こんばんは。

もう2週間前になりますが、会社でまたチケットをいただいて、新橋演舞場で「四月花形歌舞伎」を観てきました。実は今回は歌舞伎以外に石川さゆりさんの明治座公演のチケットもありますと、掲示板に書き込みがあったんですね。ほんとうは石川さんの公演のチケットがほしかったのですが、僕が管理課へ行った時には一足違いで他の社員の手に渡ってしまっていて、歌舞伎のチケットしか残っていなかったんです~。ちょっと残念でしたけど今回観た歌舞伎もよかったですよ~。

演目は「通し狂言 仮名手本忠臣蔵」です。僕が観たのは夜の部でした。

「五段目」山崎街道鉄砲渡しの場/同 二つ玉の場
「六段目 」与市兵衛内勘平腹切の場
 幕間
「七段目 」祇園一力茶屋の場
「十一段目 」高家表門討入りの場/同 奥庭泉水の場/同 炭部屋本懐の場

配役
【五・六段目】
早野勘平   市川亀治郎
斧定九郎   中村獅童
不破数右衛門 坂東亀三郎
千崎弥五郎  坂東亀寿
百姓与市兵衛 市川寿猿
判人源六   坂東薪車
一文字屋お才 市川笑三郎
母おかや   坂東竹三郎
女房おかる  中村福助

【七段目】
大星由良之助 市川染五郎
寺岡平右衛門 尾上松緑
千崎弥五郎  坂東亀寿
竹森喜多八  中村萬太郎
矢間重太郎  坂東巳之助
大星力弥   中村児太郎
仲居おつる  中村歌江
鷺坂伴内   市川猿弥
斧九太夫   松本錦吾
遊女おかる  中村福助

【十一段目】
大星由良之助 市川染五郎
大星力弥   中村児太郎
小汐田又之丞 大谷廣太郎
木村岡右衛門 大谷廣松
大鷲文吾   澤村宗之助
竹森喜多八  中村萬太郎
小林平八郎  中村亀鶴

「仮名手本忠臣蔵」は歌舞伎を代表する演目の1つで、元禄時代に起こった赤穂浪士による仇討ちを劇化した「時代物」の「義太夫狂言」です。物語の設定は、南北朝時代の騒乱を描いた『太平記』に登場する人物に置き換えられています。史実の吉良上野介(きらこうづけのすけ)は高師直(こうのもろのう)、浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)は塩冶判官(えんやはんがん)となり、大石内蔵助(おおいしくらのすけ)は大星由良之助(おおぼしゆらのすけ)という役名で登場します。物語は全11段構成で、師直による判官の妻顔世御前(かおよごぜん)への横恋慕から、苦心の末に由良之助以下の四十七士が討入りを遂げるまでを描いています。

◎まずは五段目から
猟師となった勘平(市川亀治郎)は、山崎街道で塩冶浪人、千崎弥五郎と出会い、仇討ちに加わるための資金調達を約束します。一方、おかる(中村福助)の父、与市兵衛は、勘平のために、娘おかるを祇園のお茶屋「一文字屋」に身売りすることでその資金を用立て、前金五十両を懐に家路を急ぎますが、山賊となった塩冶浪人、斧定九郎(中村獅童)に斬り殺され、金も奪われてしまいます。その定九郎も、勘平が猪を狙って放った鉄砲であえなく絶命。自分が人を撃ったことを知り慌てる勘平ですが、懐の金に気付くと、それを手に逃げ去っていくのでした。

