こんにちは。
菊10銭のオーストラリアあて書状です。
1902年(明治35年)1月23日KOBE ⇒ 2月17日BRISBANE ⇒ 2月19日正午SYDNEY
郵便料金は、外信書状15gごとに10銭なので、いわゆる2倍重量便です。
今回は、この郵便物の逓送経路を推定しました。
〇神戸からBRISBANEまでの逓送経路の推定
『海商通報』で日本からオーストラリア行きの汽船の航程を調べると、濠州線の汽船のうち、『八幡丸』が2月17日にBRISBANE、2月19日にSYDNEYに到着していることが分かりました。
八幡丸のBRISBANE入港とSYDNEY入港が消印の日付と一致していること、オーストラリアの新聞によると、2月17日にBRISBANEに入港している汽船のうち、日本方面からの汽船は、八幡丸のみであったことから、この郵便物は『八幡丸』で日本からオーストラリアまでの運ばれたと思い、さらに八幡丸の航程を調べました。
<八幡丸の航程>
1月17日 横浜発
1月18日 神戸着
1月21日 神戸発
1月23日 門司着発
1月24日 長崎着発
1月28日 香港着
1月30日 香港発
2月2日 馬尼刺(マニラ)着
2月3日 馬尻刺(マニラ)発
2月11日 木曜島着発
2月14日 タウンスビル着発
2月17日 ブリスベン着発
2月19日 シドニー着
この航路であれば、封書に書かれている『via TORRES STRAIT(トレス海峡)』の経路と一致しますが、八幡丸の神戸出港は1月21日、この郵便物の神戸局引受は1月23日なので、この郵便物が神戸からシドニーまでの全行程を八幡丸で運ばれたとすると矛盾が生じます。
そのため、この郵便物は、八幡丸の中継地である門司、長崎、香港などのいずれかまで、他の方法で運ばれ、中継地で八幡丸に積み替えられ、オーストラリアに運ばれたと考えました。
『海商通報』によると、『廣島丸』という孟買(ボンベイ、現在のムンバイ)線の汽船が1月29日に香港に到着していることが分かります。
この郵便物が『廣島丸』に間に合えば、香港で『八幡丸』に追いつき、積み替えすることができそうです。
<廣島丸の航程>
1月18日 横浜発
1月19日 神戸着
1月22日 神戸発
1月23日 門司着
1月24日 門司発
1月29日 香港着
廣島丸の神戸出港は1月22日、この郵便物の神戸局引受は1月23日なので、この郵便物が神戸から香港まで廣島丸で運ばれたとすると矛盾が生じます。
そのため、この郵便物は、廣島丸の中継地である門司まで鉄道により運ばれ、門司で廣島丸に積み替えられ、香港に運ばれたと考えました。
この郵便物の神戸局引受は1月23日、廣島丸の門司出港は1月24日です。
廣島丸の出港時刻を調べたところ、明治35年1月17日の朝日新聞に、1月22日午前10時神戸出発の記載はありましたが、門司出港時刻は分かりませんでした。
そこで、神戸地方気象台による『神戸コレクション』を活用することにしました。
神戸コレクションでは、当時の一部の船舶の時間情報(日時)と位置情報(緯度経度)が分かるので、これを解析すれば、各船舶がいつどこを航行していたのか分かります。
解析の結果、廣島丸は1月24日午後6時に門司・関門海峡付近を航行、午後10時に対馬海峡方面を航行中であったため、門司出港は1月24日の夕方頃と推定できました。
※地図は現在のものを使用しています。
明治35年12月時点では、神戸を午後7時35分に出発すれば、門司に翌日午前11時45分に到着するので、1月23日神戸局引受のこの郵便物が翌1月24日に門司に到着したことは十分にあり得ると思います。
〇BRISBANEからSYDNEYまでの逓送経路の推定
BRISBANE局の中継印があることから、この郵便物は、BRISBANEで八幡丸から荷下ろしされ、BRISBANEからSYDNEYの間は鉄道で運ばれたと考えました。
BRISBANEからSYDNEYの間は、1888年(明治21年)の時点で、BRISBANE午後7時発、SYDNEY翌々日午前6時48分到着という電車があったようなので、2月17日に到着したこの郵便物が翌々日の2月19日正午頃にSYDNEY局に到着したことは十分にあり得ると判断しました。
〇逓送経路の推定のまとめ
❶神戸⇒門司 1月23日発、1月24日到着 鉄道による逓送
❷門司⇒香港 1月24日夕方発、1月29日到着 廣島丸による逓送
❸香港⇒BRISBANE 1月30日発、2月17日到着 八幡丸による逓送
❹BRISBANE⇒SYDNEY 2月17日発、2月19日到着 鉄道による逓送
神戸コレクションを使って、廣島丸(門司⇒香港)と八幡丸(香港⇒BRISBANE)の航路を復元しました。
※地図は現在のものを使用しています。
神戸コレクションは、簡単に解析でき、海商通報などの他の情報を補うことができるので、これからも活用していきたいと思います。
他の逓送経路で運ばれた可能性もあると思いますし、より正確に推定するには、逓信公報なども確認する必要があると思いますが、今回はここまでにします。



