※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また太妹が嫌いな方もです。
もしも妹子がアホで太子が普通だったなら、という妄想からきた小説。パロです。またもや暗殺ネタです。
思ったより長くなった。
ラブコメってかコメディーですね。続かない。
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とあるアパートの一室では、締め切りを目前に控えた一人の小説家がパソコンに向かっていた。
目の下には濃いクマが浮かび、青白く頬も痩せこけて気の毒だ、というわけでもなく、血色も良い上タバコを吸いながら落ち着いてキーボードを打つその様はむしろ余裕の色さえ見える。
短くなったタバコをくしゃりと灰皿に押し当てたその時、インターホンが響き渡った。
編集者がくるにはまだ早すぎる時間なため不思議に思いながら忍び足で戸まで近づく。
例え余裕があったとしても締め切り前にセールスの相手をしている暇はない。
覗き穴からそっと窺うと、そこには某宅配会社の帽子を被り、ダンボールを抱えた青年がいた。
安心して扉を開けると青年は白い歯を見せ実に爽やかな笑顔をみせる。
「こんにちは!こちら、厩戸太子様のお宅でよろしかったでしょうか?」
あ、はい、と返事をすると、青年は笑顔を保ったまま言葉を続けた。
「こちら、『暗殺ならお任せ!飛鳥アサシン事務所』様から、暗殺者一名が届いておりまぁす♪」
彼が調子良く語尾を上げた時にはもう太子の姿はそこになかった。
「ちょ、ちょっと話だけでも聞いてくださいよ!!」
「大丈夫。警察には良い精神科を紹介しておくからね。」
「通報しないでください!!怪しい者じゃありません!!」
「暗殺者とか言っててお前怪しくないと思ってるのか。」
「だからその辺はちゃんとお話しますから!!ドア開けてください!!」
あまりにも彼が騒ぎ立てるものだから近所迷惑になっては困ると思い、太子はチェーンをかけ渋々もう一度扉を開ける。
すると今度は過度な露出をした青年が立っていた。
いつの間に着替えたのだろうか。それにしても肩に腹、そして腿の露出といえば、あるものを彷彿させる。
「・・・T○R?」
「TM○じゃありません。」
小説家としてこの面白い青年を観察してみたいという好奇心に駆られたが、完全なる不審者と判断し、太子は再び手を引いた。
しかし思ったようにドアが閉まらない。
ふと下を見ると見知らぬ靴が挟まっていた。
「さっきと同じようにはさせませんよ・・・。」
勝利の笑みを浮かべている相手に焦りを覚え、太子は無理やり閉めようと足を蹴りつつドアノブを引く腕に力を込める。
しかし青年の手は既に内部へと侵入しており、やはり力ずくでドアを開けようとしていた。
こうなればもはや力勝負である。
「で、話って何?」
「だから一度家の中に入れてください。」
「不審者を入れるわけにはいかないのでね。」
「大丈夫です、すぐに殺しはしませんから。」
「やっぱ帰って。」
「嫌です。家の中に入れてください!」
このやりとりは数分ほど続いたが、小説家で家に引きこもっている太子と、暗殺者というくらいだから身体を鍛えているだろう青年、どちらが勝つかなど最初から目に見えていた。
先ほどのやりとりを通して見るからに頭が足りなさそうだし、まあ大丈夫か、と力尽きた彼は諦めて青年を家へ上げた。
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「僕は飛鳥アサシン事務所の社員、小野妹子と申します。今回貴方を暗殺しに来ました。」
彼は部屋に似合わぬ大きめのベッドの上でお茶を啜りながらそう言った。
「一つ聞いていい?暗殺ってばれないように殺す、ってことだよな?お前の正体ばらしちゃっていいの?」
「あー・・・いいことにしましょう!」
太子は唾を飲み込んだ。
何せ初めてだったのだ。
本物のアホを目の当たりにする、ということが。
証拠は、沢山ありすぎてうまく説明することができないが、とりあえずのこのこと標的の家へ舞い込み、包み隠さず自分の正体を明かすところや、まず見た目からして思い切り怪しいところなど。
