こんばんは。

 

4月15日・16日、二夜連続で山﨑豊子さん原作『女の勲章』が松嶋菜々子さん主演でスペシャルドラマとして放送されました。

 

山﨑豊子さんの小説のファンとして、制作発表された時から放送を楽しみにしていた作品でした。もちろん原作は高校生の時に読んでいます。

 

『女の勲章』は、1961年に発表された山崎豊子さんによる小説です。「毎日新聞」に連載されました。同年、中央公論社にて単行本が2巻で刊行され、翌年にパリの描写について加筆、訂正し新装版が刊行されました。1962年には同社で文庫化され、1965年には新潮文庫版が全1冊で刊行されました。(後、2005年に上下2分冊で再刊)僕が読んだのはこの新潮社の文庫全1冊版でした。

 

1961年には大映(東京撮影所)製作で映画化されています。僕のDVDコレクションの1本です。監督は女性映画の名匠と呼ばれた、吉村公三郎さん。脚本は監督としても名作を多数お作りになられた、新藤兼人さん。

 

ヒロイン、大庭式子役は京マチ子さん、他に若尾文子さん、叶順子さん、中村玉緒さんら大映を代表する名女優さんたち。八代銀四郎役は田宮二郎さん。田宮さんの出世作と言われています。

 

日本映画黄金期を代表する女性映画の1本だと思いますね。

 

1962年と1976年に連続ドラマ化されています。どちらもフジテレビです。

1962年版の大庭式子役は月丘夢路さん(5月3日に肺炎のためお亡くなりになられました)。1976年版は三田佳子さんでした。

 

僕、幼い頃に、夕方に再放送していた1976年版のドラマを観たことがあるのです。細かいところはほとんど憶えてはいませんが、三田佳子さんが日輪を模った、学校のシンボルであるステンドグラスの下で自ら命を断つシーンだけは強烈に記憶に残っています。三田佳子さんは名女優ですからね、幼い僕の心にも何か強いインパクトを与えてくれる演技だったのかもしれません。

 

1976年のドラマ版で八代銀四郎を演じられたのは片岡孝夫さんでした。現在の十五代目片岡仁左衛門さんですね〜。当時はとても話題になったそうですね。「日本映画専門チャンネル」でこのドラマ版、放送してくれないかな〜(笑)。

 

◎今回、2017年版のキャストです。

大庭式子:松嶋菜々子さん

八代銀四郎:玉木宏さん

津川倫子:ミムラさん

坪田かつ美:相武紗季さん

大木富枝:木南晴夏さん

野本敬太:駿河太郎さん

キヨ:江波杏子さん

曾根英生:小澤征悦さん

安田兼子: 浅野ゆう子さん

白石庸介:長塚京三さん

ナレーション :加賀美幸子さん

◎スタッフ

脚本:浅野妙子さん

演出:西浦正記さん

音楽:得田真裕さん

主題歌:薬師丸ひろ子さん「追憶」

衣装デザイン:中井英一朗さん

帽子デザイン:石田欧子さん

ペンダントデザイン:森下まゆりさん

ロケ協力:光明寺 (鎌倉市)、川口市立グリーンセンター、明治村、ワープステーション江戸、埼玉県立深谷商業高等学校、東京女子大学 ほか

企画協力:新潮社、山崎定樹さん、野上孝子さん

フランスロケ制作:アベイユ・フィルム

プロデュース:太田大さん、中山ケイ子さん

制作協力:FCC

制作著作:フジテレビ

 

『女の勲章』ストーリーを簡単に。

大阪・船場の裕福な羅紗問屋の娘として何不自由のない暮らしをしていた大庭式子(松嶋菜々子さん)は、戦争で家族も家も失ってしまいます。焼け野原の中、これからは洋服、婦人服の時代が来ると感じた式子は闇市で偶然、以前家にあったミシンが売られているのを見つけ、買い求め、自宅の一室を開放し、洋裁教室を始めるのです。

 

それから数年、式子の洋裁教室は人気を呼び、徐々に生徒数も増え、三人の弟子・倫子(ミムラさん)、かつ美(相武紗季さん)、富枝(木南晴夏さん)と共に、甲子園に「聖和服飾学院」という服飾学校の設立に乗り出そうとしていました。

 

