5月9日(土)午後9時からNHK BSプレミアムで『松本清張ドラマ黒い画集~証言~』が放送されました。

 

作家、松本清張さの作品が大好きで、読み続けて来た者としては、松本さんの原作が映像化されれば気になりますし、今回は主人公を同性愛者として設定したと聞けば見ずにはいられないでしょ?

 

僕も同性愛者ですから〜(笑)。

 

今回ドラマ化された「証言」が収録された『黒い画集』は、松本清張さんの短編推理小説シリーズです。

 

『週刊朝日』1958年10月5日号から1960年6月19日号に連載され、光文社より1959年から1960年に全3巻で刊行されました。

 

また、『別冊黒い画集』シリーズが『週刊文春』1963年1月7日号から1964年4月20日号に連載され、文藝春秋新社「ポケット文春」より1963年から1964年に全2巻で刊行されたました。

 

『黒い画集』の中から東宝では3本映画化されています。

◎『黒い画集 あるサラリーマンの証言』(1960年3月13日公開、東宝、堀川弘通監督)

◎『黒い画集 ある遭難』(1961年6月17日公開、東京映画、杉江敏男監督)

◎『黒い画集  寒流』(1961年11月12日公開、東宝、鈴木英夫監督)

 

僕は『黒い画集  寒流』も大好きです。

 

原作の『証言』はこんなストーリーです。

大森に家族と住む石野貞一郎は、丸の内に勤務する会社課長です。会社の部下である女性、梅谷千恵子を愛人として囲い、西大久保に住まわせていました。12月14日夜、石野は見送りたいと申し出る千恵子と一緒に彼女のアパートを出ますが、人目もあることから千恵子より少し間を置き共に大通りへ出ようとしたところ、大森の自宅近所に住む保険の外交員・杉山孝三に突然頭を下げられ、石野は反射的に頭を下げ返礼してしまいます。帰宅後、妻には渋谷で映画を観て遅くなったと取り繕いますが、その夜から杉山が自分の不審な所在(千恵子の件)を吹聴しないかと不安になります。2週間後、突然会社に刑事が訪れ、向島で起こった殺人事件に杉山が関係しているとして石野は証言を求められるのです。しかし事実を証言すれば千恵子との不倫関係が暴かれ、家庭も出世も失うことになる…。一つついた嘘を隠すためにまた嘘をつかなければいけなくなり、やがて事態は取り返しのつかない局面を迎えるのです…。

 

『証言』は何度も映像化されていて、一番有名なのは最初に映画化され、1960年3月13日に東宝系にて公開された『黒い画集 あるサラリーマンの証言』でしょうね。1960年度の『キネマ旬報』ベストテン第2位。原作者の松本清張さんが自分が書いた小説の映像化の中で、3本の指に入ると賞賛した作品の一つです。後の二つは、野村芳太郎監督の『張込み(1958年)』と『砂の器(1974年)』だそうです。

 

「東宝」は、明るく健全で、現代的で新しい感覚を鮮明に打ち出したものが多く、サラリーマンものと呼ばれるジャンルが得意な映画会社でしたが、「黒い画集」シリーズの成功は、サラリーマン・ノワールとでも呼べる、硬質な推理・スリラー映画の流れを作ったと言われています。

 

1965年に、須川栄三監督、池内淳子さん、池部良さん主演で公開された松本清張さん原作の『けものみち』も東宝を代表するスリラー映画の傑作です。

 

『黒い画集 あるサラリーマンの証言』の脚本は、『生きる』、『七人の侍』、『白い巨塔』、『日本のいちばん長い日』、『日本沈没』など、論理的で確固とした構成力が高い評価を得ている橋本忍さん。

 

原作の『証言』は20数ページの短い短編小説なので、橋本さんは登場人物を増やし、原作にないある「事件」を一つ絡ませ、作品世界を損なうことなく、最後の一押しで物語を盛り上げています。

 

主演の小林桂樹さんは、社長シリーズなどのサラリーマンものにも数多く出演されていましたし、「きわめて平凡な人間の姿から非凡な演技がほとばしり出るかけがえのない俳優」と評されていたので、『黒い画集 あるサラリーマンの証言』のどこにでもいる、平凡な会社員が何気ない日常生活の中で、自らが招いた罠に嵌り足をとられ、徐々に追い込まれていく恐怖を見事に表現されていました。

 

小林桂樹さんは、『黒い画集 あるサラリーマンの証言』ではキネマ旬報男優賞、ブルーリボン大衆賞、毎日映画コンクール主演男優賞と、各映画賞を総なめにされた名優です。

 

さてさて、今回の松本清張ドラマ『黒い画集〜証言〜』はどうだったんでしょうか〜。

 

【原作】松本清張「証言」(黒い画集より)

【脚本】朝原雄三 石川勝己

【音楽】沢田完

【出演】谷原章介 西田尚美 浅香航大 ほか

【制作統括】原克子(松竹) 後藤高久(NHKエンタープライズ) 髙橋練(NHK)

【演出】朝原雄三

 

◎原作をこうアダプトしていました。

貞一郎(谷原章介さん)は幸子(西田尚美さん)と結婚し、妻の実家のクリニックを継いでいます。表向きは真面目な仕事ぶりが評判の医師ですが、3年前から付き合う不倫相手がいました。しかも密会を重ねるその相手は、なんと男性の智久(浅香航大さん)でした。だがある日、殺人容疑で逮捕された杉山(堀部圭亮さん)が貞一郎と智久の密会現場に遭遇したとアリバイを主張。不倫がバレることを恐れた貞一郎は、その日、杉山とは会わなかったと偽証してしまいます。

 

許されぬ快楽を隠すため、思わず“偽証”をしてしまった男。その真実が明らかになる時、家族も仕事も失う恐怖から逃れようと、男はある決断をする。だが、その前に妻が夫に下した非情な審判とは…?

