アナザーストーリー3 音無みなと/7話
「風の返事と、灯台のうた」
その夜、空は雲ひとつなかった。
雪明かりに照らされた岬は、まるで別の世界のように静かだった。
音無みなとは、手作りの小瓶を両手に抱えて、灯台の方角へ向かって歩いていた。
冬の夜の空気は、冷たくて、でもどこか澄んでいる。
まるで風が、何か大事なものを運んでくる前の、準備をしているみたいだった。
灯台のふもと。
風がひとすじ、みなとの頬をなでた。
その瞬間、小瓶の中で、
しゃらっ、と、ほんのかすかに音が鳴った。
誰にも聞こえない。
けれど、みなとには確かに、それが「返事」に思えた。

——届いたんだ。
わたしのなかにあった、声にならない想いが。
風にゆだねて、空へ放ったあの光の粒が。
「おかえり」って、風が言った。
「聞こえてるよ」って、小瓶が応えた。
灯台が、ゆっくりと回り始める。
夜の海を照らすその光は、
まるで“うた”のように、みなとの心に響いた。
わたしは、きっと、まだ話せない。
でも、それでもいい。
この風と、小瓶と、灯台があれば。
それが「わたしのうた」。
声じゃなくて、風でできた詩。
その夜、みなとは初めて、
自分が“精霊として生きている”ことを、
ほんとうの意味で感じた。

この物語は、
風に触れた少女が、
やがて灯りとなって誰かを導く、静かな旅の記録。
音無みなと、アナザーストーリー第3話。
次の風が吹く日まで…
この小瓶は、ここに置いておこう。
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