東京の国立大学にてフランス文科を専攻し、卒業後は一流企業へ就職したものの、サラリーマンに早々に見切りをつけ、家業である八代商店の男物服地の卸しを手伝っているうちに、聖和服飾学院に出入りするようになった八代銀四郎(玉木宏さん)は次第に式子の信頼を得て、持ち前の商才と人脈を駆使し、聖和服飾学院の学校建設における、折衝業務などを担当するようになって行きます。

 

学院を開校するにあたり、一言の挨拶もなかったことに立腹した関西デザイナー協会会長・安田兼子(浅野ゆう子さん)が式子の前に現れます。協会の許可がなければ学院の開校はできないと言うのです。

 

お嬢様育ちの式子は人に頭を下げることができません。安田兼子の言うことに納得のいかない式子は口答えをしてしまい、安田兼子を怒らせてしまいます。

 

それを執り成し、安田兼子から学院開校の許可証を出させたのも八代銀四郎でした。銀四郎は学院になくてはならない存在になってゆきます。

 

銀四郎は持ち前の商才と人脈を駆使し、競争が激しいファッション業界で、無名だった式子を有名デザイナーへとのし上げていくのです。

 

その裏で銀四郎は、式子を甘い言葉で誘惑し、自分のものにしてしまいます。銀四郎と心ならずもその関係を続けていく式子の船場育ちという誇りと自尊心は、事業の拡大とともに幻惑されて、失われて行きました。

 

銀四郎は、式子以外に式子の3人の弟子、倫子、かつ美、富枝とも体の関係を持ち、お金を渡し、彼女たちが望むような裕福な生活をさせ、次々と開校していく学校の校長や縫製工場の権利を与え、自分の思うがままにしてくのでした。

 

様々な野望、欲望がうずまくなか、式子を助けながら次第に学校の主導権を握っていく銀四郎、そして3人の弟子たち……欲と策略の愛憎劇の渦に式子は巻き込まれてゆきます。

 

成功への階段を上り始めた式子は、大阪から、東京、そしてパリへとファッション業界を舞台に羽ばたいていきます。しかし一方で、銀四郎と関係を持つ弟子たちへの嫉妬心と仕事への重圧で心身ともに疲弊していました。そんな時、銀四郎の恩師・大学教授の白石(長塚京三さん)が現れ、式子の疲れた心に寄り添い包み込む存在となっていくのです…。

 

ファッションデザイナーとして成功への階段を上りゆく式子の未来に待ち受けている運命とは…。

 

ヒロイン、大場式子は大阪・船場(せんば)の裕福な羅紗問屋の娘として生まれ育った女性です。船場は、大阪府大阪市中央区の地域名で、大阪市の中心業務地区にあたり、大坂の町人文化の中心となったところです。

 

豊臣秀吉が大阪城下町経営のため商人を集めて形成し、開発された町家の地で、運河の船着き場の意味から船場と呼ばれるようになったと言われています。

 

伝統的な問屋街が多く,現在も大阪経済の中心地です。北浜の証券街,今橋通の銀行街,道修 (どしょう) 町の薬種街,本町,丼池 (どぶいけ) 筋などの繊維街,南久宝寺町の化粧品・小間物街などが知られています。

 

僕は兵庫県出身ですが、この辺りはたまに遊びに行きました。独特な町の風情はなんとなくわかっているつもりです。道修町の製薬会社のお嬢様に知り合いがいて、自宅にお邪魔したことがありますが、敷地内に専属の家庭教師とお医者様のお家が建っていました!それほど僕ら庶民からすると桁外れな暮らしをしている方たちが住んでいる町という印象でしたね。

 

船場を舞台にした名作はたくさんありますから、僕が好きなものを紹介しますね。

 

◎谷崎潤一郎さん原作の『細雪』

大阪船場で古い暖簾を誇る蒔岡家の4人姉妹、鶴子・幸子・雪子・妙子が繰り広げる物語で、三女・雪子の見合いが軸となり物語が展開します。市川崑監督の映画版も名作です。

 

◎山崎豊子さん原作の『女系家族』

大阪船場で女系が続く老舗問屋の養子婿が死んだことで巻き起こる3人の娘たちの遺産相続争いを描いた作品。三隅研次監督の映画版も最高ですよ〜。いとさん(長女)役の京マチ子さんが絶妙なんです。

 

◎谷崎潤一郎さん原作の『春琴抄』

大阪道修町の薬種商鵙屋の次女、盲目の春琴に丁稚の佐助が献身的に仕えていく物語。山口百恵さん、三浦友和さん、ゴールデンコンビの映画版、大好きです!

