こんばんは。

23日にWOWOWライブで舞台「8人の女たち」の
生中継があり、楽しい舞台だったので感想を書いて
おこうと思います。

劇場は「ル テアトル銀座」でした。僕、この劇場
好きなんですよ~。劇場の客席のシートって赤い色が
多いと思うのですが、「ル テアトル銀座」は深い
ブルーでなんだかそれだけで落ち着く感じがして
好きなんです。

ここでも色んなお芝居を見させてもらいました。
坂東玉三郎さんの「天守物語」「エリザベス」「夕鶴」
黒柳徹子さんの「マスター・クラス」「ライオンのあとで」
「喜劇キュリー夫人」
平幹二朗さんと佐久間良子さん共演で話題だった「鹿鳴館」
HIVをテーマにした大作「エンジェルス・イン・アメリカ」
などなど、素晴らしい舞台ばかりです。

今回の「8人の女たち」は生中継ということもあり
開演前の劇場のざわめきや出番前の8人の主演女優さん
たちのインタビューや1幕と2幕の間の休憩時間も
放送されて編集なしのライブ感が楽しめました。

番組の進行役はワイドショーなどのコメンテーターで
おなじみの松尾貴史さんとWOWOWの女性アナウンサー
中島そよかさん。上演終了後には松尾さんと演出のG2さんの
トークもありましたよ~。

「8人の女たち」はフランスのロベール・トマが1961年に
執筆した推理劇が原作です。
〈出演 〉
浅野温子さん・ピエレット/大地真央さん・ギャビー
加賀まりこさん・マミー/戸田恵子さん・オーギュスティーヌ
荻野目慶子さん・マダム・シャネル/牧瀬里穂・ルイーズ
マイコさん・シュゾン/南沢奈央さん・カトリーヌ
〈スタッフ〉
演出・上演台本:G2/美術:松井るみさん/照明:高見和義さん
音楽:佐藤史朗さん/音響:井上正弘さん/衣裳:原まさみさん
ヘアメイク:田中エミさん

ストーリーを簡単にご紹介しますね。
1950年代、パリ郊外のある屋敷が舞台です。クリスマスのために
集まる家族と、忙しく働く使用人の目の前で、屋敷の主人が
死体で発見されます。彼の背中には短剣が刺さっており、自殺
ではなさそうなのです。雪に閉じ込められた屋敷の中にいる
8人の女性は誰が犯人でもおかしくない状況です。
お互いが疑心暗鬼になっていく中、隠されていた事実が
次々と明らかになっていきます。犯人は一体誰なのか…。
じゃじゃ~ん。面白そうでしょ?

2004年にも舞台化されているそうです。
劇場は天王洲のアートスフィアです。演出は俳優の江守徹さん。
〈出演 〉
山本陽子さん・ピエレット/木の実ナナさん・ギャビー
喜多道枝さん・マミー/安寿ミラさん・オーギュスティーヌ
岡本麗さん・マダム・シャネル/毬谷友子さん・ルイーズ
佐藤江梨子さん・シュゾン/ソニンさん・カトリーヌ
最初マミー役は加藤治子さんだったそうですが
加藤さんが狭心症を起こされて残念ながら降板され
喜多道枝さんが代役をつとめられたそうです。
なかなかこの舞台の配役も興味ありますね。木の実さんと
山本さんのけんかシーンは迫力ありそうですもんね。

2002年にフランソワ・オゾン監督がミュージカル仕立てで
映画化して日本でもヒットしたのでご存知の方も多いでしょうね。
ベルリン国際映画祭では、8人の女優全員に対して銀熊賞が
与えられて話題になっていました。オゾン監督は長い間、女優
だけのキャストで映画を撮ることを考えていたそうです。それも
本格的なミステリードラマを。それで見つけたのがロベール・トマが
書いた「8人の女たち」だったそうです。原作そのものは少し時代
とのズレがあったので、ストーリーを単純化し、登場人物の
キャラクターに深みを与え、ユーモアを加えて、現代的に
アレンジを施したそうです。その脚本が今回の舞台の元になって
いるのではないでしょうか。

