※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。
某診断サイトで出たお題で、面白そうだなあと思ったので挑戦してみました。
面白そうだなあ、の意味は、ギャグ方向に、です。
*************************
夜。
辺りはすっかり暗くなり、時刻もいいところ。
殆どの人は帰路についたのだろう。大通りから外れたところなので昼間もさほど多いとは言えないが、今は本当に自分ひとりしかいない。
しかし生娘でもあるまいし、腕っ節にも自信はあるため夜道が怖いなどということはなかった。
だが今、この背筋に走っている寒気は何なのだろう。何かねっとりとした、あまり良くは思わないものが背後を襲っている気がする。
突然誰かに直接触れられたほうがまだいいとすら思えるくらいの気味の悪さだ。けれど先程言ったように、今ここには自分ひとりしかいないはずなのだ。
足音は聞こえないし、念のため振り返ってみてもやはり誰もいない。
こんな状態に陥ったのは実は今日は初めてではない。ここ数日、このような調子なのだ。
妹子は背後に感じる違和を、これまた後ろで皎々と輝く月明かりのせいにして、そのまま着々と家路についた。
***
朝。
まだ太陽の照りが優しい時間帯に、ゴミを出すため一時的に家を出る。
欠伸をしながら着いたゴミ置き場で、その時、昨夜と同じく視線を感じた。
これも今に始まったことではない。
周りを見てもやはり犯人らしき人物は見当たらないが、流石に辟易した妹子は、彼の人に対して言葉を叫んだ。
***
「・・・で、何でストーカーしてるんですか?」
妹子は冷めた眼差しを相手の目に送る。
相手はこちらを見つめ返してこない。罪悪感からというのもあるのだろうが、瞼の片方は腫れ、片方は伸びてしまって視界が狭まっているからだろう。
「ストーカーじゃないよ・・・。」
彼は、太子は同じく腫れて血が出ている唇を弱弱しく震わせながら口を開いた。
満身創痍で何とも痛々しい姿だが、それを施した妹子は、いつもと反対に見える彼の顔が酷く不細工だな、と淡白な感想を心の内で述べた。
今朝、流石に我慢ならなくなった妹子は、ゴミ捨て場にて彼の名を呼んだ。すると思ったとおり、のこのことどこからともなく太子が登場したのだ。
そう、妹子は元々彼に目星をつけていたのだ。
たまに漂うカレー臭、彼が失態を犯した時に視界の隅に移った青いジャージ、など、犯人としての証拠が十分に残っていたのである。
「立派なストーカーじゃないですか。夜道にはつけて歩いて、朝もたかがゴミ出しの様子を見えない角度から窺って。警察に突き出されたいんですか?」
「だからストーカーじゃないよ!嫌だよ!だって好きな子のことは何でも知りたいだろ!」
好きな子。
その言葉に反応して目を瞠る。
ただし、心に響いて感動したからではなく、ぞわぞわと悪寒が走るほど気持ちが悪かったからだ。
「太子、やっぱりそれ、ストーカーで訴えていいですか?」
眉間を狭め、怪訝そうに横目で見やり、立った鳥肌を治めるように二の腕を擦る仕草をとる。
すると慌てたように彼の身体が、縄でぐるぐる巻きになっている身体がぴょんぴょんと跳ねた。
「そんな目ぇせんといて!!てか私も悪かったよ!!でもね妹子!!これは酷くない!?フルボッコにした後の逆さ吊りは酷くない!?仮にも私たち、恋人同士だよね!?」
「・・・『元』恋人ともなれば、より有罪判決が勝ち取りやすくなりそうですね。さて慰謝料何百万踏んだくろうか・・・。」
「真剣に考えるのやめて!!お願いだからこっち見て喋ってひとりの世界に入らないで!!」
私も、ではなく、私が、だろうと思ったがそこを指摘するのはやめた。
いちいち揚げ足を取るのは疲れるし、逆さ吊りにしたことを突かれそうだったからだ。確かにそれはやりすぎたかもしれないし、自分にも非はあるのかもしれないが、そもそもの元凶はお前だ、とまだ言われてもいない事に反論を整えておく。
自由の利かない身体を必死に跳ねさせて何か訴えているようだが、妙に粋の悪い魚みたいで面白いなあ、と妹子はぼんやりと見つめていた。尚、太子の言っている言葉は一切耳に入ってこない。
まあ、警察に訴えて裁判を起こすというのは冗談だ。一瞬金に目が眩んで本気で考えてしまったが、すぐに冷静な思考へと引き返した。
身体のあちらこちらに直に制裁を加え、己の手で逆さ吊りにまでしたのだからこれ以上追い討ちをかけるのは流石に可哀想だし、本人も十分痛い目を見て反省したことだろう。
つまり、最初(ハナ)から訴える気も何もなかったのだ。逆さ吊りにした時点でここ最近のストレスも解消されたし、十分満足した。
