次に超漢字Vの画面例を示します。この図でお分かりいただけるように、超漢字VはWindows上の一つのウィンドウの中で動いており、この点ではWordやExcel、Internet Explorerなどの他のWindowsアプリケーションソフトウェアと同じです。


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超漢字VとWordやExcelとの併用ができる


そのため、超漢字Vのウィンドウとその他のアプリケーションソフトウェアのウィンドウを同時にオーバーラップして(重ね合わせて)表示することができ、さらにウィンドウ上でクリックしたり、画面最下部にあるWindowsのタスクバーをクリックする操作によって、超漢字Vとその他のアプリケーションを素早く切り替えることができるようなりました。
従来の超漢字は、Windowsと同じマシンに入れて動かすことはできましたが、Windowsと超漢字を同時に使うことができなかったため、Windowsと超漢字を切り替えるためにはOSを再起動する必要がありましたが、超漢字Vでは、WindowsおよびWindows対応アプリケーションソフトウェアと超漢字を切り替えて使うことができるためにその必要が無くなりました。


しかし、Windowsを動作させる必要がなく超漢字のみが使えればいいというユーザーのために、超漢字Vでは「全画面モード」への切り替え機能が用意されています。
全画面モードにすると画面の見かけは以前の超漢字とほぼ同じになり、Windows上で動作していることが画面上では分からなくなります。


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全画面モードで表示した超漢字V


超漢字Vで一番注目されることは、「Windows上で実行される」という点であり、どの超漢字ユーザーなら誰でも気になることは「OSであることをやめたのか?」という疑問です。超漢字とWindowsとの関係は、次の図のとおりとなっています。


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従来の超漢字4と、Windows上で動作する超漢字Vとの違いとは


前バージョンの超漢字4は、「単体で動作するOS」としてIBM-PC互換機(DOS/Vパソコン)にインストールすればそのままBTRON仕様OS搭載パソコンとして利用できます。
一方、今回発売された超漢字Vは、IBM-PC互換機上にWindows XPがすでにインストールされている状態で、通常のWindowsアプリケーションと同じ一つのアプリケーションとして動作することになるのです。そのため、超漢字に対応したアプリケーションは、超漢字Vが動作するウィンドウ内においてインストールし、利用することになります。


つまり超漢字Vは、仮想マシン環境ソフトウェアであるVMwareを使って、Windows上でまるで「アプリケーションソフトのように動作する」OSなのです。OSとしての本来のハードウェア上で動作するというスタイルから、仮想マシン環境上で動作するOSへ移行したともいえるでしょう。

こういった対応関係にある両ソフトウェアの場合、VMware Player上で動作する超漢字を「ゲストOS」、Windowsを「ホストOS」と呼んで区別します。
その意味ではOSという位置付けそのものはまったく変わっていません。それ以上に、パソコンのデファクトスタンダード(事実上の標準)であるWindows環境の普及を背景として、超漢字Vは単独で実行するOSではなく、Windowsで動くことを最優先して設計されているのです。


実際に超漢字を利用しているユーザーの間では、その具体的な方法についてTRONの専門誌である「TRONWARE」(パーソナルメディア)でもたびたび取り上げられていたこともあって、以前から独自にVMwareによって仮想マシン環境を構築し、独力で超漢字をWindows上で実行させて利用することが「流行」していました。


さらに超漢字をはじめとするBTRON仕様OSのヘビーユーザーであり、世界で唯一のBTRONライターでもあるデジタル・オブジェ・プロデューサーの美崎薫氏は、「『考えて書く』ために使う筆者にとって『超漢字』の最大の魅力は、常時編集可能なハイパーテキストにあり、その点だけをつきつめて考えれば、『超漢字』は、いわばアプリケーションとして使っているのと等しいのである。OSであることを捨てて使い勝手がアップするなら、アプリケーション化は大歓迎だ。」とのコメント※からも、まさにこういった形でのバージョンアップは多くのユーザーの待望でもあったのです。


事実として、超漢字の最大のメリットである「多漢字・多文字機能を活用して文章を書く」という観点からは、OSであるのかアプリケーションソフトウェアであるのかという問題は、実際にハードウェア上で稼働させるOSさえ安定して動作していれば、基本的に関係のない部分だといえるでしょう。


※MYCOMジャーナル「超漢字Vの進化-Windows上でTRONを使う」
http://journal.mycom.co.jp/special/2007/chokanjiv/