※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。
また、太妹が嫌いな方もです。
シリアスです。太子結婚前日のお話。
会話文多いかもしれないです。
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静かな物音と共に、薄暗い部屋に橙色のぼやけた灯りが入り込む。
それに気づいた、予め部屋にいた太子は扉に背を向けたまま静かに口を開く。
「・・・誰だ。」
「僕です、太子。」
妹子は静かで鋭い太子の口調に怯んだ様子もなく平然と存在を告げた。
そして自然な流れで部屋に入るなり、手に持つ蝋燭だけを頼りにして彼の隣に正座で座る。
それから蝋燭を、自分の正面に静かに置く。
妹子はゆらゆらと揺れる蝋燭の火を見つめながら静寂の中、空気に合う調子で太子に話しかけた。
「珍しいですね。正装でいるなんて。」
「・・・仕方ないだろ。今日一日式やら何やらやってたんだから。」
「そうでしたね。珍しく忙しそうでしたもんね。」
「珍しくって・・・それじゃまるで私が全然仕事してないような言い方じゃないか。」
「え?してないじゃないですか。」
「おま・・・!上司に向かって失礼な・・・!」
会話にいつもの調子が戻り、口を尖らせ何かプンスカと言っている太子を見て妹子はクスッと笑う。
そしてその笑みは次第に作り笑いとなってきた時、妹子は再び落ち着いた声で言葉を発した。
「ご結婚おめでとうございます。」
その言葉に太子もまた目を瞠りつつ表情を失くす。
暫しの静寂な空間、太子は、口元こそ無気力、無表情を装っていたが、妹子の顔をみつめているそれは、まさしく朝廷でときたま見るあの冷徹な流し目で、それに加えて人を射るような眼光を宿していた。
「・・・それ本気で言ってんの?」
「本気も何も、おめでたいことを祝っただけですよ。」
いつになく低く、真面目な声色で問われても妹子は物怖じせずに答える。
動じない妹子の様子に、逆に太子は唾を飲みこんだ。
胸の奥にむず痒いような、痛いような違和感を覚えつつ口を開く。
「君、自分が何言ってるのかわかってるの・・・?」
「はい。」
「私、結婚するんだよ?」
「はい。」
「しかも知らない人と結婚しなきゃならないんだよ?」
「はい。」
質問をする度に息苦しさが増してくる。
こちらが苦しい思いをしているというのに、妹子は無表情で、全く動じることもなく、はい、としか答えない。
無反応に等しい反応をされる度、太子の拳の中の汗も増していった。
そしてそんな態度の彼にとうとう耐え切れなくなり、太子は息が詰まりそうになりながらも、なんとか苦しそうに声を発した。
「・・・っ、私達、恋人同士じゃなかったの?」
瞬間、妹子の心臓がドクンと大きく跳ね上がる。
この言葉にはさすがに動揺した。いや、動揺すまいとは思っていた。
しかし、こんな、震えた声で、真っ直ぐと目をみつめられて言われると、嘘はつけなかった。
そのかわり、とっさに視線を床のほうへと外す。
「ねえ妹子・・・。」
「・・・。」
「何で答えないの?」
「・・・。」
「ねえっ・・・!」
「・・・。」
いくら問いかけても今度こそ本当に無反応となった妹子に太子は焦りを感じた。
感情の昂りからか、感情を抑えきれなくなりそれが声色にも表れたようで、質問を重ねる度語尾がきつくなっていく。
それでも妹子は俯き、目をぎゅっと瞑って、拳を握り少し苦しそうな表情を浮かべていた。
それから一瞬、妹子は自分の身に何が起きているのか処理できなかった。
しかし答えは背中の痛みと共にやってくる。
正面を見ると、目に涙を溜めた太子の顔が天井を背景にそこにあった。
「私はっ!!」
突然、力強く言葉を発されて妹子の肩はビクッと跳ね上がった。
太子は妹子の瞳を真っ直ぐ見つめながら言葉を続ける。その声はやはり震えていた。
