルを待つ。
1時間程度ヒカルを待って、会えなければそのまま帰る。
他の人から声をかけられるのも煩わしいので、目印として、携帯を置くようにした。
低い灯りが作るやわらかい光の半円の中で、携帯のストラップにしている淡水パールでできた房が、穏やかな光を反射させている。
ぼんやりとそれを見つめながら、考えるのはヒカルのことだけだった。
二度目にヒカルに会った夜。
明確な約束をしていない以上、それはやはり偶然と呼んだ方が相応しいのだろう。
日や時間を約束しなかったので、その日、店に来ることにしたのは、偶然。
そしてもし、ヒカルに会えたなら、やっぱりそれも偶然と呼んで間違いはないだろう。
次にこの店に来たとき、見つけたら声をかけるという約束はしていた。
だからその夜、あたしは馬鹿正直に、ヒカルを探した。
そして、ヒカルを探し始めてやっと、目印になるようなものを教えてもらっていないことに気付いた。
ひとりで座っている男の人が何人かいたけれど、多分、違う。
違うけど・・・。
困ったな、と思っていると、反対側から歩いてくる人がいて、その邪魔にならないように、あたしは通路の端に避けた。
すれ違うときなんとなくその手を見て、あたしは、声をかけるべき相手もあたしを探していることがわかった。