アナザーストーリー《第3話》灯原つくよ/函館
──心にともる詩(うた)──
翌日。
つくよは、神社の石段で手帳を開いていた。
昨日、隣に座ってくれたあの子の言葉が、胸の奥に残っていた。
> 「…ここ、よく来てるの?」
「うん。灯りに、話を聞いてもらってるの」
「やさしさって、灯りみたい」と語ったその夜、
つくよはひとりでページを開き、こう綴っていた。
> ぬくもりが、届いた。
届いたことが、こんなにあたたかいなんて。
いつか誰かにとっての“灯籠”になれますように。
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その次の日の放課後。
つくよが湯倉神社を訪れると、
灯籠の下に、小さな便せんが置かれていた。
その紙には、丁寧に折られた文字が並んでいた。
> あたたかさを 信じたいとき
ぬくもりは 灯りのように
そっと あなたのそばにいる
それを見た瞬間、つくよは気づいた。
──このことばは、あの子からの返事だ。
昨日、並んで座ったとき、まだ照れくさそうにしていたあの子。
今度はことばで、ちゃんと届けてくれたのだ。
「……うれしい」
ぽつりと、声になった。
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夜。
つくよは、祖母からもらった手帳の空白のページに、
そっとペンを走らせた。
> ともされた灯が ひとつあれば
夜道は こわくない
ありがとうのことばが
わたしを照らしてくれる
その詩を書きながら、つくよは思った。
「これがわたしの返事──」
声にしなくても、詩で交わせるぬくもりがある。
文字ひとつひとつが、まるで灯りのように胸の中にともっていく。
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次の日。
教室の机に、つくよの詩のコピーが、そっと置かれていた。
付けられたメモにはこう書かれていた。
> わたしも、灯りをありがとう。
ひとりじゃないって、思えたよ。
そして、そこには名前が書かれていた。
──あの子の、ほんとうの名前。
ふたりの“心の距離”が、ゆっくりと近づいていく音がした。
放課後、つくよは再び神社の灯籠の前へ。
もう冷たくなりはじめた空気の中で、
灯籠の光は静かにゆれていた。
「ことばって、ほんとうに灯りになるんだね」
つくよの胸の奥で、ともしびのような詩が生まれていた。
それは誰かの心にも、そして自分自身にも
やさしく残っていく、ほんとうの“つながり”だった。
> わたしは 灯る詩になりたい
すれ違った日も 届かなかった日も
やさしさを あきらめなかった言葉として
灯原つくよアナザーストーリー最終章 完
湯倉神社の灯籠は、
ふたりの詩の記憶を包むように、
そっと、あたたかく揺れていた。







