こんにちは。

 

楠公はがき1銭5厘に御朱印船5厘を加貼した使用例です。

芝 昭和14年9月21日 前8-12(機械日付印

芝 昭和14年9月22日 前0-8(櫛型日付印

 

楠公はがき1銭5厘を抹消している機械日付印は、9月21日の消印ですが、御朱印船5厘を抹消している櫛型日付印は、翌日の9月22日の消印です。

最初は、本来9月22日とすべきところを機械日付印では誤って前日の9月21日で抹消してしまったため、櫛型日付印では正しい9月22日で押印したのかなと思いましたが、はがき印面をよく見ると、機械日付印の波消の部分は、御朱印船5厘にかかっていないことが分かります。

 

つまり、このはがきは、楠公はがき1銭5厘の状態(当時の第2種郵便は2銭なので5厘不足)で差出され、機械日付印で押印ののちに、御朱印船5厘を貼って、櫛型日付印が押印されたと考えられます。

 

よく見かける使用例では、料金不足印が押印され「不足料1銭」と明示されているのに、この使用例では、後から御朱印船5厘を貼って消印しているのはどうして?』と疑問に感じていました。

 

私が拝見している『koban-nasu様』のブログ記事で、『立替補貼』という取扱について解説されているのを拝見し、ヒントがありましたので詳しく調べてみました。

『立替補貼』は、昭和12年4月1日の郵便料金改正で実施された措置で、料金不足の郵便物が差出され、それが速達を要すると認められる場合は、料金不足郵便とせずに、不足分の切手を郵便局で立て替て貼り付け、あて先に逓送し、あとで差出人に不足分を請求するというものとのことです。

この措置は、『koban-nasu様』のブログ記事によると、昭和12年5月31日までとのことですので、今回ブログで取り上げている昭和14年9月の使用例は、『立替補貼』の使用例ではないと考えられます。

 

そこで、当時の郵便の取扱について調べてみると、『通業第6828号(明治43年12月)』という通牒があり、この中で、『引受検査ノ際料金未納不足アルモノハ便宜ノ方法ヲ以テ一應差出人ニ注意加貼セラシムヘシ但故意ノ未納不足又ハ至急送達ヲ要スト認ムル者ハ例外トス』とされていることから、郵便局で料金不足郵便を引き受けた場合、まずは差出人に注意して不足分の切手を加貼してもらっていたことが分かります。

この理由として、『通業第6828号』と同時期に出された『監第4204号(明治43年12月)』では、『引受郵便物検査ノ際料金未納又ハ不足ノモノヲ発見シタルトキハ一應差出人ニ注意シ不納料金ヲ加貼セシムルコトヲ得右ハ畢竟公衆ノ利便ヲ計ラレタル義ニ付了知アレ』とあることから、公衆の利便性を勘案して、いきなり料金不足郵便として受取人から不足料金の2倍の金額を徴収するのではなく、まずは差出人に一応注意を促す運用をしていたと考えられます。

 

今回ブログで取り上げている使用例は、郵便料金が不足した状態で、9月21日に芝郵便局で引受され、消印されましたが、消印で抹消後に料金不足に気づいたため、『通業第6828号』に従って差出人に不足分の切手の加貼を促したところ、翌日の9月22日までに不足料金5厘が支払われ、御朱印船5厘が加貼されたことから、料金不足郵便とされずに逓送されたものと考えています。

 

この考え方で正しいかは別として、購入価格が@100円程度の使用例でいろいろと調べて楽しむことができますので、郵趣って本当に面白いなと思います。