こんばんは。

今年、古希を迎えられた「俺たちの旅」や「シクラメンのかほり」など数々の名曲を生み出してきたシンガー・ソングライター小椋桂さんが、9/12(金)・13(土)・14(日)・15(月・祝)の4日間、渋谷にあるNHKホールで自身のキャリアを総括する「生前葬」と題したコンサートを開催されました。

その模様が、10月19日(第1日・第2日 計89分)、10月26日 (第3日・第4日 計89分)に編集されて、NHK・BSプレミアムで「小椋佳生前葬コンサート」として放送されました。

今日はその感想と、僕が好きな小椋桂さんの曲について書いてみたいと思います。

会場のNHKホールは東京都渋谷区神南のNHK放送センター内にあります。NHKの公開放送番組の収録や、NHK交響楽団の定期演奏会、その他クラシック、オペラ、バレエ、ポップスなど各種コンサート、古典芸能の上演、講演会、国際会議、各種式典等に幅広く使用されています。NHK紅白歌合戦、BS日本のうた、NHK歌謡コンサート、思い出のメロディーなどもここで収録が行われています。

僕も何度か色んなアーティストの公演を観に、足を運んだことがありますが、他のホールにはない独特の匂いや空気感のある場所で、僕の好きなホールの一つです。

NHKホールはNHKの公開番組などでも利用されることから、2日以上1人のアーティストが公演を行うことは難しいのですが、今回はNHKが小椋佳さんの意向を汲取り、異例の4日間公演が実現したんだそうです。

でもどうして異例の4日間公演を小椋さんは敢行されたんでしょうか。それに何故「生前葬コンサート」なのか?

小椋さん曰く、「僕は白州次郎同様「葬式無用 戒名不用」と考えていますが、家内は常識人なので、僕が死んだら きっと人並みの通夜や告別式をやるつもりでしょう。僕としてはそんな煩わしいことを家族に押し付けるのは本意ではないので、僕が生きているうちに済ませてしまおうと思いました。」

「僕の同級生や、同期の人間のほとんどは、既に会社、職場をリタイヤしています。僕もそろそろ、と考えていますが、この仕事には『定年』がない。だったら自分で『けり』をつけようという考えに至りました。」とおっしゃっています。

そうですね。会社員の方は普通、60歳で定年ですから、古希を迎えられた小椋さんがそう考えられるのもわかりますね。

小椋さんは、57歳のとき、胃がんの手術を受けて胃の4分の3を切除されてから大好きだった食事の量も随分減ってしまわれて、お若い頃より痩せられたので、体力的な面でもアーティストとしての活動にけじめをつけておきたいと思われたのかもしれません。

小椋さんは49歳まで、銀行員として働いてらして、アーティストと二足のわらじを履いておられました。銀行員時代は宴会が多く、多いときは1日2~3軒をかけもちされていたそうです。タバコは1日40本! 健康には自信がおありでしたが、血糖値が正常なら100(mg/dl)前後なのに、小椋さんは400と異常に高かったそうなので、気づかないうちに身体は悲鳴をあげてしまうんですね。糖尿病もわずらっておられたようですし。劇症肝炎で約1カ月の入院生活もされてるんですね。お身体は大切にしてほしいです。

そんな生活の中で、これだけの作品を生み出されていたのですから、おだやかで、静かな印象の方ですが、とてつもないエネルギーと曲作りに対して熱い情熱をお持ちの方なんだと感じます。

布施明さんに提供した『シクラメンのかほり』が大ブレイクし、マスコミが曲を作った小椋桂とはどんな男だと騒ぎ出し、小椋佳さんが初めて公に姿を現したコンサート(1976年10月7日)会場もNHKホールでした。1976年11月11日にコンサー トの内容を映像化した番組、NHK特集「小椋佳の世界」は、31.2%の高視聴率を記録したんだそうです。僕は「NHKアーカイブス」でこの番組を観ましたが、たくさんの観客を前に恥ずかし気に歌う小椋さんが初々しかったです!

今回の「生前葬コンサート」は、2000以上ある自身の作品を聴き直し、「最後に歌っておきたい」という曲を選んだばれたのです。1日25曲ずつ、4日間で計100曲を披露されました。

NHK・BSプレミアムでの放送は4日間行われた公演を編集したものでしたが、聞きごたえがありましたよ~。小椋さんでしか表現できない世界観と、小椋さんの静かさの中に熱く揺らめく炎のような、歌にたいする情熱が伝わるような、お若い頃から変わらない歌声を堪能させていただきました。

僕は幼い頃から、布施明さんに提供された、第17回日本レコード大賞受賞の「シクラメンのかほり(1975年)」、中村雅俊さん主演のTVドラマ主題歌「俺たちの旅(1975年)」、資生堂のCMイメージソング「揺れるまなざし(1976年)」、梅沢富美男さんが歌った「夢芝居(1983年)の4曲が大好きで、今でも聞き続けている曲なのですが、この4曲も今回のコンサートで歌っていただけたのでうれしかったです。名曲ですからね。