 

結論から言うとこのドラマ、つまんなかったです。

 

谷原章介さん演じる貞一郎という男の全てが理解できなかったし、どこにも共感できなかったです。

 

僕はいつも、酷い作品の場合にも、演者さんたちには罪も責任もないというスタンスです。今回もそうです。

 

新鮮で美味しい素材(俳優さんたち)をいかに美味しく調理して、美しく盛り付けるのは演出家と脚本家でしょう?

 

なんですかこのドラマ⁉︎ 久しぶりにちょっと怒りが湧いたドラマでした。酷い脚本と演出にゲンナリしてしまいましたよ…。

 

『松本清張ドラマ』なんて看板外して欲しい。まるっきり別物ですよ〜。だったらオリジナル脚本で勝負すればいいじゃないですか。なんでわざわざ松本清張さんの原作をここまで違うものにしてしまうのか理解に苦しみます。

 

ラストなんて、1966年に公開された成瀬巳喜男監督の『女の中にいる他人』を思い出しちゃいましたよ。

 

僕が唯一心を寄せることができたのは、浅香航大さん演じる智久のキャラクターです。

 

金沢の芸術大学で陶芸を学ぶ院生で、周囲から将来を嘱望される素晴らしい才能の持ち主で、妻子ある貞一郎と付き合い始めて3年、報われない恋だとわかっていても別れる決心がなかなかつかない、揺れる心情は理解できます。

 

智久は貞一郎に首を締められて殺されるのですが、そのきっかけを作った智久の行動や最後の言葉は、彼の貞一郎の家庭を壊してはいけない、別れた方が二人の為だという切実な思いと、精一杯の強がりだったと思うんです。

 

それなのに、貞一郎という男のとった行動が許されるわけがありません。こんな男を演じさせられている谷原章介さんが哀れですよ。

 

僕も同性愛者ですから、智久の気持ちはよくわかりました。

 

でも僕は家庭がある人、ちゃんとしたパートナーのいる人には興味はもちませんけどね。

 

結婚して、子供もいるのに、男も抱ける男性もいるんです。お医者さんや地位や名誉もある人、結構いるんです。

 

こういう人達は、家庭を捨ててまで、真剣に男と付き合うなんてことはしません。その時、性的な欲求を満たせればいいだけです。

 

このドラマの貞一郎と智久のような関係のカップルもいるでしょうが、多分、割り切った付き合いをしなければいつか辛くなるだけですよ。

 

結婚指輪を嵌めている男なんて僕の趣味ではありません(笑)。どんなに男前でもです! ほんとかなぁ(笑)。

 

それと智久の母親を演じた、宮崎美子さん。シーンはわずかでしたが、老け役を厭わず演じられていて、それは感心しました。でも台詞はなくとも、私はあなた(貞一郎)と息子の関係は理解していますよ的な、宮崎さんの表情だけで表現するようなシーンを作れないものですかね〜。メリハリのない演出でした。

 

同性愛の設定なんて、どうしても入れなければいけなかったのでしょうか? ミステリーの部分も中途半端だし、製作者はこのドラマで何を伝えたかったのか?

 

ラストもあんな設定に変えるなら、妻役の西田尚美さんにもっと見せ場を作ってあげなきゃ〜。

もう〜イライラ〜。

 

夫の浮気相手が男だったんですよ〜。それを聞かされた妻にたいする演出があれとは…。もう何も言えません。女性の心の奥に潜む怖さ、したたかさ、ずるさ、絶望…もっと観る側に伝わるように演出してください。

 

舞台を金沢にした理由もなんかあるのかなぁ。疑問だらけです。

 

制作統括の原克子さんがこんなことを言っています。

 

松本清張の「証言」をドラマ化したいと朝原監督と打合せするまでは、まさか男性同士の恋愛話になるとは思ってもいませんでした。しかし、実は隠れ腐女子であった私は、出来上がった脚本を貪るように読んで、うかれ喜びました。この設定に変更したことで舞台を現代にした必然性がグッと増し、ラストまで見応えのあるものになっていたからです。その直後、台風19 号の影響で各地に被害が出て、金沢へ向かう北陸新幹線も大きな被害をうけました。そんな混乱の中、谷原章介さんが貞一郎役を快く引き受けて下さり、役作りのために年末年始もご馳走を諦めて節制し、7キロ近く体重をおとされたと聞いています。「清張もこの脚色を面白がると思うよ」と原作関係者の方が褒めて下さったことも大きな励みとなりました。私のような隠れ腐女子のみなさまも、そうではない方も、楽しんで頂けるドラマとなっています。ぜひご覧ください。

 

「清張もこの脚色を面白がると思うよ」だって。どこから来るんでしょうね。この自信〜(笑)。それも原作者を呼び捨てだし。

 

『腐女子』かぁ〜(笑)。

 

腐女子って、やおいやボーイズラブ(BL)と呼ばれる、男性同性愛を題材にした女性向けの漫画や小説などを好む女性のことですよね。

 

まぁそういうものが好きなら好きでいいですけどね〜。趣味は趣味として仕事はもっと真面目にやってもらいたいもんです。

 

もっと現実を見た方がいいですよ。

 

松本清張という作家が終生、作品の中で何を追い求め、描き続けたのか、理解していればこんな作品は作れないはずですよ。

 

もうハードディスクから消しちゃうからね(笑)。