日本ではPM2.5関連ニュースが騒がしい。騒がしいというのは北京に長期滞在している人間からすれば煩わしいということで、下手をすると「で何か?」と猛烈な勢いで問い返したくなってしまう。


そりゃ大気は上空で日本と繋がってますわな、そちらにPM2.5が流れ込むってのも分かります。で何か? こちらに何をしろって仰る? 北京に滞在している外国人の我々からすればそうなるし、まして現地の中国人たちからすればなおのことそうだろう。えっ、日本の公害の歴史をご存じない? あれがあって日本の高度成長があり今の日本があるんです。まして人口十倍の中国が経済成長で動き始めているのを、やはり十倍の公害なしに止めることなど恐らく誰にもできない。

日本の十倍の公害-それは今に始まったことではないし、今すぐ終わるものでもないから、怖くないと言えばやはりウソになる。現地の中国人の友人も僕に言う、これって日本と同じですよね? あの四日市咳の? うーん、答えに窮してしまうのは僕だけか。いや四日市咳は良く知ってますよ、教科書で勉強しましたから。でもね、自分自身がその同じ公害に直面しているって認めちゃうのはやっぱり抵抗あります。

長期的な健康被害を受けた当地の人たちがプラカードをかざしてデモをする姿が目に浮かぶ。企業や政府から幾らかの救済はあったのか? いや、仮にあっても焼け石に水だろうし、失った健康が戻ってくるはずもない。てか、それって僕らが今まさに直面している状況だってこと? そんなこと、僕は認めない! 認めたくない!

でも、中国そして北京を愛し、すっかり中国慣れしたはずの日本から来た一人の友人が僕にぽつりと言った、「今回、帰国を考えてます」。北京の大気汚染のことで、日本の親族が心配のあまり連絡してくるという。

いや、もう遅い。日本に帰ってから定期健診を受けて一喜一憂するよりは、ここでそれなりの検診を受けて「良好」の太鼓判を貰いつつここにいた方がまだましだろうという考えが僕の頭をよぎる。でも、その友人の目は真実を語っていた。目が座っているのだ。北京の大気汚染が僕らすべてに影響を与えているというこの真実は、認める認めないにかかわりなく僕らの目の前に横たわり続けている。