🌌アナザーストーリー《第3話》星灯めぐる/江別
──灯ることばの、その先へ──
星灯めぐるは、言葉を書くことが好きだった。
でも、伝えることには、ずっと少しだけ臆病だった。
だからこそ──
自分のことばが、
たとえ誰かに届いても、
それを「返される」ことに、まだ少し不安があった。
けれど。
春が少しずつ夏の匂いを運びはじめたころ、
放課後の図書室へ向かう廊下で、
その小さな灯は、静かに、けれど確かにめぐるの元へ戻ってきた。
「……あの、星灯さん……だよね?」
廊下の角に立っていたのは、
めぐると同じクラスの男の子だった。
名前は、たしか──久木くん。
おとなしくて、本が好きで、めぐると似た空気を持っている子。
「ぼく……前に、“ことばをやめない”って詩、読んだんだ。
……たぶん、君の、だよね?」
めぐるの心臓が、一瞬だけ音を止めた。
でもすぐに、またふわりと音を立てて、あたたかく動き出した。
「……うん。そう、かもしれない」
声は小さく震えていたけれど、
その言葉には、ちゃんと光が宿っていた。
「……助けられたんだ」
久木くんは、恥ずかしそうに視線を落とした。
「誰にも言えなかったこと、あって……
でもあの詩、胸に残って。
届いた、って思った。ほんとに」
沈黙が、二人の間に流れた。
でもそれは、気まずさじゃなかった。
ことばよりも静かな、
“わかりあえる余白”だった。
めぐるは、そっと言葉を重ねた。
「わたし……ありがとう、って思った。
ことばを信じて、よかったって思ったよ。
こんなふうに、返してくれて……うれしい」
久木くんは照れくさそうに笑って、小さくうなずいた。
その後、二人は並んで図書室へ入った。
窓際の席に腰を下ろし、それぞれの本を開いた。
声は交わさず、ただ隣にいるだけだったけれど──
その静けさは、めぐるにとって、とてもあたたかかった。
> 「響いたことばは、
きっと、めぐって帰ってくるんだ……」
家に帰ったあと、めぐるは机に向かい、
お気に入りのノートを開いた。
夕暮れの光が差し込む中、
祖父から譲り受けた万年筆をそっと握る。
書きはじめた詩の最後に、ひとつの言葉を添えた。
> 「わたしはことばをやめない。
それが、星の灯をつなぐことだから──」
ことばは、ときに迷い、途切れ、
自分さえ信じられなくなる夜もある。
でも、
それでも書きたい、伝えたいと思うその気持ちは、
めぐるにとって、
これからも灯し続ける「未来へのしるし」だった。
彼女の中の光は、
もう消えたりしない。
(おわり)
🖋️この章のキーワード
ことばを信じる勇気
静かなつながりと対話
返ってきた“ありがとう”の温度
自分のことばを未来につなげる意志
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これで、星灯めぐるちゃんのアナザーストーリーは完成だよ🐰📘





