※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧を御遠慮ください。
また、太妹が嫌いな方もです。
太子の愛称は「たいちゃん」かなとも思ったのですが何か言いにくそうだったので「たっちゃん」になりました。
どこかで聞いたことがあるような・・・。こんな場面で不謹慎ながら笑いそうになりました。
**********************
月ももうすぐ変わろうとしている頃。
太子は妹子の病室に呼び出されていた。
とはいえ、自力で歩ける力はないので車椅子に乗り、家族に運んでもらったのだが。
看護師を通して初めて、小野さんのご家族が呼んでいます、と言われた。
それは彼にとって嫌な予感しかしなかった。
一応、太子と妹子の仲は親公認である。
そういう意味での計らいだとすると、呼びだされた理由はやはり良いものではないのだろう、と太子は確信していた。
そして悪い予感は見事的中し、いざ妹子の病室へと入ると、そこには瞼を固く閉ざし、ベッドに横たわる彼、とその周りを囲む彼の家族がいた。
呆然としている太子に、看護師が耳打ちしてきた。
「残念ながら、今回ばかりは前のように持ちこたえられないでしょう。」
彼の胸がドクンと大きく跳ねあがる。
覚悟はしていた。いつかこういう日がくるのだろうと。
けれど、いざそれが訪れるとやはり動揺してしまう。
「たっちゃん・・・ごめんね、貴方も辛いのに。でも、貴方の声なら、目を覚ますと思って。」
そう、涙声で訴えてきたのは妹子の母親だった。
たっちゃん、というのは太子のことだ。
彼らが幼馴染だったせいか、大人になった今でも互いの親からは愛称で呼ばれている。
「お願いだから、名前を呼んでくれる?」
親なのだから当たり前だが、彼女もそうとう辛いのだろう。
語尾になるにつれ声は不安定になり、言い終えると、ハンカチを取り出し、目元に思い切り当てていた。
胸からこみ上げてくるものを、唇を噛み締めて堪え、太子は妹子の近くに寄った。
「・・・妹子。」
こうして改めて場を設けてもらうと多少照れくささが残る。
緊張のせいか声は震え、彼には届いていないようだった。
二度目は恥を抑え、少し大きめの声で呼ぶ。
すると、彼の母親が言った通り、徐に瞼が上がった。
「・・・!妹子、妹子!」
それを機に周囲の視線のことは忘れ、太子は必死に名を叫んだ。
そして再び奇跡は起き、彼はこちらのほうを振り向いた。
しかし彼の双眸は、とても明るい未来を感じ取れるものではなかった。
やけに黒目が目立つ、生気を失った瞳。
ほぼ昏睡状態の中、己の声だけに反応してくれるのは特別に思えて嬉しい反面、彼の濁った瞳からの視線を受けて、太子は複雑な感情を抱く。
(そうか、お前はもう・・・。ううん、十分頑張った。偉いぞ妹子。)
光の宿っていない目で彼が捉えているのは闇か、虚空か、はたまた自分なのか。
太子はただ、印象的な鈍い黒目から視線を外せないでいた。
*
「太子さん、そろそろ貴方のお身体にも障ります。」
暫し意識不明の彼とみつめ合っていると、看護師から部屋へ戻るよう促された。
自分の身体のことなどすっかり忘れていたが、逆らう気力もないので、渋々太子は承知する。
「やっぱり貴方の声だと起きるのね。たっちゃん、ありがとねえ・・・。」
妹子の母親は鼻をすすりながら礼を言い、やっぱり一番大切な人なのね、とも付け足した。
それを聞いて太子は微かに口許を緩める。
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。・・・じゃあな、妹子。」
名残惜しく別れを告げると、太子は車椅子を押され、部屋をあとにしたが、暫く妹子の視線は彼がいたところに留まっていた。
********************
*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆あとがき*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
物語はいよいよクライマックス!(意味不
何回言っているのだろうこの台詞。
なんかもうここまでくるとこの後の展開が読めてしまいますね・・・。書いてても胸が痛い。
そしてやっぱり「たっちゃん」は笑う・・・。
大切な人の声には無意識でも反応するんだね、妹子。
それほど愛しているということなのでしょう。勿論太子も彼を愛している。美しき(?)相思相愛。
ではでは、いつもありがとうございます(*^ー^)ノ
また、太妹が嫌いな方もです。
