※BL・腐の意味がわからない方、これらの言葉に嫌悪感を抱く方は閲覧をご遠慮ください。

また、太妹が嫌いな方もです。

櫻音からかなり前にネタいただきました。

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寒さの厳しくなってきた師走の上旬。

朝廷から一つの奇妙なくしゃみが聞こえてきたと共に鼻をすする音も聞こえる。



「ぱっふぉい!!あ゛ー。最近冷えるなぁ・・・。」



いつものごとく特徴的な青いジャージを着た太子は、腕を摩って何とか暖をとろうとしていた。

しかし真冬と化した今、防寒着など一切着用せず、ジャージのみで外に出るというのはさすがにきつい。いくら摩擦で暖めようとしても一向に暖などとれるはずがなかった。


さすがに上に何か着るべきか、はたまた下着を着用しようかと考えていた時、ふとあることを思い出す。



「そういえば妹子、ノースリジャージだったなぁ・・・。アイツ、真冬でもあのジャージなのか?ププッ、可哀想。」



元はといえば太子が妹子にそれを支給したせいなのだが、さすがにこの寒さでノースリーブジャージ一枚はあり得ない。特に妹子はかなりの冷え性である。



「・・・アイツ、冷え性だし、可哀想だから見にいってやろう。」



可哀想、という名目で実は興味津々なだけなのだが、ともかく太子は妹子を探し始めた。

そして太子はこの時、妹子には朝廷服というものがあることを完璧に忘れていたのである。


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草木を掻き分け、途中A棒とB棒の間に挟まったフィッシュ竹中を助けたり、ゴーレム吉田にぶつかって吐血をしたりと、とにかく色々な事を経て早1時間、とうとう目的の人物を見つけた太子は、自分が今どんなに無様な姿になっているのかを忘れて、背後から忍び寄る。

しかし太子の周りには勿論妹子以外の朝廷の人達がいて、彼の不気味な姿を見るなりなんなり、案の定一斉にざわめき始めた。

さすがに背後とはいえ、先程とは違う声色で人々が話していたら何事かと気づくだろう。

特に妹子の場合は、こういう時は大抵、太子が自分のところへやってきた時なので慣れっこなのである。

ああ、また太子か、と思いつつ後ろを振り返ったが、さすがの妹子も無残な姿の太子を見ると一瞬身を引いてしまった。


「ゲッ、アンタどうしたんですかその格好!」


「いやぁ・・・色々あってだな・・・。」



太子の特異体質を知っている妹子はそれ以上何も聞こうとはしなかった。

聞いても自分には未知の世界だとわかっているからである。

そんな彼が呆れ返っていると、ふと太子の口から変な音が漏れる。



「ぱっふぉい!!」


「何ですかそのくしゃみ・・・。」


「ぱっひょふぉい!!!」


「ぱっひょふぉい!?どうやったらそんなくしゃみが出るんですか・・・。」


「私に聞かれても・・・うっひょいひょい!!」


「それもうくしゃみじゃねーだろ!!」


「そんなこと言われたって・・・。」



相変わらずこの人の身体のつくりがよくわからないな、と妹子は思う。

一回解剖してやろうか。いや、もう埋めてやろう。そうしよう。

妹子の思考回路が怪しく曇ってきたその時、突如太子は姿勢を整え、あからさまな決めポーズをしたかと思えば、妹子に向かって人差し指をピンと張らせた。



「ていうか妹子!!」



突然の大声に妹子は思わず肩を跳ねさせる。

いつもなら約束を破ったことに対して怒って来るんだろうと、大体の予想はつくのだか、今回は特に約束をした覚えもないし、勿論破った覚えもないわけで、大声で怒鳴られる理由など特に思い当たらないのだった。

いつも以上に太子の行動が読めなくて戸惑いつつも妹子はおずおずと口を開く。



「な、何ですか?」


「その格好!!」


「え?」


「何で半纏着てんの!!」


「・・・は?」



一瞬妹子の思考回路が停止した。

まあ無理もない。あれこれ考えた末に、答えがこれ、だ。

何故半纏を着ていて怒られなければいけないのか、何故彼はそんなことで怒っているのか。

妹子の頭の中には次々と疑問ばかりが浮かび上がる。



「あっ、しかもジャージじゃないし!何それ!」


「え、何それって、朝廷服ですけど・・・。」


「朝廷服?あ、そういえばそういうのもあったな・・・チェッ。」



まるで期待を裏切られたというような語尾にますます謎が深まるばかりである。

普通仕事場では決まった服を着ているのが当たり前だろう。それに対して文句をつけられても困る。

そもそもさっきから半纏を着てるだとか、ジャージを着ていないだとかで何故怒られなければいけないのかさっぱりわからない。

一体この人は何をしにここへ来たのだろうか。

全ての疑問をなんとかまとめて質問をしようとしたその時、一足早く彼は口を割った。



「あーあ。せっかく妹子が寒がってる様子が見れると思ってきたのになぁ・・・。全然寒がってないし・・・むしろ鉄壁!防御率高男!!」


(ああ、そういうことか。つまりは僕が寒がっている様子を見たくて来たというわけか。)