 

◎山崎豊子さん原作の『ぼんち』

四代続いた船場の河内屋という老舗足袋問屋の一人息子、喜久治の、放蕩と商人としての半生を描いた物語。喜久治を演じた市川雷蔵さんが素晴らしいんです!

 

◎菊田一夫さん原作、久松静児監督の『丼池(どぶいけ)』

昭和27年、女子大生上がりの高利貸し、司葉子さんが、大阪丼池界隈でエネルギッシュに成り上がるさまを描いた作品。他に三益愛子さん、森光子さん、浪花千栄子さんのコテコテ感がたまりまへん(笑)。

 

僕が印象に残っている船場が舞台の作品はこれくらいですが、これらの作品を読んだり、観たりされると船場という町の風景や町で生きている人々の独特の風俗やしきたりがなんとなく感じられるのではないでしょうか。

 

で今回の、2017年版『女の勲章』を観た感想ですが…。

 

山崎豊子さんのファンとして、原作のファンとして、今、この小説を映像化してくれたことには感謝をしています。制作費を出してくださった、スポンサーの皆様にも感謝したいと思いますが、僕としてはなんとなくもどかしさの残る作品でしたね〜。

 

細かいところをあげると色々あるのですが…、一番大きなところは関西らしさがあまり感じられなかったことです。原作者の山崎さんは大阪船場のご出身です。実家は老舗昆布屋の小倉屋山本さん。船場という町で、商魂たくましく生き抜く大阪商人を愛してらした方ですし、だからこそ、『女の勲章』のヒロイン、大庭式子を船場で生まれ育った女性として描かれたのだと思うのに、ドラマを作っている人たちはそれをほとんど気にしていない感じがして非常に気になりました。

 

他の方も言われていますが、大庭式子を演じた松嶋菜々子さんが、標準語を話すことにとても違和感がありましたね〜。

 

物語の最初に玉木宏さん演じる八代銀四郎が式子に「なんで船場言葉を話さないのか」と聞くシーンがあります。

 

式子はこう答えます。「戦争で全部無くしたわ。家も家族も。それを可哀想だという人もいるけど、私はいっそ清々したわ。土地の言葉を捨てて、新しい時代の人間になると決めたの」と。

 

これは原作にそう書いてあることなので、仕事場で標準語を話すのはまあいいでしょう。でも、自宅では心を許した女中の江波杏子さん演じるキヨと話す時くらい、船場言葉でもいいじゃないですか〜。キヨは大庭家の女中頭で、式子が幼い頃から奉公していて、戦後も式子を側で見守っているという存在なのですから。

 

名女優の江波杏子さんを使っていながら、見せ場もあまり無く、もったいないと思いました。

 

八代銀四郎役の玉木宏さん、大木富枝役の木南晴夏さんだけが関西弁で、他の登場人物ほとんどが標準語ってそれはちょっととないんじゃない?と思いました。

 

映画版は京マチ子さんはじめ、出演者の皆さん、ほとんど関西弁のイントネーションで、原作の雰囲気を壊すことない演技でしたけど…。

 

そんなことは些細なこだと言われるかもしれませんが、関西人の僕としては非常に気になることだったんです(笑)。イントネーションがおかしいとかの話ではないのです。関西人が関西弁を喋らないなんて!(笑)。

 

関西デザイナー協会会長・安田兼子を演じた浅野ゆう子さんまでも標準語とは!わざわざ神戸出身の浅野さんをキャスティングしておきながらあんまりですよ〜。犬走比佐乃さんによる、浅野さんのスタイリングは素敵でしたけどね。

 

ファッション界の話ですから、華やかな衣装が次々と登場し、目は楽しませていただきましたが、この物語の芯というか核となるもの、テーマといいますか…掴めなかったですね〜。

 

この物語の時代設定は1950年代です。高度経済成長がまさに始まろうとしていた時期ですが、現在とは違い、女性の発言力や地位がまだまだ低かった時代。そんな時代にファッションを通じて、女性を豊かに美しくしたいと、誇り高く生きた女性の物語です。

 

ヒロイン、大庭式子は育った環境もあると思いますが、素直に真っ直ぐに育った、陰というものがない女性です。しかし清らかな心と想いだけでは夢は叶わないのです。

 

そんな式子に取り入り、つけ込んだ一人の野心家・八代銀四郎という男に翻弄され、利用され、嫉妬と欲望、虚栄と虚飾に満ちたデザイナー界で式子は生きて行かざるを得なくなります。