太子の愛称は「たいちゃん」かなとも思ったのですが何か言いにくそうだったので「たっちゃん」になりました。
どこかで聞いたことがあるような・・・。こんな場面で不謹慎ながら笑いそうになりました。
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月ももうすぐ変わろうとしている頃。
太子は妹子の病室に呼び出されていた。
とはいえ、自力で歩ける力はないので車椅子に乗り、家族に運んでもらったのだが。
看護師を通して初めて、小野さんのご家族が呼んでいます、と言われた。
それは彼にとって嫌な予感しかしなかった。
一応、太子と妹子の仲は親公認である。
そういう意味での計らいだとすると、呼びだされた理由はやはり良いものではないのだろう、と太子は確信していた。
そして悪い予感は見事的中し、いざ妹子の病室へと入ると、そこには瞼を固く閉ざし、ベッドに横たわる彼、とその周りを囲む彼の家族がいた。
呆然としている太子に、看護師が耳打ちしてきた。
「残念ながら、今回ばかりは前のように持ちこたえられないでしょう。」
彼の胸がドクンと大きく跳ねあがる。
覚悟はしていた。いつかこういう日がくるのだろうと。
けれど、いざそれが訪れるとやはり動揺してしまう。
「たっちゃん・・・ごめんね、貴方も辛いのに。でも、貴方の声なら、目を覚ますと思って。」
そう、涙声で訴えてきたのは妹子の母親だった。
たっちゃん、というのは太子のことだ。
彼らが幼馴染だったせいか、大人になった今でも互いの親からは愛称で呼ばれている。
「お願いだから、名前を呼んでくれる?」
親なのだから当たり前だが、彼女もそうとう辛いのだろう。
語尾になるにつれ声は不安定になり、言い終えると、ハンカチを取り出し、目元に思い切り当てていた。
胸からこみ上げてくるものを、唇を噛み締めて堪え、太子は妹子の近くに寄った。
「・・・妹子。」
こうして改めて場を設けてもらうと多少照れくささが残る。
緊張のせいか声は震え、彼には届いていないようだった。
二度目は恥を抑え、少し大きめの声で呼ぶ。
すると、彼の母親が言った通り、徐に瞼が上がった。
「・・・!妹子、妹子!」
それを機に周囲の視線のことは忘れ、太子は必死に名を叫んだ。
そして再び奇跡は起き、彼はこちらのほうを振り向いた。
しかし彼の双眸は、とても明るい未来を感じ取れるものではなかった。
やけに黒目が目立つ、生気を失った瞳。
ほぼ昏睡状態の中、己の声だけに反応してくれるのは特別に思えて嬉しい反面、彼の濁った瞳からの視線を受けて、太子は複雑な感情を抱く。
(そうか、お前はもう・・・。ううん、十分頑張った。偉いぞ妹子。)
光の宿っていない目で彼が捉えているのは闇か、虚空か、はたまた自分なのか。
太子はただ、印象的な鈍い黒目から視線を外せないでいた。
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「太子さん、そろそろ貴方のお身体にも障ります。」
暫し意識不明の彼とみつめ合っていると、看護師から部屋へ戻るよう促された。
自分の身体のことなどすっかり忘れていたが、逆らう気力もないので、渋々太子は承知する。
「やっぱり貴方の声だと起きるのね。たっちゃん、ありがとねえ・・・。」
妹子の母親は鼻をすすりながら礼を言い、やっぱり一番大切な人なのね、とも付け足した。
それを聞いて太子は微かに口許を緩める。
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。・・・じゃあな、妹子。」
名残惜しく別れを告げると、太子は車椅子を押され、部屋をあとにしたが、暫く妹子の視線は彼がいたところに留まっていた。
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*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆あとがき*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆
物語はいよいよクライマックス!(意味不
何回言っているのだろうこの台詞。
なんかもうここまでくるとこの後の展開が読めてしまいますね・・・。書いてても胸が痛い。
そしてやっぱり「たっちゃん」は笑う・・・。
大切な人の声には無意識でも反応するんだね、妹子。
それほど愛しているということなのでしょう。勿論太子も彼を愛している。美しき(?)相思相愛。
ではでは、いつもありがとうございます(*^ー^)ノ