※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。
気づけば放って早一ヶ月・・・いやあクライマックスになると逃げ出す癖、直したいですね。
これで最終回です。ご愛読ありがとうございました(と言っていいのか?)
***********************
太子が最後に訪れたその翌々日、妹子はこの世を去った。
それを彼の家族から聞かされた時、太子は一瞬、驚きの色を瞳に宿した。
しかしすぐにそれは消え、代わりに目を伏せ、予期していたかのような態度をとる。
一応顔を見るか、と訊かれた時に、太子は緩く頭を振った。
内心、いまだ夢現だった彼は、元気だった頃の彼の姿だけを記憶に留めておきたいという思いが心の片隅にあり、それと自分自身の身体も辛かったのである。
実際前者は、最後に見た姿が脳裏に焼きついているため理由としては無意味なものだった。
黒目がちで生気のない目。
あれはもう、悟らせるには十分だった。
ああ、もうすぐ逝くな、と。
妹子の家族が部屋から出ていった後、太子はぽつりと呟いた。
「そうか、とうとう逝ったか・・・。」
そしてふと、掌に握られている、鈍色に光る指輪に視線を落とす。
先程、妹子の死を告げられたと共に、彼の母親に渡されたもの。
「あの子がね、自分が先に死んだら渡してほしいって言ってたの。
・・・縁起でもないけど、貴方も死んだら、あの世でまた渡してほしいんですって。
あの子曰く、『あの時誓ったのは確か{一生}だったから、もしあの世でも連れ添う気があるのなら、またプロポーズしてくれ』って。
・・・その気があるのなら、なんて言ってるけど、本当はまた選んでほしいと思ってるのよ。
きっと貴方とまた、新たな生活を送りたいと思っているんだわ。」
彼の母から聞いた言葉だけで太子はその場面を容易に想像できた。
自分が死んだら渡して欲しい、と彼から頼まれ、縁起でもない、と苦笑を浮かべている母親。
そんな彼女につられ、彼も微かに頬を緩ませるけど、手中にある指輪に向ける眼差しは、真剣そのもので。
それを察した母親は、一瞬口角を下げたけれども、再び柔らかい笑みを浮かべ、了承する。
それからきっと、彼は。
「あ・・・れ・・・?」
そこまでいって、ふと太子は、目頭が熱くなるのを感じた。
そして再び想像を、彼の母親が快く返事した最後に向けたであろう、彼の優しい笑顔を想像すると、今度は瞳から熱い涙が流れ落ちる。
特徴的ともいえる丸い瞳を細め、遠慮がちに白い歯を見せ、照れも入り混じった柔和な笑みを浮かべる妹子。
あの笑顔を見ることはもう叶わない。
入院してから今までも、そんなに会うことはなかったけれど、いざいなくなってみると、本当に隣が空になってしまったようで、寒くて、寂しくて、いるといないのとでこんなにも違うのか、と太子は思った。
頭も、目も、胸も、呼吸も、何もかもが苦しくて、痛い。
「だから先に逝くなって・・・言ったじゃないか妹子・・・。
前世聖徳太子様々に対して約束を破るなんてなんたる無礼だこの芋・・・。本当このバカ芋が・・・。
くそっ、何でだよ・・・逝くなよ・・・何で先に死ぬんだよ妹子・・・!」
歪む視界で手中にあるものを見つめながら、彼は胸の内を吐き出す。
例え繋ぎがめちゃくちゃでも、あふれ出て止まらない言葉を思うままに口にする。
それと共に、布団に吸い込まれていく水分の量も増えていった。
好きだよ、愛してる。
この時がくるのを恐れ、後悔しないですむよう、沢山言ってきたつもりの言葉。
けれどいざ訪れると、やはりいくら言っても足りなくて。
「っ、好きだよ妹子・・・っ、愛してるよ・・・愛してるよ妹子・・・!
