アナザーストーリー《第2話》灯原つくよ/函館
──灯籠にともる願い──
放課後の教室は、少しだけざわざわしていた。
いつもより声が大きく聞こえるのは、きっと自分の心が少し揺れているから。
つくよは静かに席を立ち、窓際の陽だまりにノートをひらいた。
だけど、今日はなかなか言葉が出てこなかった。
朝の挨拶に返事をしなかった子、
帰り際に交わした視線が、どこか冷たく感じた子。
「なんでだろう……」
つくよの胸の中に、小さな疑問とざらつきが残っていた。
嫌われたわけじゃない。だけど、どこかで少し、
なにかがすれ違ってしまったような、そんな気がした。
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その日。
つくよは、あの湯倉神社の石段にいた。
いつものように、手帳を膝にのせて。
灯籠の灯りが、ゆらゆらと揺れている。
その揺れを見つめながら、ふと手帳に文字を綴った。
> すれ違うことって、きっと誰の心にもある。
でも、わたしは――
ほんとうの気持ちが届く灯りになれたらって思う。
そのとき、背中に気配を感じた。
振り返ると、クラスの子──今日視線をそらした、あの子が立っていた。
「……ここ、よく来てるの?」
「うん。灯りに、話を聞いてもらってるの」
しばらく沈黙が流れたあと、その子がぽつりとつぶやいた。
「ごめんね……朝、ちょっとイライラしてて」
つくよは静かに微笑んだ。
言葉よりも、そのまなざしに、ちゃんと“あたたかさ”が戻っていた。
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「ちょっと座ろっか…」と
ふたり並んで石段に座る。
沈黙の中で、灯籠の灯りだけが、やさしくゆれていた。
「……灯って、不思議だね」
「うん、やさしい人に似てるよね。
見えないけど、ちゃんとそばにいて、照らしてくれるの」
灯原つくよの胸の中にも、
ほんのりとした灯りが、またひとつともった気がした。
それは「わかりあえた」という実感でもあり、
すれ違いの中にあった“願い”が届いた瞬間でもあった。
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🕯️次回予告《第3話──心にともる詩(うた)》
放課後、神社で出会った小さな手紙。
そこには、名もなく、でもたしかに“つくよ”に届けられた
詩のかけらが記されていた──。
見えない気持ちと見えない声が、灯りの中でつながる最終章。





