蝉の声に促され支度を整える
今から向かう先‥
そこで行われるすべては
残された者への慰めであったり
見送った者の自己満足だ
「そう‥わかってる」
だからだろうか?
その場所を思い出すたび
私の建てた墓標横の田んぼの中で
親父が麦わら帽子をかぶり
遠くを見つめる後ろ姿が頭に浮かぶ
あの日から親父は背を向けたまま
どこか遠い南の空を見つめている
‥そんなイメージが浮かぶ
親父と俺は
そんなに仲が良かった訳でもなく
じっくり話し合ったことも無い
親父への親孝行なんて
亡くなる少し前に
病院で手を引いて歩いた事くらい
‥ごめんな
子供の時にはわからなかった
産まれて 出会い 別れる
そこにある怒りも
そこにある幸せも
すべて
有限の中で起きること
‥なんだってこと
だから良いんだってこと
さぁ
デッキブラシを買いに行こう
今日は親父の一周忌
これは
誰にも伝わらない話
だけど
必ず誰もが経験する想い
ひとは
ひとりで生きてなどいないから