9月27日にNHK朝ドラ『虎に翼』の最終話が放送され、半年間に渡る放送が終了しました。

 

僕はすべての朝ドラを観ているというファンではなく、自分が興味を惹かれるテーマか、共感できる主人公かで観るか観ないかを決めていますが、今回の『虎に翼』は第一回目を観た時に「これは最後まで観なければ」と思ったドラマでした。

 

僕が新しく始まった連続ドラマを最後まで見届けようと決めるのは、第一回目を観て判断することが多いんです。

 

各局の新ドラマが始まった時、僕は全て一応第一回目は観るようにしています。観続けるかどうかの判断基準は主演俳優さんの好みもありますし、主人公の周りを彩る助演俳優さんたちに魅力を感じるか、それとこの物語を通じて作り手は何を僕たち視聴者に届けたいのかが感じられるかどうかです。

 

そういった作者の想いって、第一回目に込められているはずだと僕は思っているからです。

 

『虎に翼』は第一回目に「日本国憲法第14条」がとり上げられ、僕の胸に波紋のようにこれはいいドラマになるという予感がさわさわと広がったので、最終回まで欠かさず観させていただきました。そして、その予感は間違ってはいませんでした。感動させてもらいましたよー。

 

『虎に翼』は原作がなく、脚本家・吉田恵里香さんが日本初の女性弁護士の一人、三淵嘉子さんをモチーフにしたオリジナル脚本でした。吉田さんは、ドラマ『恋せぬふたり』で第40回向田邦子賞・第77回文化庁芸術祭優秀賞を受賞し、アニメ『ぼっち・ざ・ろっく!』で第9回ANIME TRENDING AWARDS(ATA)最優秀脚色賞を受賞された今、注目の脚本家です。

 

吉田恵里香さんは「この作品でやりたかったのは、女性への差別をはじめ、世の中にたくさんある、わかりにくい差別を見える形にし、より良い社会にしていこうよと伝えること。自分の力不足を痛感することも多かったが、執筆時においてのベストを出し切った」とおっしやっていました。でも、まだまだ言い足りないじゃない?と僕は思いますけどねー。

 

ドラマは、視聴率も好調で、朝ドラで初めて1週ごとに放送済みのシナリオ本が発売されるなど、脚本が高く評価された作品でした。

 

でも、脚本に対しては好意的な意見ばかりではなかったですね。それはどんな作品でもいろんな意見があるのは当たり前ですが、『虎に翼』は、物語の前半から、女性蔑視や同性愛、戦争責任、朝鮮人差別など、重いテーマが取り上げられたドラマだったからでしょうね。

 

それって、今まで日本のTVドラマではあえて目を背けて来たテーマじゃないですか?でもそんなの今の時代それで通用します?いつまでも知らん顔をしていると日本のTVドラマなんて世界から取り残されてしまうと思います。

 

「特に《女性の生きづらさ》に関しては全編をつらぬく大テーマでした。そのせいか、ドラマを見ていると、『こういう生きづらい女性があなたのそばにもいませんか? あなたはそのことに気がついていますか?』と言われているようで、説教くさいと感じた人もいたみたいですー。SNS上では《人権意識のアップデートを迫られているようで押しつけがましい》といった意見もありました。

 

でもそんな一部のガチャガチャした文句なんかに、怯むことなんかないんですよ。そんなこと言われようが作り手は「私たちは女性初の弁護士として活躍した女性を主人公とし、さまざまな差別や不平等を無くしたいという信念でこのドラマを作っているんです。」と胸を張ればいいんですよ。僕はそう思います。脚本家の吉田さんもドラマの制作スタッフにも、僕は『信念』を感じましたよ。

 

「男は男らしくしなさい」

「男は泣くもんじゃない」

「結婚は何歳までにしなくては」

「親の言うことをちゃんと聞いていい子でね」

「女の子なんだから、そんなことしてはいけません」

 

こんな言葉は今だに人の口から発せられている言葉です。古いも新しいもない、一度くらい言われた事はないでしょうか?どうして決め付けられなければいけないのでしょうか?

 

人が何気なく無意識に言った言葉にいつまでも縛られ続ける人もいるし、心が病んでしまう人もいると言うことを忘れてはいけないですよ。

 

さまざまな格差がなくならない世の中です。僕は同性愛者ですけど、男性性に縛られてしまうことが辛い時期がありました。そんな人はたくさんいると思います。「男の人だからこう」とか、「男だから何とか」「男のくせにそんなこともできないの?」きついんですよーそんなこと言われるのは。「男は女より得してる」と思われたりするのも、腹が立ったり納得できない時もありますよー。

 

『虎に翼』には、社会で声を上げにくいさまざまな人たちが登場しました。障害があって車椅子で生活する人、親に子育てを放棄された子ども。さらには、在日コリアンや同性愛者の人たちも描かれました。当事者の人たち(同性愛者の私も)は声に出さなくても『生きづらい』と感じているはずなんです。

 

『虎に翼』のヒロイン寅子のように「はて?」と疑問を持ち、声を挙げることは大切だと思います。でも矢面に立つのは怖い、面倒臭いと思っている人がいることも確かなんです。

 

だから、こういったドラマや映画、小説などエンターテイメントで僕たちの「生きづらさ」を表現してもらえたら少しでも理解してくれる人、気づいてくれる人が増えるのではと期待したいです。

 

僕は観ている間、いろんなことを考えさせられて、観終わった後にズシッと何かが心に残る作品が好きなんです。ただ、面白かった、つまらなかっただけじゃ時間の無駄ですから。

 

主演の伊藤沙莉さんはじめ、出演された俳優さん全て、愛らしくて、素敵で、誰一人嫌いな人がいなかったです。キャスティングがよかったですねー。大好きな岡田将生君は相変わらず美しいし、毎回ため息をついておりました(笑)米津玄師さんの主題歌「さよーならまたいつか!」もよかったです。いつも僕、歌ってました。

 

弱者が虐げられる世の中が早くなくなって欲しいそう思います。

半年間、楽しませてもらいました。いいドラマでしたね。