◎六段目
おかるを引き取りに来た一文字屋お才と判人源六の話から、勘平は自分が与市兵衛を殺したと早合点してしまいます。勘平はおかるの母おかや(坂東竹三郎)と、訪ねてきた千崎や不破数右衛門に問い詰められ、切腹して自らの思いを吐露します。それを聞いた千崎が与市兵衛の亡骸を改めると鉄砲で討たれたのではなく、刀で切られたことが事が判明し、疑いの晴れた勘平は仇討ちの連判状に血判を押すと、息絶えるのでした。
この六段目は感動しました~。一つの誤解と勘違いが段々と一人の男を追いつめ、悲劇へ傾れ込んで行く様は見事な作劇ですね。おかると勘平のラブストーリーは「忠臣蔵」の中でも際立つ場面で、今までも色んな方が演じてらっしゃいますが、今回の亀治郎さんの勘平は素晴らしかったです。歌舞伎の芸は先人から代々受け継がれていくものだと思いますが、亀治郎さんを観ていると、教えられたことはもちろんきっちりやる、プラス俺にしかできない勘平を魅せてやるんだ!という気迫が観ている側にビンビン伝わってきて、グイグイ引き込まれてしまいました。
遊郭へ売られていく妻、おかるとの別れのシーンの哀切さ。お軽の母おかやに金の為に与市兵衛を殺したと誤解され、なじられても何も言えない辛い心情。愛するお軽と別れてでも主君の仇討ちに参加することが自分の生きる証だと願い、揺れ惑う武士としての誇り。様々な感情を亀治郎さんは演じ切っていたと思います。僕、感動すると身体が揺れるんですね。涙を堪えているとそうなるんです。六段目は何度も身体が揺れました~。歌舞伎は客席が明るいことが多いので涙を流すと恥ずかしいんです。

◎七段目
祇園の一力茶屋で遊興に耽る由良之助(市川染五郎)のもとへ、大星力弥が顔世御前からの密書を届けに来ます。由良之助が読むその書状を、遊女となったおかるは二階から、師直に内通する斧九太夫は床下から盗み読みます。それに気付いた由良之助は、おかるを身請けすると言って去ります。その身請けは偽りで、実は密書を読んだおかるを殺す心積もりだと悟ったおかるの兄、寺岡平右衛門(尾上松緑)は、自ら妹を手に掛け、その功で仇討ちに加えてもらおうとし、おかるも自ら兄に討たれようとします。そこへ現れた由良之助がふたりを止め、死んだ勘平の代わりにおかるに斧九太夫を討たせると、平右衛門を仇討ちの連判に加えるのでした。
七段目は有名な「祇園一力茶屋の場」です。花魁姿のおかるも登場し華やかな場面です。染五郎さんの由良之助は抑制の利いた凛々しさが新鮮でした。声がお父様の幸四郎さんにそっくりで驚きましたね~。心のうちを味方にも打ち明けられず、耐えに耐えて耐え忍んできた想いを斧九太夫に対して爆発させるシーンが良かったです~。ここでも泣くのを堪えるのに必死でした。おかる役の福助さんの死んだ勘平の愛に生きる一途さも胸を打ちました。

◎十一段目
由良之助に率いられた浪士たちが師直の屋敷に討入り、師直の家臣小林平八郎らと激闘を繰り広げた末、ついに師直を討ち取ります。三月大歌舞伎で観た「荒川の佐吉」というお芝居で、染五郎さんが演じた佐吉の幼馴染みの大工の辰五郎役が素晴らしかった中村亀鶴さんが小林平八郎役でした。出番は少ないのですが、なんだか気になる役者さんですね。

通し狂言なので昼の部は「大序」から始まって「三段目」「四段目」「道行」だったのですが、できることなら最初の「大序」から観たかったですね。いただいたチケットだから贅沢は言えませんけど。でもいつか最初から通しで観たいなと思います。昼の部には塩治判官役で尾上菊之助さんが出演されてたんです。菊之助さん観たかったなあ~(笑)。

3月、4月と続けて歌舞伎が観れて幸せでした。タダだし(笑)。感謝しなくては。演舞場の近くには桜の木がたくさんあって、この日は七分咲きくらいでしたがとても綺麗で歌舞伎観劇には最適な日和でした。これからの歌舞伎界を担う、若手達が演じる「仮名手本忠臣蔵」は躍動感があって瑞々しくてたくさんの感動をもらえました。歌舞伎界は彼たちが立派に受け継いでくれることでしょう。安泰ですね。

なんだか歌舞伎にはまりそうです~(笑)。