BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。

また太妹が嫌いな方もです。

「珈琲の味は。」のその後。

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あの一件以来、妹子は太子と距離を置いた、・・・などということはなく、何事もなかったかのように極普通に太子と接していた。


そして来たる日曜日。

妹子は普通に太子宅を訪れた。

いつものテーブルでノートを広げ、普段通りに勉強を始める。


そのまま時間は流れ、とある問題でつっかえ集中力が切れた頃、一旦休憩をしようと妹子は顔をあげた。

その瞬間、視界の隅に白いものが映る。

改めてそちらのほうを見ると、雪がちらついているのをはっきりと捉えた。

ふと先週の出来事が脳裏を過る。


(・・・なんであの人、あんなことを。)


全く気にしていなかったわけではなかったのだ。

ただわざと考えないようにするために勉強へと昇華していた。

しかし集中力の切れた今、しかも太子の家で、彼がいる側で思い出してしまっては、再び勉強へと昇華することは難しそうだ。

今まで溜まりに溜まった疑問や感情が一気に胸の内に溢れ出る。


(というかあんなことがあってすぐにのこのこと太子の家に来る僕も僕だよな・・・普通ならありえないような。

でも避けるのも変だしなあ・・・僕にどうしろと。)


そもそもあれは冗談だったのではないか、という一つの案が思い浮かぶ。

そういえばあれ以来、太子自身変わった様子もなかったし、あの件にも触れようとしなかった。

本人はきっと冗談で終わらせたつもりなのだろう。そうとなると悶々と考え込んでいる自分が馬鹿らしいではないか。



「妹子?」


「はっ、はい!」



ペンを止め己の世界に浸っていたところ、突然名を呼ばれ思わず過敏に反応してしまった。

声の飛んできた方を向くと、眉を上げ案の定少し不思議そうな表情を浮かべている。

しかし至って低く落ち着いた声色で会話を続けた。



「珈琲、飲む?」


「お、お願いします。」



またもやぎこちなく返すと、向こうからコポポとお湯が注がれる音が聞こえてくる。

その間、妹子は止めていた筆を動かすこともなく、珈琲が注がれる音を聞きながらただ窓の外の雪を眺めていた。


(普段通りに話せばいいんだ。あのことなんて、忘れてしまえば。)


そう意識していると、何故か胸の奥がもやもやとした感覚に襲われる。

くすぐったいような、痒いような。



「ほい。」



ドリップも手馴れたもので、珈琲はわりとすぐに差し出された。

白いカップから芳ばしい香りが湯気と共に立ち上る。



「ありがとうございます。」



とはいえ、実は妹子は猫舌で、熱いものを口にするのは苦手だ。

猫舌なのに熱い珈琲が好きだなど矛盾している気もするが、とにかく少し冷まさなければ飲めないので、暇を持て余した妹子はカップの中身を、湯気をじっとみつめる。

目の前に太子がいるのだがそんなことはお構いなしだ。



「そういえば。」



己の世界に入っている彼を暖かい目で見守りながら、珈琲を啜っていた太子は徐に口を開いた。



「先週のこと、あれ、本気だから。」



途端に妹子の視線がカップから太子へと移る。

幼い印象を受ける丸みを帯びた瞳は見開かれており、驚いているだろうことは太子にも伝わってきた。



「えっ、え、えーっ・・・。」


「おま、くふっ。」


「笑わないでくださいよ・・・。」


「だってそんなあからさまに・・・ごめんごめん。」



口ではそう言いつつも全く反省していないようで、口角は上がったままだった。

初めはあからさまに動揺していた妹子も、彼の笑顔で徐々に気が抜けていく。

そもそも緊迫した状況など、この二人には合わないのだ。



「で、返事は?」



クスクスと笑いながら太子は聞いた。

それにつられて妹子も少し頬を緩ませ、首を傾げて答える。



「・・・さあ?」


「さあ、っておま・・・。」


「だって急に言われても・・・。」


「急にってあれがあってから一週間は考える時間あっただろ!?」


「いや冗談だと思ってたので・・・。」


「ひどぅい!」



大袈裟にめそめそと嘘泣きを始めた太子を、面倒くさいなあと思いながら妹子は適当に慰める。

これは確かにわざとで、しかし構ってもらうことに嬉しく思い、いくら彼が慰めの言葉をかけても太子はうじうじと演技を続けた。

本当疲れるオッサンだなあと、妹子はため息をつく。



「いや本当わからないんですよ、ですから、」


貴方が恋を、教えてください。


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゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆後書き゚・:,。゚・:,。★゚・:,。゚・:,。☆

続く予定なかったのですが続いてみました。

またもや前半と後半書いた日が違うせいか文章の調子が・・・いつもか。

最後・・・太子の反応に関して必要か不必要か・・・迷ってしまいました・・・。

ので続きみたいな感じのはこちらに載せておきますね↓


刹那太子は耳を疑ったが、俯きがちな彼の頬が朱に染まりつつあるのを確認すると、口元を綻ばせた。