※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また閻鬼が嫌いな方もです。

余命三ヶ月太妹の番外編です。閻鬼です。
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その日、閻魔はいつも通り仕事をしていた。
椅子の背もたれに限りなくもたれかかり、もはややる気なさげに反り返っていてもこれが普段通りの仕事ぶりなのである。
こういった上司の態度に対し、部下は何も言わない。
怠惰を見せ始めた頃はそれなりに注意していたのかもしれないが、あまり厳しくあたると仕事を放棄してしまうので、今では彼のお気に入りの秘書がたまに小突いてくれるだけありがたいものとなっている。
その秘書も閻魔のだらけぶりにいちいち注意するのに疲れたのか、慣れたのか、最近ではこれくらいのことではあまり厳しく叱らなくなった。

大王、と秘書が呼びかけると案の定やる気のない返事が返ってくる。

「何故、太子さんと妹子さんの記憶を消さなかったんですか?」

瞬間、ぴくりと閻魔の身体が反応する。
それから徐に上体を起こし、久々に正しい姿勢で机に向かった。

「・・・それと、何故、大王に関する記憶だけなくしたんですか?特に太子さんとは、あの方の生前からのお付き合いだったでしょう。」

立て続けに投げかけられる質問に対し、閻魔は珍しく真顔で机の上にある書類を眺めていた。
別に書類に目を通していたわけではなく、ただこの問いに対し、どう答えるべきか考えていたのだ。

鬼男の言う通り、閻魔と太子は、太子の生前からの付き合いだった。
太子は幼い頃から周りとは違う感性を持ち、異界に迷い込むことがたびたびあった。
その時彼に興味を抱き、彼がこちらに繋がる川に入っていたある日話しかけたのが閻魔だった。
立場が似ていたせいか波長があった二人は、たびたび仕事を抜け出しては情報交換をしたりなど、普通の友人のような付き合いをしていた。
また、閻魔のほうもそういうわけで太子には特別目をかけていたので、彼を冥府から観察したりして楽しんでいた。
だからこそわかる、あの二人の関係。
上司と部下、皇族と地方豪族、そして同性。
彼らはそれぞれ背負っているものがあった。だから、例え互いの想いが通じ合ってもそれを突き通すことは許されなかった。

「鬼男くん。俺はあんなに苦しい恋を、見たことがない。」

虚空を見つめながら呟かれたその言葉はしっかりと鬼男の耳に入った。
更に閻魔は言葉を続ける。

「確かに俺は冥府の王として失格の行動をとった。けれど後悔はしていない。」

力強く発せられた言葉に鬼男は軽く目を瞠る。
彼の双眸は昔を懐かしむように細められ、いつになく真剣な眼差しをしていた、のだがそれはすぐにふっと緩められる。

「こうして鬼男くんを愛することも、後悔していないよ。」

突然話題が自分に切り替わり、先程とは一転、やわらかい笑みを向けられ途端に鬼男の頬は朱に染まる。

「なっ、何言ってるんですか!」
「鬼男くん大好きぃー。」
「てっ、ていうか何でアンタの記憶だけなくしたんですか?」
「んー・・・何でかな。」
「え・・・って、うわっ!ひっつくな!放せ!」

本当に、何故自分は、己に関する記憶だけ消したのだろうか。
閻魔は鬼男の腰に抱きつきながらふと考える。
消す理由がないのなら、すべて残しておいてもよかったのではないだろうか。

(それでも、何か、消しておいたほうがいいな、って思ったんだよなあ。)

口止めというわけでもない。そんなことをしなくても太子は話さないだろう。
それとも最初から全てを知っていれば彼の重荷になる可能性があったからなのだろうか。
何にせよ、はっきりとした理由がないことは明らかなので、これ以上考えるだけ無駄だ。閻魔は軽く頭痛を覚える。

「鬼男くんしばらくこのまま補給させて・・・。」

間延びした声でそう告げると、閻魔は腰に回している腕に力を入れる。
更に顔をすり寄せると、洗剤の香りと交じり合った彼の匂いが鼻孔をくすぐる。

鬼男のほうも何かを察したのか、それきり抵抗をやめおとなしくそこに立っていた。
だが暫くして下半身をまさぐるような怪しい手つきに気づく。

「・・・あの、大王。僕の勘違いかもしれませんが、、何か変なことしようとしてません?」
「んー?変なことって?例えば?」
「た、例えば・・・。」

ちらりと上目遣いで彼の表情を窺うと、耳まで真っ赤になっていた。
そんな彼が愛おしくて閻魔の悪戯は更に加速する。
服の中に手を入れ、腰をさすると彼の喉が甘く鳴った。

「ちょ、大王・・・仕事中ですから・・・。」
「今は休憩時間だけど?」
「でもっ・・・。」
「わかってるよ。まあ、休憩時間だけじゃ足りないし、その代わり、今夜俺の部屋にきてくれるよね?」

怪しい響きしか感じられないその言葉に、鬼男はやはり顔を赤らめながらも小さくうなずいたのだった。

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゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ あとがき゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
閻鬼っぽくなったのかな?とりあえずその頃天国では、的な甘い話を書きたかった。
のですが・・・どうなんでしょうね文章・・・。
ではでは、お読みくださりありがとうございます(*^ー^)ノ