※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。
文豪太子×編集者妹子というのはあるけど逆はないよなーと思って妄想してみた。
更に菜月さんとの話で盛り上がって妄想が膨らんだという。結果。
*******************************
インターホンを押しても応答がない。
試しにドアノブに手をかけると、おそるおそるでも回る感触があった。
思い切ってそのまま回しきり、玄関を開ける。
勿論これは立派な不法侵入に当たるのだが、太子は気にせずそのまま中へとあがる。
彼がある一室のドアをがらりと開けると、そこには予想通りの人が、予想通りの姿でいた。
部屋の隅に置いてある、それなりに横長な机に突っ伏している、もみあげが特徴的な栗毛の人物。
更に言えば卓上とその周りはなにやらよくわからない紙と本とで散らかり放題だ。
机にあるノートパソコンもそれらに埋まってしまっている。
「おい、妹子。生きてるかー?というか生きててもらわないと困るんだけど。」
太子がそう声をかけると、名を呼ばれた人物はぴくりと微かに動いた。
どうやら生きているらしい。いや、元から本気で死んでいるとは思っていないが。
「ん~~~・・・ふぁいし・・・。」
妹子、と呼ばれた青年はうなされながらも名前を呼び返す。
それから、案外普通にむくりと起き上がった。相変わらず髪の毛はもみあげ以外もボサボサだ。
「あ・・・?あ、太子・・・おはようございます・・・。」
「うん、妹子。おはよう。おはようというか、おそようというか。」
「今・・・何時ですか・・・?」
「今?今は・・・昼だな。」
「そうですか・・・。」
彼はかなりひどい格好をしていた。
元々の癖毛が更に酷くなった髪に、寝起き特有の掠れ声。
しかし寝ていたわりには目の下にはくっきりとクマが浮かび上がり、今着ているジャージも多分3日間くらい連続で着続けたものだろうと思わせるような様相だった。
寝不足が作用してか、寝起きが作用してか、とにかくうまく頭が働いていないようだ。
「それで、原稿は?」
太子は妹子の元に歩み寄り、手を出す。
原稿、というのは、なんと彼、小野妹子の職業は小説家なのである。
そしてそれを回収しに来た太子は当然、彼担当の編集者に当たる。
妹子はおぼつかない手つきで散らかっている中を漁ると、一定の紙の束を、差し出されていた掌に託した。
それを受け取り、簡単に中身をさらってから太子は首を傾げた。
「しかし、今回のやつはそんなに大きなものじゃなくて、スケジュール的にも切羽詰ってなかっただろ?
なんでそんなことになっているんだ?」
妹子は、さして有名な小説家でもなかったがさして売れない小説家でもなかった。
ありがたいことに贅沢をしなければこの業界で食べていけるだろうという収入で、まずまずの作家なのである。
だから仕事のペースも、緩やかだったり急ぎ足だったり、まちまちなのだ。
今回は前者のほうだったはずなのだが。
「あー・・・ちょっと調べ物をしてて・・・いや、ちゃんとその仕事終わらせてからですよ?」
だから内容はまともなはず、と念を押すように妹子は言った。
確かに先程チェックした時、細かなものはともかく、酷い文法や誤字・脱字は特に見当たらなかった。
それにしても、そこまで労力をつくした調べ物とはなんだろうか、と太子は気になったので、直球で聞く。
「その調べ物ってなんだ?」
「ん。」
喉奥を鳴らしただけの粗末な返事と共に渡された数枚の紙。
そこには文章がつらつらと綴られていた。
きっと読めということなのだろう、と太子は早速目を通す。
しかし数行読んだだけで彼は早くも目を瞠った。
「えっ!?妹子、これ・・・えっ、あの、あれ、だよね?」
「ボーイズラブ小説ですよ。」
動揺している彼に対し、さらりと妹子は答える。
そう、紙面にはそれが書かれていた。しかも最初からいきなり、致しているところを。
「えっ、妹子・・・こ、こういう趣味だったの?」
「んー・・・趣味、というか、なんか、書いてみようかな、って。」
新しいものに挑戦するという、その前向きな姿勢が何故こういう方面に行ったのか。
太子は相変わらず動揺を隠せない。
「それで、どうですか?」
「へ?」
「それ。」
それ、というのは太子が今まさに手に持っているこのBL小説の一部らしきものだろう。
すると突如彼の眼差しは真剣なものになり、再び文章に視線を落とす。
そして意味深に唸ると、浅くため息をつき、
「ダメだね。」
「え?」
唐突に告げられた言葉に妹子は目を丸くする。
「文章がなっていない・・・なんていうか、お前の文じゃない、というか、どこかからそのまんま借りてきたものを継ぎ合わせただけのようだ。言葉が生きてないし、これじゃ興奮しない。
・・・なんだその目は。」
妹子の視線に気づいた太子は怪訝そうにちらりとそちらに目を見やる。
それでも妹子は変わらず目を丸めていた。
「いや・・・何か、詳しそうだなぁって・・・しかも今さらっとすごいこと言ったような・・・。」
「ん・・・、まあ、編集やってれば、色々とな、色々、と。うん・・・。」