フランソワ・オゾン監督、良いですよね~。大好きです。
僕の好きな作品は
サマードレス (1997)/海をみる (1997)
クリミナル・ラヴァーズ (1999)/焼け石に水 (2000)
まぼろし (2000)/8人の女たち (2002)
スイミング・プール (2003)/ぼくを葬る (2005)
エンジェル Angel (2007)などなど
「まぼろし」や「ぼくを葬る 」などは見るたびに
泣いてしまいます。

映画「8人の女たち」は人工的に作られたドールハウスのような
邸宅の広間だけを舞台に、50年代に隆盛を極めたテクニカラー
の色合いやダグラス・サーク監督のメロドラマを参考に作られて
います。ダグラス・サーク監督の作品は僕も大好きです~。衣装は
クリスチャン・ディオールが発表し、ファッション業界に革命を
起こしたといわれるニュールックをもとにデザインされています。
主演の8人の女優さんたちそれぞれハリウッドのスター女優や
「裸足の伯爵夫人」「巴里のアメリカ人」「風と共に去りぬ」
「麗しのサブリナ」などの名画からインスパイアされたイメージで
統一されていて、オゾン監督の趣味が満開の作品なのです。
カトリーヌ・ドヌーブ、ファニー・アルダンとトリュフォー
監督のミューズ二人に取っ組み合いのケンカをさせるなんて
映画好きからするとニンマリしてしまいますね。

今回の舞台版は舞台を中央に、客席を前後に配した囲み舞台に
なっていました。演じる側からすると結構キツイ状態ですね。
なのでプロレスやボクシングのリングのような感じです。
8人の女優たちが格闘しているといいますか(笑)。
見る前はこれだけの女優を集めたんだから、相当バチバチ火花
散ってるんじゃない?と思っていましたが意外にそれほどでも
なかったです。ちょっと期待したのになあ(笑)。

大地真央さんはいつ見ても華がありますね。何度か生の舞台で
拝見していますが、どんな国の人を演じてもいつも違和感がなく
素晴らしいコメディエンヌだと僕は思っています。
戸田恵子さんは機関銃のように連射されるセリフ術がいつも
圧巻ですね。「男なんて興味ないわ」と言いながらほんとは
一人が淋しくてしかたがない孤独な女性を楽し気に演じてられ
ました。
浅野温子さんは見るからに品のない、元キャバレーのダンサー
を力強い演技で魅せてくれました。
加賀まりこさんは少し引いた芝居をされていたような気が
しました。脇に徹してらしたような。あまり見せ場がない
役柄でしたけど、もったいないですね。せっかく加賀さんを
使っているのに。
荻野目慶子さんはお手のものでしょうね。こんな役は。少し
大仰なコミカルなお芝居はいいアクセントになっていました。
牧瀬里穂さんは女だけを武器に生きている綺麗なんだけど
ちょっと愚かな女性を妖艶に演じてられました。
マイコさんは初舞台と聞きましたが堂々としていて、表情も
豊かでとても自然な演技で驚きました。これからも舞台で活躍
してほしいですね。
南沢奈央さんはこれだけのベテランの中で大変神経を使う
ことも多かったでしょうけど、最後まで頑張ってましたね。

クリスマスに見るには最適な華やかで楽しい舞台だったのでは
ないでしょうか。主演の女優さんたちは皆良かったと思うのですが
気になったのはどうしても映画版と比べてしまうので、もう少し
セット美術と衣装は工夫してほしかったですね。
リアリティを求めるような芝居じゃないし、1セットの舞台らしい
舞台なのですから、もっと統一感のあるゴージャスさがほしかった
です。お金持ちの会社経営者の一族の邸宅なのに、あのソファーや
鉄の螺旋階段はいただけないです~。映画を見た方ならわかって
もらえますよね。

でも久し振りに肩の凝らない、女優芝居を見た気がします。
楽しかったです~。これからも舞台の生中継やってくださいね。
WOWOWさん。