太子のその一言でめでたく全ての疑問が一瞬にして解決した。

しかしそれにしても随分白状な理由に対して妹子は軽く怒りを覚える。


結局特に用事がないというわけで、これ以上太子を自分のそばに居させる意味がない、というかむしろ邪魔だ。

そう思った彼は慣れた手つきで太子を厄介払いし始めた。



「ほらほら、仕事の邪魔になるので帰ってください。というかアンタ、どうせ仕事しないで来たんでしょ?アンタがやらないぶんこっちに回ってきて大変なんですから、さっさと仕事してくださいこのカレー臭が。」



妹子はくるりと背を向ける。ここまで罵倒すればさすがの太子でも、「か、カレー臭だと!?ムキーッ!」などと、プンスコと頭から煙を出して言いながら帰っていく。

と、妹子は推測したが、しかし、背後からは一向に何も聞こえてこない。

不思議に思った妹子は振り向いて太子の様子を伺った。

すると彼の視線は明らかにある一点へと注がれていることに気づく。


「・・・あったかそー・・・。」


「な、何ですか?半纏ならあげませんよ?」


「おま・・・薄情な奴め・・・。」


「寒いならさっさと帰ってください。というかいくら長袖でも真冬なんだから寒いに決まってるでしょう・・・馬鹿ですかアンタ。あ、馬鹿でしたね。すみません。」


「お、おま・・・!摂政に向かって一日何回馬鹿馬鹿言うんだ!このオタンコナス!」


「馬鹿に馬鹿って言って何が悪いんですか馬鹿。あとオタンコナスはそっちでしょう馬鹿が。」


「お・・・オアまアっ・・・!」



いきなり馬鹿の集中攻撃をくらったせいか、太子は口を開いたものの何も反論できず、うろたえて思わず意味のない言葉を発してしまった。

それから涙目で頬をプウッと膨らませながら妹子を睨んだ。

しかし妹子は、まるで興味がないといったような冷めた目つきで太子をみつめる。

しばしの間、この目力合戦は続いたが、またしても太子から折れてしまい、ついにはブツブツと何か言いながら本当にいじけてしまった。

それでも妹子はずっと冷めた目で太子を見る。



「なんだよ・・・妹子のケチンボ・・・オタンコナス・・・。いいし・・・本当は寒くなんかないし・・・むしろ暑いぐらいだし・・・・・・・あ。」



太子は何か意味ありげな言葉を発したのと同時に、それまで俯きながら人差し指を突き合わせていたが、ピタッと動きが止まった。

しかし太子の呟いている言葉は妹子の耳には届かないため、何の前触れもなく太子の動きが急に止まり、怪訝そうな表情を浮かべる。

さらに太子は無表情で勢いよく顔を上げたため、妹子はビクッと肩を跳ねらせる。



「妹子!」


「は、はい?」



突然名前を叫ばれ妹子はさらに大きく肩を揺らしながらとっさに返事をした。

そして太子が何やら満面の笑みを浮かべたかと思うと妹子へと走り寄り、半纏を掴んだ。



「こうすればいいんだ!!」



刹那、半纏の片端が宙に舞い上がった――ように妹子は思えた。

まるでスローモーションのように妹子の目には映った。それだけ衝撃が大きかったのだろう。

一瞬、自分の身に何が起きているのか理解できなかったようだ。


実際、太子のやったことはただ、妹子の着ている半纏の片端を掴み、それをひっぺがえして己が包(くる)まっただけである。

しかし初心(うぶ)な、仮にも恋愛対象として太子を見ている妹子にとっては、その予測できなかった行為に対して敏感に反応せざるを得なかった。


妹子は顔を真っ赤にしながら口を開く。

馬鹿じゃないですか。それじゃ前が開いて結果的に寒いです。というか返してください。

などと、言いたいことは山ほどあった。が、沢山浮かんだせいか、何から発すればいいのかわからなくなってしまい、結果的に口を開閉させるだけになってしまった。



「あ、でもこれじゃ前が寒いな・・・。ん?妹子、どうしたの?顔真っ赤だけど・・・。」



妹子がまだ衝撃の余韻に浸っている時、太子は欠点に気がついた、と共にふと、自分の隣にいる彼の様子がおかしいことに気づく。

顔を覗きこまれ、さらに二人が接近する。

太子の余計な行為に妹子の心臓はドクンと跳ね上がった。



「あ、あ、あ・・・。」



極度の緊張状態に陥り、身体が自然と危険を感じたためか、やっと声を発することができた。

しかし、頭の中は既に真っ白になっており、言葉を発することはできないようだ。



「ん?」



そんな彼の事情を勿論一ミリも知らない太子は、怪訝そうな表情を浮かべ、さらに妹子の顔へと近づく。