再び紙面に視線を落とした太子の表情からは過去に何かあったのだろうということが見てとれた。
きっと踏み込んではいけない領域なのだろう、と哀れに思った妹子はそれ以上深く追求することをやめた。
「それで、つまりボツだと。」
「まあ、そういうことだな。というか、向いていないからやめておけ。」
自分でも薄々感づいていたことを頭ごなしに否定され、妹子の中に小さな怒りが生まれた。
「へえ・・・じゃあ手っ取り早く経験すればわかるんですかね?」
「ん?」
穏やかにその場をやりこめたかったのに、その感情はどんどん育っていき、笑顔は引きつるし、眉根は上がるしで、どうも苛立ちを抑えきれず、とうとう口から挑発的な言葉が出てしまった。
「だったら太子、しましょうよ。」
ぐい、と力任せに太子の服をひっぱり、彼の顔を自身の顔に近づける。
彼はというと、突然の出来事に驚き、焦っているようだった。
「ちょっ・・・妹子!落ち着け、落ち着けって!な?」
「『受け』の心情をメインに書きたかったので仕方なく僕が『ネコ』でいいですよ。」
「何の話!?私の話聞いてお願いだから!」
「太子。」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる声に割って入った、落ち着いた声音。
それにより太子の動きも止まった。
「僕は、本気ですよ。」
真っ直ぐ見据えたその栗色の瞳に、太子は全てを悟り、そして諦めた。
まあ、私はバイだから確かにそれは大丈夫なんだけど、とぼそりと呟くと、
ふう、と再びため息をつく。
「・・・あとで後悔しても、知らないからな。」
太子が頭を抱えながらそう言うと、妹子はここ数日使っていない、綺麗に整ったベッドへと彼を促した。
*****************************
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇あとがき◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
編集者太子×(BL)小説家妹子でした。
こうしてみると(文豪×編集の)逆もいいですよね・・・うまし。妹子が襲い受け的な、結構積極的な感じになりました。
しかしこれではあまりにもキレやすいのでは・・・?とも思った・・・けどああするしか・・・。
徹夜明けで苛立っていてささいなことでもキレる状態だった、ということにしておこう。うん。
ヤケクソからの本気のヤケクソみたいになってますね最後。本気のヤケクソってなんだ。
ではでは、いつもありがとうございます(*^ー^)ノ
また太妹が嫌いな方もです。
文豪太子×編集者妹子というのはあるけど逆はないよなーと思って妄想してみた。
更に菜月さんとの話で盛り上がって妄想が膨らんだという。結果。
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インターホンを押しても応答がない。
試しにドアノブに手をかけると、おそるおそるでも回る感触があった。
思い切ってそのまま回しきり、玄関を開ける。
勿論これは立派な不法侵入に当たるのだが、太子は気にせずそのまま中へとあがる。
彼がある一室のドアをがらりと開けると、そこには予想通りの人が、予想通りの姿でいた。
部屋の隅に置いてある、それなりに横長な机に突っ伏している、もみあげが特徴的な栗毛の人物。
更に言えば卓上とその周りはなにやらよくわからない紙と本とで散らかり放題だ。
机にあるノートパソコンもそれらに埋まってしまっている。
「おい、妹子。生きてるかー?というか生きててもらわないと困るんだけど。」
太子がそう声をかけると、名を呼ばれた人物はぴくりと微かに動いた。
どうやら生きているらしい。いや、元から本気で死んでいるとは思っていないが。
「ん~~~・・・ふぁいし・・・。」
妹子、と呼ばれた青年はうなされながらも名前を呼び返す。
それから、案外普通にむくりと起き上がった。相変わらず髪の毛はもみあげ以外もボサボサだ。
「あ・・・?あ、太子・・・おはようございます・・・。」
「うん、妹子。おはよう。おはようというか、おそようというか。」
「今・・・何時ですか・・・?」
「今?今は・・・昼だな。」
「そうですか・・・。」
彼はかなりひどい格好をしていた。
元々の癖毛が更に酷くなった髪に、寝起き特有の掠れ声。
しかし寝ていたわりには目の下にはくっきりとクマが浮かび上がり、今着ているジャージも多分3日間くらい連続で着続けたものだろうと思わせるような様相だった。
寝不足が作用してか、寝起きが作用してか、とにかくうまく頭が働いていないようだ。
「それで、原稿は?」
太子は妹子の元に歩み寄り、手を出す。
原稿、というのは、なんと彼、小野妹子の職業は小説家なのである。
そしてそれを回収しに来た太子は当然、彼担当の編集者に当たる。
妹子はおぼつかない手つきで散らかっている中を漁ると、一定の紙の束を、差し出されていた掌に託した。
それを受け取り、簡単に中身をさらってから太子は首を傾げた。
「しかし、今回のやつはそんなに大きなものじゃなくて、スケジュール的にも切羽詰ってなかっただろ?
