✨わらこ精霊 秋だより編 〜ノートに残す小さな光〜
音羽めぐる(別海町・べつかいちょう) おとわ めぐる 中1
🎵 32. またね、春の空で
言葉は、ときどき未来へ続く道しるべになる。
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🌅 朝
別海の朝は少し肌寒くて、吐く息がほんのり白く見えた。
「秋、近づいてるね」
友達がそう言うと、私は小さくうなずきながらノートを開いた。
「“秋の風は、心をひらく”」と一行書き留めると、
「また書いてる!それ日記?ポエム?」と笑われた。
「……ただの記録だよ」
そう答えると「めぐるらしいなぁ」と言われて、ちょっと胸があたたかくなった。
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📖 午前の授業(国語)
黒板に映し出されたのは短い物語。
「続きを考えてみよう」という先生の声に、クラスがざわめく。
友達は「バトル展開にしよ!」と盛り上がっているけれど、私は静かにペンを走らせた。
“主人公は、手紙を残して旅に出た。読んだ人が笑顔になれるように。”
「めぐる、またしっとりしたやつ書いてるでしょ?」と横からのぞかれる。
私は少し照れながら「……物語は心を映すから」と答える。
「うわ〜カッコいい!」とからかわれて、周りの子も笑った。
その笑い声も、私の中では“今日の記録”になっていく。
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🍴 給食
今日の献立はクリームシチュー🥣と食パン🍞、それにサラダ🥗。
湯気の立つシチューをひと口すすると、体の芯まであたたまる気がした。
「めぐるって、食べるのもゆっくりだよね」
「……ちゃんと味わいたいから」
そう答えると「じゃあその一口、記録しときなよ!」と笑われる。
私は思わずノートを取り出して、“クリームシチューのやさしい味、友達の声と混ざる”と書き込む。
「本当に書くんだ!」と驚かれて、教室がまた笑いに包まれた。
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🎤 放課後のレッスン
今日の練習は歌の表現。ノートに書いた言葉を思い出しながら声を出すと、
少し震えていた心が落ち着いて、歌が柔らかく響いた。
「めぐるの声、なんか日記みたいにあったかい」
そう言われて「……ありがとう」と小さく答える。
休憩のとき、仲間に「何書いてるの?」とノートをのぞかれた。
そこには “今日の歌声、夕暮れに似てた” と書いてあって、
「めぐる、やっぱり詩人だ〜!」と笑われる。
けれど私は笑いながら、心のどこかで「言葉が歌に変わる瞬間」を確かに感じていた。
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🌆 夕暮れ〜下校
校舎の窓から見える空は、オレンジと紫が混ざり合って、放牧地の向こうまで広がっていた。
「今日も、ちゃんと残せた」
胸の奥でそうつぶやきながら、ノートの最後のページに書き込む。
“夕陽の色、友達の笑い声。
その全部が、わたしの歌になる。”
下校の道すがら、自転車のベルが鳴り響いて、制服姿の友達が追い越していく。
「めぐる、またノート書いてるの?」
「……うん、忘れたくないから」
「ほんとマメだね!」と笑われて、私は小さく微笑む。
暮れゆく空と牧草の匂いに包まれながら、
ノートを抱えて歩く一歩一歩が、明日への歌につながっている気がした。
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✨——小さな記録が、未来の自分を支えてくれる。
明日もまた、別海の空とノートを抱えて歌いたい







