大きな萱葺(かやぶ)き屋根で有名な今に残る江戸時代の宿場、その近くに一軒の家がある。その家も萱葺き屋根である。そして、フランツ・カフカの短編小説「家父の気がかり」に登場する謎の生き物「オドラデク」、この二つを背景に室井光広の「おどるでく」は書かれている。
 登場人物は、萱葺き職人の親方肥田岩男、息子地方の名士青年至、娘サチ子、ロシア文字日記の作者仮名書露文氏、私立図書館職員退職後、翻訳内職、実家手伝いの私。
 物語はロシア文字日記を切っ掛けに様々に展開してゆく。20か国語以上の主に書かれた言語に関わったという作者の「言霊に関する考察」と地域社会の人々の話し言葉の世界が不思議な調和を見せる。文化は地域に根差したものであると私達は学校で習ったが、地域に根差しつつ普遍的なものを求める作者の情念のようなものが感じられる不思議な作品である。発表から20年以上が経過しているが現在読んでも古さは感じられない。私達もまた解決を見ない同じ課題に直面しているからだ。
【中古】【メール便可】おどるでく/室井光広

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