✨わらこ精霊 秋だより編 〜霧の境界に浮かぶ声〜
海霧しおり(苫小牧・とまこまい) かいむ しおり 中2
🎵 1. 制服スパイラル文化祭
境界を越えるたび、新しい歌が生まれる。
---
🌅 朝
苫小牧の朝は、薄い霧が町をふんわりと包んでいた。
街路樹の先もぼんやりとかすんでいて、歩いている人の姿が霞の向こうに溶けていく。
「今日も霧だね、しおりの出番だ!」と友達にからかわれて、私は少し肩をすくめながら笑った。
「……霧はね、はっきり見えないものを守ってるんだよ」
「また難しいこと言う〜!」
友達が声を上げて笑う。その響きが霧に吸い込まれていくようで、不思議と心地よい。
静かなはずの朝が、笑い声のおかげで少しだけ明るくなった。
私は歩きながら、霧の奥に見える信号の灯りを見つめて、「境界って案外やさしいものかもしれない」と思った。
---
📖 午前の授業
理科の時間、配られたプリントには“気象”の文字。
先生が黒板に「霧」と大きく書いてから問いかけた。
「霧ってどうやってできるんだっけ?」
教室が一瞬しんと静まりかえる。
誰も答えられずに下を向いている中で、私は迷わず手を上げた。
「……冷たい空気と温かい空気が境目で出会うときに」
「おぉ〜しおり詳しい!」
「なるほど〜」と小さな拍手や声が起きて、私は慌ててノートに視線を落とした。
耳の奥がほんのり熱くなるのを感じながら、それでも心の奥は少しだけ誇らしかった。
霧や境界を感じ取ることが、自分の役割のように思えてならなかった。
---
🍴 給食
今日の献立は、苫小牧らしくホッキごはん🐚、みそ汁、漬物、牛乳🥛。
ふたを開けると湯気と一緒に磯の香りがふわっと広がる。ごはんの中に、赤みを帯びたホッキ貝がちらりとのぞいていた。
「えっ、ホッキだ!給食で出るなんてちょっと豪華じゃない?」と友達が声をあげる。
「骨とるのめんどくさ〜い」なんて魚のときとは違い、今日はみんな嬉しそう。
私はひと口食べて、静かに言葉をこぼした。
「……海の音みたいな味」
「しおり〜また詩人スイッチ入った!」と机のあちこちから笑い声が返ってくる。
けれど次の瞬間、「でも確かに潮の香りする!」と頷く声もあって、場が和やかに広がった。
ホッキの甘みと、ごはんのほかほかとしたぬくもり。
噛むたびに苫小牧の海が思い浮かび、遠くに波の音が響いている気がした。
みそ汁をすすると、だしのやさしい風味が口いっぱいに広がり、漬物のポリポリとした音が楽しいリズムをつけてくれる。
牛乳を飲むと味がまろやかに整って、心まで満ちていく。
「……境界って、味にもあるんだね。海と町がつながる境目」
私がそうつぶやくと、「名言いただきました〜!」と笑われて、思わず頬が熱くなった。
でも、どこか誇らしい気持ちもあった。
---
🎤 放課後のレッスン
歌の練習。仲間と声を重ねていくと、音と音の間にも小さな境界があるようで、それがだんだんと消えていく。
境界が消える瞬間、霧が晴れて光が差すように心がふっと軽くなった。
「しおりの声って、霧の中でもちゃんと届くね」
仲間のその言葉に、私は小さく「……ありがとう」と答える。
たった一言でも、胸の奥には長く余韻が残る。
霧の奥に響く声があるように、歌もきっと届くと信じた。
---
🌆 夕暮れ〜下校
放課後、港に近い道を歩く。霧が少しずつ晴れて、夕陽の光がオレンジ色ににじんでいく。
霧の中から浮かび上がる船影。足音を合わせて歩く友達の存在。
「境界は、なくなるんじゃなくて、つながるんだ」
心の中でつぶやくと、友達が横で「しおり、今日もまとめ上手!」と笑った。
私は思わず苦笑して、「……そんなつもりじゃないんだけど」と返す。
でも、胸の奥では「ちゃんと届いたんだ」と実感していた。
夕陽に染まる霧の向こうで、明日への声が静かに灯っていた。
---
✨——霧も、境界も、わたしの歌を導いてくれる。
明日もまた、苫小牧の静かな空気とともに声を届けたい。
---