なんでそんなことになっているんだ?」
妹子は、さして有名な小説家でもなかったがさして売れない小説家でもなかった。
ありがたいことに贅沢をしなければこの業界で食べていけるだろうという収入で、まずまずの作家なのである。
だから仕事のペースも、緩やかだったり急ぎ足だったり、まちまちなのだ。
今回は前者のほうだったはずなのだが。
「あー・・・ちょっと調べ物をしてて・・・いや、ちゃんとその仕事終わらせてからですよ?」
だから内容はまともなはず、と念を押すように妹子は言った。
確かに先程チェックした時、細かなものはともかく、酷い文法や誤字・脱字は特に見当たらなかった。
それにしても、そこまで労力をつくした調べ物とはなんだろうか、と太子は気になったので、直球で聞く。
「その調べ物ってなんだ?」
「ん。」
喉奥を鳴らしただけの粗末な返事と共に渡された数枚の紙。
そこには文章がつらつらと綴られていた。
きっと読めということなのだろう、と太子は早速目を通す。
しかし数行読んだだけで彼は早くも目を瞠った。
「えっ!?妹子、これ・・・えっ、あの、あれ、だよね?」
「ボーイズラブ小説ですよ。」
動揺している彼に対し、さらりと妹子は答える。
そう、紙面にはそれが書かれていた。しかも最初からいきなり、致しているところを。
「えっ、妹子・・・こ、こういう趣味だったの?」
「んー・・・趣味、というか、なんか、書いてみようかな、って。」
新しいものに挑戦するという、その前向きな姿勢が何故こういう方面に行ったのか。
太子は相変わらず動揺を隠せない。
「それで、どうですか?」
「へ?」
「それ。」
それ、というのは太子が今まさに手に持っているこのBL小説の一部らしきものだろう。
すると突如彼の眼差しは真剣なものになり、再び文章に視線を落とす。
そして意味深に唸ると、浅くため息をつき、
「ダメだね。」
「え?」
唐突に告げられた言葉に妹子は目を丸くする。
「文章がなっていない・・・なんていうか、お前の文じゃない、というか、どこかからそのまんま借りてきたものを継ぎ合わせただけのようだ。言葉が生きてないし、これじゃ興奮しない。
・・・なんだその目は。」
妹子の視線に気づいた太子は怪訝そうにちらりとそちらに目を見やる。
それでも妹子は変わらず目を丸めていた。
「いや・・・何か、詳しそうだなぁって・・・しかも今さらっとすごいこと言ったような・・・。」
「ん・・・、まあ、編集やってれば、色々とな、色々、と。うん・・・。」
再び紙面に視線を落とした太子の表情からは過去に何かあったのだろうということが見てとれた。
きっと踏み込んではいけない領域なのだろう、と哀れに思った妹子はそれ以上深く追求することをやめた。
「それで、つまりボツだと。」
「まあ、そういうことだな。というか、向いていないからやめておけ。」
自分でも薄々感づいていたことを頭ごなしに否定され、妹子の中に小さな怒りが生まれた。
「へえ・・・じゃあ手っ取り早く経験すればわかるんですかね?」
「ん?」
穏やかにその場をやりこめたかったのに、その感情はどんどん育っていき、笑顔は引きつるし、眉根は上がるしで、どうも苛立ちを抑えきれず、とうとう口から挑発的な言葉が出てしまった。
「だったら太子、しましょうよ。」
ぐい、と力任せに太子の服をひっぱり、彼の顔を自身の顔に近づける。
彼はというと、突然の出来事に驚き、焦っているようだった。
「ちょっ・・・妹子!落ち着け、落ち着けって!な?」
「『受け』の心情をメインに書きたかったので仕方なく僕が『ネコ』でいいですよ。」
「何の話!?私の話聞いてお願いだから!」
「太子。」
ぎゃあぎゃあと騒ぎ立てる声に割って入った、落ち着いた声音。
それにより太子の動きも止まった。
「僕は、本気ですよ。」
真っ直ぐ見据えたその栗色の瞳に、太子は全てを悟り、そして諦めた。
まあ、私はバイだから確かにそれは大丈夫なんだけど、とぼそりと呟くと、
ふう、と再びため息をつく。
「・・・あとで後悔しても、知らないからな。」
太子が頭を抱えながらそう言うと、妹子はここ数日使っていない、綺麗に整ったベッドへと彼を促した。
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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇あとがき◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
編集者太子×(BL)小説家妹子でした。
こうしてみると(文豪×編集の)逆もいいですよね・・・うまし。妹子が襲い受け的な、結構積極的な感じになりました。
しかしこれではあまりにもキレやすいのでは・・・?とも思った・・・けどああするしか・・・。
徹夜明けで苛立っていてささいなことでもキレる状態だった、ということにしておこう。うん。
ヤケクソからの本気のヤケクソみたいになってますね最後。本気のヤケクソってなんだ。
ではでは、いつもありがとうございます(*^ー^)ノ