それに先程太子が言ったように、自分たちは一応そういう間柄なのだ。
妹子としても、時折苛立つことはあるが、それでも相手のことは好きだし、一緒にいたいのが本音だ。
「まあ、警察につきだすのも、裁判で五百万円ほど踏んだくろうと考えていたのも冗談です。」
「ほんとに冗談なのそれ・・・?」
「太子、これに懲りて気味悪い視線を遠くから送ったり、あとをつけてくるような真似はやめてくださいね。
そもそも・・・恋仲、なのですから、一緒にいたいなら、一緒にいられるでしょう。」
ふと、視界で暴れまわっていた身体が止まった。
何を思っているのか、頬がほんのりと赤く染まっている。
やはり自分の口から出る、恋人を指す言葉は珍しいのだろうか。
さらりと言ったつもりだったが、いや、多少の躊躇いはあったのだが意識しないようにしていた。
それが彼のせいで全て台無しだ。装った平静という膜は破れ、妙に熱いものが身体の中を駆け巡る。
心なしか、顔が、耳が熱いような気がした。
それから、太子はなにやら満足することでも確認したのか、口許を緩めていた。しかしまた鉄拳が飛んでくるのが怖いのだろうか。それはいつもより控えめだった。
(本当にわかっているのだろうか。わかっていない気がする。)
ならば、わかるまでわからせてやらないと。
とりあえず紐を解いて地に足をつけたら、その、血が出ている腫れた唇を治してあげようか。
**********************
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*あとがき☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
最後こんな終わり方でいいのかなっていう、もうちょっと何か追加すればよかったんだろうけどまあいいや!!
妹子はちゃんと消毒液で手当てしてやったのでしょうか。それとも、己の唾液で・・・。まあご想像にお任せします。
これを一緒に話して盛り上がってた元アメーバ住人のしーさんもとても面白くて素敵な絵を描いてくださりました。クッソ面白かった。逆さ吊りにされた太子とそれを冷めた目で見る妹子・・・。
ではでは(*^ー^)ノいつもありがとうございます。
また太妹が嫌いな方もです。
某診断サイトで出たお題で、面白そうだなあと思ったので挑戦してみました。
面白そうだなあ、の意味は、ギャグ方向に、です。
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夜。
辺りはすっかり暗くなり、時刻もいいところ。
殆どの人は帰路についたのだろう。大通りから外れたところなので昼間もさほど多いとは言えないが、今は本当に自分ひとりしかいない。
しかし生娘でもあるまいし、腕っ節にも自信はあるため夜道が怖いなどということはなかった。
だが今、この背筋に走っている寒気は何なのだろう。何かねっとりとした、あまり良くは思わないものが背後を襲っている気がする。
突然誰かに直接触れられたほうがまだいいとすら思えるくらいの気味の悪さだ。けれど先程言ったように、今ここには自分ひとりしかいないはずなのだ。
足音は聞こえないし、念のため振り返ってみてもやはり誰もいない。
こんな状態に陥ったのは実は今日は初めてではない。ここ数日、このような調子なのだ。
妹子は背後に感じる違和を、これまた後ろで皎々と輝く月明かりのせいにして、そのまま着々と家路についた。
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朝。
まだ太陽の照りが優しい時間帯に、ゴミを出すため一時的に家を出る。
欠伸をしながら着いたゴミ置き場で、その時、昨夜と同じく視線を感じた。
これも今に始まったことではない。
周りを見てもやはり犯人らしき人物は見当たらないが、流石に辟易した妹子は、彼の人に対して言葉を叫んだ。
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「・・・で、何でストーカーしてるんですか?」
妹子は冷めた眼差しを相手の目に送る。
相手はこちらを見つめ返してこない。罪悪感からというのもあるのだろうが、瞼の片方は腫れ、片方は伸びてしまって視界が狭まっているからだろう。
「ストーカーじゃないよ・・・。」
彼は、太子は同じく腫れて血が出ている唇を弱弱しく震わせながら口を開いた。
満身創痍で何とも痛々しい姿だが、それを施した妹子は、いつもと反対に見える彼の顔が酷く不細工だな、と淡白な感想を心の内で述べた。
