BTRON仕様OSのプロダクトとしては多数の実用例が存在していますが、現在一般に最も知られているものが「超漢字」です。

超漢字はTRONプロジェクトの成果の一つとしてパーソナルメディア社がパソコン用に開発、販売を行っている一般向けのBTRON仕様OSであり、超漢字の実行環境(ハードウェアプラットフォーム)としては、IBM-PC/AT互換機を利用しています。


漢字や文字の扱いが大変得意である超漢字は、その他のOSにはないとてもユニークな機能を持っています。

その最たるものが、多数の人名用の異体字を含むなんと18万種類もの漢字や文字を、超漢字の上で動作するあらゆるアプリケーションソフトウェアにおいて自由に使うことのできる「多漢字機能」であり、しかもそれに付随して簡単な操作で漢字や文字の検索が実行できる「文字検索機能」の搭載によってユーザーから高い評価を受け、1999年11月の発売以来これまでに20万本を超える本数が出荷されてきました。


現時点で超漢字はTRONプロジェクトから生まれたBTRON仕様OSとして作られた日本製としては唯一のパソコン用のOSということになります。また本記事執筆時点(2009年12月現在)の最新バージョンは「超漢字V」です。


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超漢字ウェブサイト
http://www.chokanji.com/index.html


超漢字の特徴としては、何といっても文字に強いということです。この点に関しては、多くの文字を混在して使う日本で作られたOSという点から、文字表現に関する機能が徹底的に強化されています。

超漢字はBTRON仕様OSの製品化であることから、その文字表現の機能に関してはTRONコードが組込まれており、常に現時点でありとあらゆる言語の文字種を次々と組み込み続けています。


具体的には、多数の人名用の異体字や住基ネットで使用されている統一文字をはじめ、旧字体や変体仮名、さらに現代でも中国の少数民族が利用している象形文字であるトンパ文字※など、驚異の186,154文字(2007年2月現在)が利用できる環境が提供されています。


※トンパ文字:中国雲南省の納西(ナシ)族に伝承されている現在でも実際に使用されている世界でも唯一の象形文字であり、文化資産として学術研究的にも非常に貴重なもの。最大の特徴は、世界中の文字には例がない「文字の色によって意味が変わる」という点であり、超漢字はその文化的価値から以前から注目し、別売りの追加フォントとして提供された。ただし最新バージョンである超漢字Vにはトンパ書体として標準添付されている。



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トンパ文字の例。「人」に関係するトンパ文字。


この中には、世界最高峰の漢和辞典といわれる「大漢和辞典」に収載されている約4万8,000字もすべて搭載されていることから、国文学の研究にとどまらず、漢字文化圏である中国や台湾、韓国などのアジア諸国の歴史的な文献のデータベース化や、企業や商店における顧客名簿の作成、図書館や研究室などの蔵書の管理、また世界のどこに行った場合であっても現地の国語と日本語を混在した文書の作成が容易に実現できるなど、実に様々な用途が考えられ、そしてこれまで多くのユーザーによって実際に活用されてきた実績があります。
しかも、これほど多くの漢字や世界各国の文字を、特定のアプリケーションソフトウェア上だけでなく、OSも含めて超漢字上のアプリケーションソフトウェアならば自由に使える点も見逃せません。


超漢字のもつ多漢字・多文字機能は、単に色々な文字が表示できるというだけではなく、それだけ多くの文字種となると自分が使いたい文字を探すだけでも大変です。

そこで簡単な操作で漢字や文字の検索や入力ができる文字検索機能が充実しており、異体字まで含めた「あいまい検索」が可能な「異形字ゆらぎ検索機能」も備えています。


「異形字ゆらぎ検索機能」とは、字形の異なる同種の文字の差異をユーザーが気にすることなく文字(文字列)の検索を行なうことができる機能です。
例えば「高」と、その上部の口の左右の棒が上下に突き抜けている、いわゆる「ハシゴ高」の区別が可能であり、また「高崎」という単語ならば「髙崎(ハシゴ高+崎)」だけでなく、「崎」の右上部の「大」を「立」で表現するいわゆる「タチ崎」を使った「高+(タチ崎)」や「髙(ハシゴ高)+(タチ崎)」など、すべての組み合わせを検索することができるのです。



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「高」の異体字として「髙」を選択している。



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異形字ゆらぎ検索機能で検索できる文字列の例。


藤井講師研究室 http://www.ilovepc.jp