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🌙ゆめふわファンタジー第6話

まっしろな地図と、こころの棚


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「ここ、どこだろう……?」

草のにおいと空の広さを感じながら、まわりを見渡しました1人のわらこ精霊。

気づけば、手にはまっしろな地図。
そこには道も建物も、なにも描かれていません。



「え、え、なにこれ!?地図っていうか……画用紙!?」
「うそでしょ……“道迷い精霊”発動!?」
「ねえ、どこから来たっけ……え、来たっけ!?」


あたふたしていると、草の間から
ふわふわ色のセーラー服を着たわらこたちが顔を出しました。

「ようこそ〜、“まだ途中のまち”へ♪」
「途中……?ここって途中なの?」
「うん、ここは“まだ描いてない気持ち”が地図になる場所〜」
「いまの感情がそのまま道になるって感じ!」




「えっそれ超こわい!わたし今“もやもや”って描かれそう!」
「それもOK!“もやもや通り”って名前にしよ〜〜!」
「やだ……かわいい……」「住みたい……」


ひとりのわらこが、そっと言いました。

「ねぇ、なにも描いてないって、
“失敗した”とか“なにもできてない”って思ってたけど……ただ、“まだ描いてないだけ”なんだね……」


そして、まっしろな地図のすみに、ペンでひとこと。

「いま、ちょっと不安。でも、きいてくれる子がいてよかった。」

その瞬間、紙の上にちいさな道が、
ほそく、ゆるやかに描かれはじめました。

「ほら〜〜!できたできた!“きいてもらえた坂”だ〜〜!」
「あとで“おまけのプリン通り”も追加しとくね」
「ちょ、それ正解ルートじゃん……!」




やがて、わらこたちがそれぞれの地図を手に、
静かな夜道を歩いていくと、
やさしい灯りがぽつんと灯っている場所が見えてきました。

そこには、小さな看板。



 「こころの棚」
 開館時間:迷ったとき

「なにここ……本屋?図書館?でも本じゃない……」
「こころの中にある“しまい忘れた気持ち”、そっと並べるとこだよ」
「うわ、それ絶対泣くやつ……」
「むしろ“泣いていいよって棚”なのかも……」




棚には、短い言葉がたくさん並んでいました。

 「だれかのひとことがずっとのこってる」
 「ごめんって、思ってたけど言えなかった」
 「なんかもう、がんばり方がわかんない」


「これ……全部、“ちゃんとがんばってた証拠”じゃん……」
「うん。ここって、“思い出”じゃなくて“思ってた”が並んでる場所なんだね」
「ここにあるだけで、じゅうぶん生きてたんだなぁって思える……」


ひとりのわらこが、そっと自分の紙を棚に置きます。

 「がんばらなくてもいいって、自分に言ってみたい」

そのとき、棚の奥に、ふわりと灯りがともりました。





「……届いたんだね」
「うん。“よくきづいたね”って言われた気がした」
「精霊さん、ことばじゃなくて“灯り”で返事くれるの、やさしすぎる」


わらこたちは、だれにも急かされず、
まっしろな地図を持ったまま、また歩きはじめました。

「ここまで描けたら、今日はもうじゅうぶんだよね?」
「うん。明日の分は明日でいいし」
「あとで“またここに来たくなる道”も描いておこ〜〜!」



描いてなくても、きっとあなたは途中にいる。
そして途中には、ことばの精霊と、ことばを置ける棚がある。


それだけで、今日を歩ける。
そんな6話でした。