今朝、流石に我慢ならなくなった妹子は、ゴミ捨て場にて彼の名を呼んだ。すると思ったとおり、のこのことどこからともなく太子が登場したのだ。
そう、妹子は元々彼に目星をつけていたのだ。
たまに漂うカレー臭、彼が失態を犯した時に視界の隅に移った青いジャージ、など、犯人としての証拠が十分に残っていたのである。
「立派なストーカーじゃないですか。夜道にはつけて歩いて、朝もたかがゴミ出しの様子を見えない角度から窺って。警察に突き出されたいんですか?」
「だからストーカーじゃないよ!嫌だよ!だって好きな子のことは何でも知りたいだろ!」
好きな子。
その言葉に反応して目を瞠る。
ただし、心に響いて感動したからではなく、ぞわぞわと悪寒が走るほど気持ちが悪かったからだ。
「太子、やっぱりそれ、ストーカーで訴えていいですか?」
眉間を狭め、怪訝そうに横目で見やり、立った鳥肌を治めるように二の腕を擦る仕草をとる。
すると慌てたように彼の身体が、縄でぐるぐる巻きになっている身体がぴょんぴょんと跳ねた。
「そんな目ぇせんといて!!てか私も悪かったよ!!でもね妹子!!これは酷くない!?フルボッコにした後の逆さ吊りは酷くない!?仮にも私たち、恋人同士だよね!?」
「・・・『元』恋人ともなれば、より有罪判決が勝ち取りやすくなりそうですね。さて慰謝料何百万踏んだくろうか・・・。」
「真剣に考えるのやめて!!お願いだからこっち見て喋ってひとりの世界に入らないで!!」
私も、ではなく、私が、だろうと思ったがそこを指摘するのはやめた。
いちいち揚げ足を取るのは疲れるし、逆さ吊りにしたことを突かれそうだったからだ。確かにそれはやりすぎたかもしれないし、自分にも非はあるのかもしれないが、そもそもの元凶はお前だ、とまだ言われてもいない事に反論を整えておく。
自由の利かない身体を必死に跳ねさせて何か訴えているようだが、妙に粋の悪い魚みたいで面白いなあ、と妹子はぼんやりと見つめていた。尚、太子の言っている言葉は一切耳に入ってこない。
まあ、警察に訴えて裁判を起こすというのは冗談だ。一瞬金に目が眩んで本気で考えてしまったが、すぐに冷静な思考へと引き返した。
身体のあちらこちらに直に制裁を加え、己の手で逆さ吊りにまでしたのだからこれ以上追い討ちをかけるのは流石に可哀想だし、本人も十分痛い目を見て反省したことだろう。
つまり、最初(ハナ)から訴える気も何もなかったのだ。逆さ吊りにした時点でここ最近のストレスも解消されたし、十分満足した。
それに先程太子が言ったように、自分たちは一応そういう間柄なのだ。
妹子としても、時折苛立つことはあるが、それでも相手のことは好きだし、一緒にいたいのが本音だ。
「まあ、警察につきだすのも、裁判で五百万円ほど踏んだくろうと考えていたのも冗談です。」
「ほんとに冗談なのそれ・・・?」
「太子、これに懲りて気味悪い視線を遠くから送ったり、あとをつけてくるような真似はやめてくださいね。
そもそも・・・恋仲、なのですから、一緒にいたいなら、一緒にいられるでしょう。」
ふと、視界で暴れまわっていた身体が止まった。
何を思っているのか、頬がほんのりと赤く染まっている。
やはり自分の口から出る、恋人を指す言葉は珍しいのだろうか。
さらりと言ったつもりだったが、いや、多少の躊躇いはあったのだが意識しないようにしていた。
それが彼のせいで全て台無しだ。装った平静という膜は破れ、妙に熱いものが身体の中を駆け巡る。
心なしか、顔が、耳が熱いような気がした。
それから、太子はなにやら満足することでも確認したのか、口許を緩めていた。しかしまた鉄拳が飛んでくるのが怖いのだろうか。それはいつもより控えめだった。
(本当にわかっているのだろうか。わかっていない気がする。)
ならば、わかるまでわからせてやらないと。
とりあえず紐を解いて地に足をつけたら、その、血が出ている腫れた唇を治してあげようか。
**********************
☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*あとがき☆*゚ ゜゚*☆*゚ ゜゚*
最後こんな終わり方でいいのかなっていう、もうちょっと何か追加すればよかったんだろうけどまあいいや!!
妹子はちゃんと消毒液で手当てしてやったのでしょうか。それとも、己の唾液で・・・。まあご想像にお任せします。
これを一緒に話して盛り上がってた元アメーバ住人のしーさんもとても面白くて素敵な絵を描いてくださりました。クッソ面白かった。逆さ吊りにされた太子とそれを冷めた目で見る妹子・・・。
ではでは(*^ー^)ノいつもありがとうございます。