その時、反射で妹子は一歩後ずさった。

太子が包まりながら半纏の端を握っていることを忘れて。


勿論、寒くないようにとぎゅっとそれを握っていた太子は体勢を崩すまいと握っている手に力を込める。

しかし後ずさりをした逆方向から力が加わり、妹子が体勢を崩してしまったため、それの力に耐え切れなくなった太子もまた然り。結果的に二人とも体勢を崩し、転んでしまった。

瞬時、妹子は目を瞑る。



「っ――――!」


「・・・妹子、大丈夫?」


「あ、はい。太子こ・・・そ・・・・!?」



太子の言葉につられて妹子はそっと目を開けたが、その瞳をさらに大きく見開いた。

目の前には太子の顔があった。いや、太子の顔、と青空が映っていた。

青空が見えたことによって妹子は今の状況を把握した。


自分は太子に押し倒されている。ような格好になってる。

どうやら転んだ拍子に、という具合にたまたまなってしまったようだ。

ということは頭ではわかっているのだが、それでも妹子の顔はだんだん熱を帯びていく。



「あ、すみません・・・。」



とりあえず、自分が体勢を崩したせいで転ばせたようなものなので、妹子は謝罪の言葉を一言発した。

しかし太子からしてみれば、妹子を押し倒しているのは自分であって、むしろこちらが謝るべきなのでは、と思った。



(しかもなんか顔赤いし・・・。)



頬を赤らめて、あからさまに何かを訴えているような視線を太子に向けている様子は、彼からしてみればそれは反則と言える行為だろう。

太子は暫し妹子の困った様子を堪能し、それから半纏で二人の顔を隠した。



「・・・太子?・・・っ!?」



刹那、妹子の唇はある感触を覚えた。

それはガサガサしていて、でもどこか柔らかく、温かい感触。

まさに目の前の人物のそれであった。


何事もなかったかのように太子は半纏から手を放し、平然と起き上がる。

続いて妹子もゆっくりと起き上がり、腰を抜かしたようにその場にペタンと座り込んだ。

呆けているような表情を浮かべる妹子の顔を太子が覗き込む。



「妹子・・・可愛いね。」



太子が頬と目元を思い切り緩ませながら言うと、それを合図としたかのように妹子の顔が一気に蒸気する。

そして照れ隠しに俯いたかと思うと、身体をわなわなと震わせ、拳を握り締めた。



「こんのっ・・・アホ摂政がっ!!」


「ニューイヤーー!!!」










今年も飛鳥は平和です。

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*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆Happy New Year!*:..。o○☆゚・:,。*:..。o○☆


みなさま、あけましておめでとうございます!実はこれ、年明け前にもちまちま続き書いてましたww

来年に持ち越さないようと思ってたけど間に合わなかった^p^

まあそんなこんなで初小説です!やっぱり太妹www

そしてこれ、夜中の2:35に書いてます。けどなんとなく9時に設定してみたよ←


あ、みなさん、「ん?」って思いましたよね?

最初に、「師走の上旬」とか言ってるけど最後の太子の叫び声、「ニューイヤー」。

この小説の時期は確かに12月上旬です。最後の叫び声はまあ年明けたし太子の叫び声いつも独特だしいいや!と思っただけで((


最後のほうになるにつれてだんだん雑になってくる。

いや、最初書いてるとき調子よかったんだけどね・・・書く日にちとかずれると調子悪くなったりテレビ見ながらやってたり云々。


最後ねえ・・・ギャグオチと甘オチどっちにしようとか思いつつ書いてたらなんか浮かんだネタw

キスをしつつ照れつつ殴る。(私の)いつもの飛鳥だね!!

というかこれ、櫻音が言ってたのと何か違う気がする・・・気のせいにしておこう!!←

しかも随分前だしwwネタ貰ったのww

妹子が半纏着てて「おまーっおまーっ!」って怒る太子、までは覚えてる。あ、あと何とか二人で暖をとろうと・・・。

ただ最後転んでキスとかは・・・・あれれぇー?((殴

オチとか完全に私の趣味に走りました。すみません。


まあ、要訳すると、

妹子が半纏着てて太子がずるい!とか言って二人で半纏着ればよくね?ってなってうっかり転んでキス。

じゃね?((殴


長々と読んでくださりありがとうございました!(-^□^-)

みなさん、よいおとしを!(って今言っていいのやら←