2000年に小椋さんはデビュー30周年を迎えられ、それを記念した2枚組ベスト・アルバム「Debut」を発表されました。このアルバムのために書き下ろした4曲の新譜を含む全30曲、すべて海外のアーティストと新しいアレンジで、3ヶ月にわたってロンドン、パリ、ニューヨークでレコーディングされたアルバムで、発売された時に購入して、その中の1曲に胸を鷲掴みされたように感動した曲があったのです。

現在では名曲としてたくさんの方にもおなじみの曲だと思いますが、2000年の『第51回NHK紅白歌合戦』で五木ひろしさんが大トリで歌われた『山河』という曲です。五木ひろしさんから、「自分の代表曲になるような、大きな曲」をという依頼で書かれた曲のようですね。小椋さん作詩で作曲は「愛しき日々」でも組まれている堀内孝雄さん。

こんな詩です。
「山河」
作詞/小椋佳さん 作曲/堀内孝雄さん

人は皆 山河に生まれ、抱かれ、挑み、
人は皆 山河を信じ、和み、愛す
そこに 生命をつなぎ、生命を刻む
そして 終(つ)いには 山河に還る。
顧みて、恥じることない 足跡を山に 残したろうか
永遠の 水面の光 増す夢を 河に浮かべたろうか
愛する人の瞳に 愛する人の瞳に
俺の山河は美しいかと。美しいかと。

歳月は 心に積まれ 山と映り
歳月は 心に流れ 河を描く
そこに 積まれる時と、流れる時と
人は誰れもが 山河を宿す。
ふと想う、悔いひとつなく悦びの山を 築けたろうか
くしゃくしゃに嬉し泣きする かげりない河を抱けたろうか
愛する人の瞳に 愛する人の瞳に
俺の山河は美しいかと。

顧みて、恥じることない 足跡を山に 残したろうか
永遠の 水面の光 増す夢を 河に浮かべたろうか
愛する人の瞳に 愛する人の瞳に
俺の山河は美しいかと。美しいかと。

詩が素晴らしいのですが、堀内孝雄さんの曲も壮大でまたまた素晴らしくて、小椋さんの歌唱もドラマティックに歌いあげるのではなく、一つの道を真っすぐに生きてきた男でなければ判らない人生の尊さや迷いを淡々に、自分に言い聞かせるように歌われているようで、初めて聞いた時、僕はとても感動したのです。

それで僕はこの感動を誰かに伝えたいと思い、このブログにちょくちょく登場する、亡くなったヘアメイクアーティストだった友人に「山河」を聞いてもらいました。すると彼も大感動してくれて、あの頃は僕の回りでは皆、山河は良い!と騒いでいました(笑)。

僕は「山河」を一度、生で聞かせてもらったことがあります。この曲を初めて聞いて、そんなに日が経ってなかったと思いますが、亡くなったヘアメイクアーティストだった友人が親しくさせていただいていた方で、神奈川県の川崎市で、ある大きなアミューズメント施設の経営をされている女性がいらして、その敷地内にミニライブができる会場があり、そこで「小椋桂さんがコンサートをするから観にいらっしゃい」と招待してくださったのです。

行く前は二人で「山河」は歌ってくれるのかなあと話ていましたが…。なんと歌ってくれたのです~(笑)。めちゃめちゃ感動しました! ライブの後に別室で打ち上げがあり、そこにも呼んでいただいて、緊張してお寿司をいただいた記憶があります(笑)。トイレで寺尾聡さんにお会いしたのも驚きでした!

すいません。僕のどうでもいい小椋桂さんの思い出でした(笑)。

小椋桂さんと言えば、美空ひばりさんが歌われた「愛燦燦(1987年)」という名曲もありますよね。この曲は元々、味の素のCM用に作られて、話題となりシングルカットされたそうなのですが、このCMのヘアメイクを担当しているのが、亡くなったヘアメイクアーティストの友人なんです。ハワイロケでYouTubeでCMは観れますから、興味のある方は観てみてください。

「山河」で思い出しましたが、亡くなったヘアメイクアーティストの友人の戒名は「美山明容」といいます。つけてくださったご住職によると、美容の世界でたくさんの美しい山を築いた方だからとおっしゃっていました。「明(あきら)」は彼の名前です。

小椋桂さんは昨年、「闌(TAKENAWA)」というタイトルの「ラストアルバム」とおっしゃるアルバムを発表されました。自分の人生に「けり」をつけると小椋さんは言われていますが、何かまだやってくれるのではないかなあと僕は期待しています。

「気力、体力」的にはステージで歌うことは叶わないとしても、曲作りはまだまだお出来になるはずです。「歌が好きで 好きで好きで」と今まで歩んでこられた人生なのですから。僕はそう思っています。

僕も死ぬ時は「顧みて、恥じることない足跡を、山に残したろうか」と言って死にたいです(笑)。小椋佳 ベスト さらば青春 しおさいの詩 めまい 揺れるまなざし 逢うたびに君は 残された憧憬.../キープ株式会社

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