 

式子は自身の力だけでは成し得なかった成功と栄光を銀四郎によって与えられます。銀四郎と男女の関係になり、事業が拡大し、デザイナーとしての名声が高まるにつれ、式子は次第に初心を忘れてしまうのです。

 

松嶋菜々子さんは、船場の嬢さん育ちで、誇り高く、凛と背筋を伸ばして夢に向かって生きている女性を美しく演じてらしたとは思いましたが、それだけではこの大庭式子というキャラクターの表面しか描けてはいないのではないでしょうか。人間の顔には表もあれば裏もありますよね?彼女だって、名声やお金や銀四郎の愛欲に溺れた時だってあったはずだと思うんです。そういうところをさらりと上手く表現してもらえていたら、もっと厚味のあるキャラクターになったのにと感じました。

 

経営と名声を保つため、式子は休みなく働かざるを得なくなります。3人の弟子とも関係を持つ銀四郎との爛れた関係にも心身ともに疲れきった式子の前に、銀四郎の大学時代の恩師で国立大学仏文科の白石教授が現れます。どこか寂しげで陰があり、真摯に人生に向き合う静謐な姿に式子の心は癒されてゆき、魅かれて行くのです。

 

白石教授を演じられたのはベテラン、長塚京三さんです。

良かったですね〜。長塚さんが登場してから俄然ストーリーが面白くなりました。白石教授は式子に好意を持ちますが、銀四郎との関係に疑問をもち、学院経営をお金を稼ぐ手段としている銀四郎に対しても批判的なのです。

 

そして『デザイナーというのは何処までも純粋に一つの新しい服飾造形、デザインを創造していく人ではないのですか?パリのデザイナーたちは、そうした服飾デザイナーとしての立場がはっきりしていますね。だから大きな洋裁学校や沢山の弟子を擁していなくても、いいデザインを作りだす人は立派なデザイナーとして遇せられていますね』と式子にデザイナーとしての本来の姿に返れと示唆するのです。

 

その言葉に式子の心は大きく揺れ動くのです。

 

白石教授の人を寄せ付けない冷やかな厳しさの裏には、学問に熱中するあまり、妻の存在をないがしろにし、妻は寂しさから自分の教え子と関係を持ち、それを苦にして、その学生と海に身を投げて情死したという過去があったからです。

 

それ以来、女性との関係を絶ってきた白石教授でしたが、式子の真っ直ぐで真剣な情熱に次第に心を開き、愛を受け入れるのでした。

 

僕はこの物語の中で一番好きなキャラクターかもしれないです。白石教授って。一番、人間らしい感じがします。長塚さんはそんな男を繊細に演じてらっしゃいました。

 

しかし二人の愛も銀四郎の嫉妬と策略によって引き離されてしまうのです。

 

白石教授に去られ、銀四郎と過酷な現実から逃れられないと知った式子は絶望し、自ら死を選ぶのでした。

 

現在の価値観からすると、式子が死を選んだ決断に何故?と思われる方もいるでしょうね。そんなことぐらいで死ぬなんてと。ここが観ている側に納得してもらえないと成功とは言えないなと僕は感じていました。今回のドラマが成功していたかと聞かれれば微妙だなあと思います。

 

苦労知らずの船場育ちのお嬢さんが、男に利用され、弄ばれ、絶望し自殺した。ただの意思の弱い女性の栄光と破滅の物語じゃん?なんて思われたとしたら残念だなとも思います。

 

もっと式子の死ぬシーンは、時間をかけて、丁寧な描写で描いて欲しかったですね。

 

式子が亡くなっても、3人の弟子たちは、誰一人涙も流しません。聖和服飾学院を取り巻く環境は式子がいなくなっただけで何も変わらないのです。式子の残した聖和服飾学院の経営は銀四郎が引き継ぎ、式子の代わりに倫子が院長になり、ますます発展していくのでしょう。

 

式子の人生ってなんだったのでしょう。虚しいですね。

 

ラストに原作にはないシーンがありました。式子の死亡記事が載った新聞を見ながら銀四郎が突然、大粒の涙を流して嗚咽をするのです。

 

僕はこれを観て、新しい解釈だなあと思いました。原作では銀四郎ってお金の為だけに女性を利用する非常な野心家というキャラクターでしたが、今回のドラマでは、銀四郎は式子のことを本気で愛していたという設定だったんですね。

 