「私はっ・・・、お前を愛しているんだよっ・・・。
最初に愛したのがお前で、最期まで愛するのもお前だけで。
今も、今までも、これからも、ずっとお前だけしか愛せない・・・っ!」
その時、カタッという音と共に一気に部屋が暗闇に包まれた。
どうやら太子が感極まって誤って足で燭台を蹴って倒してしまったらしい。
ちょうど火が消えたからよかったものの、そのまま灯りを灯していたら火事になるところである。
しかし妹子の、茶系の色素が目立つその瞳は、ともし火が消える前に、太子が顔を思い切り歪ませて涙を流しているのをはっきりと捉えていた。
また、涙で顔がぐちゃぐちゃになっても、妹子の瞳を真っ直ぐと見続けていることも知っていた。
その様子を見た妹子は、ゆっくりと腕を伸ばし、太子の頬を左手で撫で擦りながら静かに口を開く。
「いいですか太子。いつかこうなるということは十分承知していたはずです。
貴方がどんな思いを掲げようと、貴方は決まった相手と結婚をして世継ぎを残さなければなりません。
男同士では勿論子供は産めませんし、倭国では同性同士の結婚は認められていませんし、
なにより、僕等の間には、身分という、大きな壁があります。」
諭すようなその言葉を太子は唇を噛み締めながら、依然涙を流しながらおとなしく聞いていた。
そんな太子を慰めるように、妹子は頬を撫で擦る。
その手はまるで母親が幼子をあやすような、優しく柔らかい手つきだった。
「ですが――」
少しの静寂の後、再び妹子は口を開いた。
「ですが太子、僕は――――
刹那、太子には世界中がスローモーションで動いているように思えた。
また、妹子の唇も、ゆっくりと動いているように、それと共に声も後からゆっくりと、太子には聞こえてきた気がした。
そして同時に、息も、止まった。
―――――貴方のことを、一生愛し続けます。」
暗闇で妹子は微笑んだ。
しかしその微笑みは、瞳は明らかに哀を表している色をしていて、口元も硬い笑みで。
それは本来の微笑みとは正反対で、今にも泣きそうな顔をしていた。
彼自身は、何より周りが暗いので自分の表情など見えないだろうと思っていたが、
太子は夜目も利く上、妹子の言葉に目を大きく見開いたため、しっかりと、その漆黒の瞳に、聡明な脳に、彼の表情は焼き付けられたのである。
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゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚ 後書き゚・*:.。..。.:*・゚゚・*:.。..。.:*・゚
シリアスもの書いてみました。
感動させるものを・・・と目指していましたが自分が見直すと涙どころか笑えてきてこれはうpしていいのだろうかどうだろうかと迷いましたね。
太子の結婚式前夜の話のつもりで書いていましたが最後のほうそれを強調しなくなっちゃって結婚前夜だということを忘れそうな・・・ということで結婚前夜です。忘れないでください。←
何かうだうだと会話文が多いような気がしますが、語彙が貧困なので見過ごしてやってください。
そして途中から表現の仕方みたいなの変わってたりするかもしれませんが、なにぶん後半とか書いた日が違うので・・・。
この後二人はボロクソ泣きたい気持ちを性欲に変えてヤると思います((自重しろ
それで最中に生理的な涙と交えて妹子さん何気に泣くと思います。
太子も妹子にバレないように泣くと思うけど実はお互い泣いてることわかってたり。悲しいっすね。
本音駄々漏れして最後二人で思いっきり泣いてたらうまい←
でも太子が結婚した後も二人は夜な夜な人目を忍んで会ってそうな気がします。
それで太子が死ぬ前も妹子がずっと付き添って・・・みたいな。
そして来世で幸せに((THEハッピーエンド主義者
少しでも泣けていただけたら逆にこっちが泣きます←
でわでわ(*^ー^)ノ