今度こそはっ・・・幸せに・・・っ!」
彼の悲痛な叫び声は、誰も耳にすることなく、壁に吸い込まれていく。
何秒も、何分も、何時間も、いつまでも。
****
その翌朝は、澄み渡った青い空に、きらめく朝陽が印象的だった。
代表的な朝を飾る鳥のさえずりのように、看護師等は仕事の合間に話す。
「しかしびっくりしちゃうよねえ・・・。小野さんが亡くなった翌日に亡くなるなんて。」
「本当よねえ・・・今朝見てびっくりしちゃったわ。確かに弱っていたけれど、体調が急変した素振りもみせなかったし・・・。」
「本当、寝てそのまま、って感じよね。」
翌朝、愛しい人のあとを追うように、太子もこの世を去った。
その最期は存外穏やかなものだったという。一晩にして痩せこけたような印象を受ける目元のクマと、頬に残っている涙の痕を除いては。
奇しくもそれは、彼らが入院してからちょうど三ヶ月目の朝だった。
************************
゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ あとがき゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
はいやっと終わりました三ヶ月シリーズ・・・・。
三ヶ月ぴったし死ぬことなんかありえねーよって感じですよね・・・あと最後に限って文章めちゃくちゃですみません。なんか・・・色々伝えたかった結果妙にプレッシャーを感じてこうなったみたいです。
あ、あと最後・・・最後は病院の体制がどうなっているかわからないので何ともいえないのですが、実際は心電図やら何やら装置をつけて怪しくなったら駆けつける、とかなのかなあとか・・・だと思うので、翌朝死んでから看護師が発見したわけではなく、容態が怪しくなって皆に看取られた、と考えてください。すみません。
今頃きっと天国でプロポーズして、おてて繋いでクローバー畑とかで戯れてるのかなあ・・・。
あの世や、次こそは幸せであってほしいですね。何回転生させる気なんだ。
珍しく(?)シリアスだったので、次はほのぼのした話が書きたいなあ・・・。
ではでは、ご愛読(?)ありがとうございました!(*^ー^)ノ
また太妹が嫌いな方もです。
気づけば放って早一ヶ月・・・いやあクライマックスになると逃げ出す癖、直したいですね。
これで最終回です。ご愛読ありがとうございました(と言っていいのか?)
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太子が最後に訪れたその翌々日、妹子はこの世を去った。
それを彼の家族から聞かされた時、太子は一瞬、驚きの色を瞳に宿した。
しかしすぐにそれは消え、代わりに目を伏せ、予期していたかのような態度をとる。
一応顔を見るか、と訊かれた時に、太子は緩く頭を振った。
内心、いまだ夢現だった彼は、元気だった頃の彼の姿だけを記憶に留めておきたいという思いが心の片隅にあり、それと自分自身の身体も辛かったのである。
実際前者は、最後に見た姿が脳裏に焼きついているため理由としては無意味なものだった。
黒目がちで生気のない目。
あれはもう、悟らせるには十分だった。
ああ、もうすぐ逝くな、と。
妹子の家族が部屋から出ていった後、太子はぽつりと呟いた。
「そうか、とうとう逝ったか・・・。」
そしてふと、掌に握られている、鈍色に光る指輪に視線を落とす。
先程、妹子の死を告げられたと共に、彼の母親に渡されたもの。
「あの子がね、自分が先に死んだら渡してほしいって言ってたの。
・・・縁起でもないけど、貴方も死んだら、あの世でまた渡してほしいんですって。
あの子曰く、『あの時誓ったのは確か{一生}だったから、もしあの世でも連れ添う気があるのなら、またプロポーズしてくれ』って。
・・・その気があるのなら、なんて言ってるけど、本当はまた選んでほしいと思ってるのよ。
きっと貴方とまた、新たな生活を送りたいと思っているんだわ。」
彼の母から聞いた言葉だけで太子はその場面を容易に想像できた。
自分が死んだら渡して欲しい、と彼から頼まれ、縁起でもない、と苦笑を浮かべている母親。