銀四郎は式子が好きで、自分なりに一生懸命、式子の夢を叶えることに人生を捧げてきたのかもしれない。でも式子にはわかってもらえず、式子の心は自分からどんどん離れていく苦しさ。だから自分にない誠実さを持つ白石教授が憎くて、羨ましくて、嫉妬して、式子と別れさせたのに、それが原因で式子は死んだ…。

 

そんな想いが一気に溢れ出したのでしょうね。いいシーンでした。

 

この時代に、この原作を映像化するには、こういう解釈の方が指示されるのでしょうね。

 

原作の銀四郎は式子が死んだ後、こう言います。

「おれは大庭式子の欲しがった虚栄を与え、胸に勲章を飾り立ててやるように名声と富を築いてやったのだ。いわば俺は女の勲章を製造し、それを女の胸にぶら下げさせて、おれの商売にしてきただけのことだ、大庭式子は、自分の勲章が気に入らなくなったからといって、なにも死ぬほどのこともないのだ。気に入らなければ勲章を取り換えさえすればよいのだ」と。

 

ここに原作者、山崎豊子さんの言わんとする、タイトルの意味が込められているような気がするので、ドラマの中でも使って欲しかったかなと思いました。

 

八代銀四郎を演じた、玉木宏さん。熱演でしたね〜。最後にみんな持って行っちゃいましたね(笑)。今回のドラマは女性が主役なのに、銀四郎のおかげで影が薄い気がします。それじゃあ困るんですけどね〜(笑)。でも仕方ないですよ。玉木宏さん、良かったですもん。

 

インタビューで、玉木さんはこうおっしゃっています。

今回ドラマに入るにあたって本も映画も見ましたが(映画で銀四郎を演じている)田宮二郎さんの印象がかなり強いです。

どこか威圧するわけではないけれどまくしたてるような、高圧的になりすぎない程度に高圧的になる、その案配がすごく微妙な感じがしました。

わーっと言ったあとに抜くところもあったり、早口にしてみたり、ちょっとゆっくりめにしてみたり、敢えてイライラしているけれど柔らかく話したり、言葉使いがこのキャラクターをつくる上で大事なのではないかと思います。

 

これを読んで僕は田宮二郎さんのファンですし、田宮さんの出世作と言われている『女の勲章』をちゃんと玉木さんは観てくれたのだと嬉しくなりました。必ず、同じ役を演じると比較されるのは当たり前です。日本の若手俳優さんや、監督で、過去の作品はあえて観ないようにしていると言う方々がいるのですが、僕なんかはそれを信じられないという思いでいつも聞いているからです。

 

過去に大ヒットした名作と呼ばれる映画を、何十年か後にドラマ化する時に先輩が演じた作品を影響受けるのがいやだからなどと言って観ないなんてどうかしてますよ。先輩はこういうアプローチでこの役を演じているのか、じゃ僕はこうしようとか普通は研究するものじゃないのでしょうか。

 

最近、そういうドラマがありましたが、主演の俳優さんは過去の作品は観ていないと言っていました。ドラマ観ました。最低でした(笑)。

 

僕は玉木さんってちゃんといただいた役柄に対して真摯に向き合っている方だなと思い好きになりました。

 

結果は観ればわかります。玉木さんの力がこのドラマを最後まで引き締めていましたよ。

 

最後にドラマのテーマソングが、薬師丸ひろ子さんが歌う「追憶」だったんです。

 

1973年に公開された、シドニー・ポラック監督の映画『追憶』(The Way We Were)の主演、バーブラ・ストライサンドが歌った主題歌ですよね。アカデミー主題歌賞を受賞した名曲で、僕は映画もこの曲も大好きなのでこの曲には何の文句もないのですが…。

 

薬師丸さんの透き通るような歌声は素晴らしいのですが、このドラマに合ってたかと言われればちょっと疑問です〜。

 

ドラマのプロデューサーの太田さんという方が映画『追憶』で描かれた、“誰よりも強い絆と愛情で結ばれたはずだったのに、最後まですれ違い続けて人生を共にできなかった”男女の悲しいけれど美しい様が今回のドラマにも通ずるところがあると思い、テーマソングにはこの曲以外考えらなかったと言っているのですが、プロデューサーは『女の勲章』という物語をそう捉えてドラマ化したのか〜。だから銀四郎は最後に涙を流したんだと合点がいきました。

 

でも…『女の勲章』ってそういう物語なのかな〜(笑)。

 

 

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