「というかお前その格好何?最初に着てた宅配会社の服は?」
「その服は投げ捨てました。あとこの服は、何故か社長が着ろ、って言うので・・・しかも若い男の社員だけに。」
お前今すぐ職変えたほうがいいぞ。
喉まで出かかった言葉を何とか飲み込む。
初対面の相手に、ましてや敵らしき人物にアドバイスをする優しさなど持ち合わせてはいないが、流石に背筋が凍る。
「もう一つ聞くけど、何で私を殺しにきたの?」
忘れかけていた本題に入る。
彼は不思議だったのだ。何故なら自分はどん底の売れない小説家でも、有名でばんばん稼いでいる小説家でもないし、家が特別金持ちなわけでもない。
まずまず普通の生活が送れる程度の、極普通の人間なのだ。
それなのに何故狙ってきたのか、誰が仕向けたのか、理由がまったくわからない。
すると青年、妹子のほうも首を傾げた。
「んー・・・僕もわかりませんねえ。ただ殺してこいって命令が下っただけなので・・・。」
「お、お前理由もわからずにやるのか?」
「はい。みんなそうですよ。理由を聞かされる時もありますが、聞かされなくてもこちらから聞いてはいけません。暗黙のルールというやつです。」
誤って聞いてしまったその時は、どうなるかわかりませんので、と彼は小声で付け足した。
再び太子の背筋に嫌な気が走る。
それから彼は口を閉じてしまい、二人の間に少々重い空気が漂ってきたがすぐに妹子の明るい声がそれを破った。
「質問は終了ですか?」
「あ、う、うん。」
「では、後日改めて殺しに参ります。」
「・・・お前・・・いや、いいや・・・。」
今がチャンスなんじゃないかと思ったがそれは言わなかった。自分の弱点をわざわざ伝える奴がどこにいるだろうか。
ともかく礼儀正しい人間ということにしておこう、と太子は思うことにしたのだがそれもつかの間、彼の言葉ですぐに前言撤回することとなる。
「あっ。」
「なんだ。」
「あのー、大変言いにくいのですが、僕らって殺すまで帰ってくるなって言われてるんですよね・・・。」
「ホテルにでも泊まればいいじゃないか。」
「いやお金持ってないんですよ僕新人なので。」
(ああ新人なのか。どおりで頭がちょっと・・・あれなのか。)
心の内で納得しているとそれが顔に出ていたようで妹子の頬が少し膨れる。
「ちょっと今何考えてたんですか・・・。まあいいや、僕社員寮だし取りに戻れないし・・・。」
「社員寮なんかあるのか・・・。金なんかやらんぞ。」
「いえ、お金ではなくてですね、まあ率直に言うとこの部屋に住まわせてください。」
「・・・はあ?」
太子は目を丸くした。
普通に考えて自分を狙う殺し屋と一緒に住まうなど、できるはずがない。
当たり前のように断ろうと口を開きかけたその時、彼は言葉を足した。
「同居させてくれなければ貴方の家の前でこの格好で寝袋で寝ますよ。」
「なっ・・・。」
脅迫というか嫌がらせでしかない言葉に太子は更に目を瞠った。
そのようなことをされたらまず周囲の目が気になるし、それにそのやけに露出した服でうろつかれたら完全に不審者だ。しかも自宅前だということは自分の知り合いだと思われる可能性もある。
そして周りが自分を見る目が変わる。それも嫌な方向に。
「・・・わかったよ。」
苦渋の決断だったが、想像してみた結果、こうするしかなかった。
それに暗殺者といえども背中を向けて仕事をしていても多分襲ってこないだろう。何せアホだから。
しかしそうなればいつ殺しにかかってくるのだろうか、とまたもや疑問が浮かんだが、まあ頭が足りなくても暗殺者だからそれなりに策はあるのだろうということにしておく。
「ありがとうございます!」
若い暗殺者は嬉々としていたが太子はがっくりと項垂れた。
こうして極普通の小説家とアホな暗殺者の不思議な同居生活が幕を開けた。
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■□■□■□■□■□続かない■□■□■□■□■□
続きません。てかなっが!!!長いな!!!
もしも妹子がアホだったらなーって考えた結果だったけどなんかこれ一次創作・・・いや気のせい。太子は青ジャージ着てるから気のせい。うん。書いてなかったけど着てることにする。