そんな彼女につられ、彼も微かに頬を緩ませるけど、手中にある指輪に向ける眼差しは、真剣そのもので。
それを察した母親は、一瞬口角を下げたけれども、再び柔らかい笑みを浮かべ、了承する。
それからきっと、彼は。
「あ・・・れ・・・?」
そこまでいって、ふと太子は、目頭が熱くなるのを感じた。
そして再び想像を、彼の母親が快く返事した最後に向けたであろう、彼の優しい笑顔を想像すると、今度は瞳から熱い涙が流れ落ちる。
特徴的ともいえる丸い瞳を細め、遠慮がちに白い歯を見せ、照れも入り混じった柔和な笑みを浮かべる妹子。
あの笑顔を見ることはもう叶わない。
入院してから今までも、そんなに会うことはなかったけれど、いざいなくなってみると、本当に隣が空になってしまったようで、寒くて、寂しくて、いるといないのとでこんなにも違うのか、と太子は思った。
頭も、目も、胸も、呼吸も、何もかもが苦しくて、痛い。
「だから先に逝くなって・・・言ったじゃないか妹子・・・。
前世聖徳太子様々に対して約束を破るなんてなんたる無礼だこの芋・・・。本当このバカ芋が・・・。
くそっ、何でだよ・・・逝くなよ・・・何で先に死ぬんだよ妹子・・・!」
歪む視界で手中にあるものを見つめながら、彼は胸の内を吐き出す。
例え繋ぎがめちゃくちゃでも、あふれ出て止まらない言葉を思うままに口にする。
それと共に、布団に吸い込まれていく水分の量も増えていった。
好きだよ、愛してる。
この時がくるのを恐れ、後悔しないですむよう、沢山言ってきたつもりの言葉。
けれどいざ訪れると、やはりいくら言っても足りなくて。
「っ、好きだよ妹子・・・っ、愛してるよ・・・愛してるよ妹子・・・!
今度こそはっ・・・幸せに・・・っ!」
彼の悲痛な叫び声は、誰も耳にすることなく、壁に吸い込まれていく。
何秒も、何分も、何時間も、いつまでも。
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その翌朝は、澄み渡った青い空に、きらめく朝陽が印象的だった。
代表的な朝を飾る鳥のさえずりのように、看護師等は仕事の合間に話す。
「しかしびっくりしちゃうよねえ・・・。小野さんが亡くなった翌日に亡くなるなんて。」
「本当よねえ・・・今朝見てびっくりしちゃったわ。確かに弱っていたけれど、体調が急変した素振りもみせなかったし・・・。」
「本当、寝てそのまま、って感じよね。」
翌朝、愛しい人のあとを追うように、太子もこの世を去った。
その最期は存外穏やかなものだったという。一晩にして痩せこけたような印象を受ける目元のクマと、頬に残っている涙の痕を除いては。
奇しくもそれは、彼らが入院してからちょうど三ヶ月目の朝だった。
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゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ あとがき゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
はいやっと終わりました三ヶ月シリーズ・・・・。
三ヶ月ぴったし死ぬことなんかありえねーよって感じですよね・・・あと最後に限って文章めちゃくちゃですみません。なんか・・・色々伝えたかった結果妙にプレッシャーを感じてこうなったみたいです。
あ、あと最後・・・最後は病院の体制がどうなっているかわからないので何ともいえないのですが、実際は心電図やら何やら装置をつけて怪しくなったら駆けつける、とかなのかなあとか・・・だと思うので、翌朝死んでから看護師が発見したわけではなく、容態が怪しくなって皆に看取られた、と考えてください。すみません。
今頃きっと天国でプロポーズして、おてて繋いでクローバー畑とかで戯れてるのかなあ・・・。
あの世や、次こそは幸せであってほしいですね。何回転生させる気なんだ。
珍しく(?)シリアスだったので、次はほのぼのした話が書きたいなあ・・・。
ではでは、ご愛読(?)ありがとうございました!(*^ー^)ノ